チェリーブロッサム・タービュランス[4/7]


 



着慣れない着物の衿を指先で直しながら、今更ながらに伊達軍の異様に見入っていた。

縦に長い部屋の奥、いわゆる白塗りの馬鹿殿が座っているあの一段高い場所に座っているのは、青い着物を着た政宗。

ゆっくりと下げていた頭を上げてこちらを伺っているのは茶の着物を着た小十郎。

左手でこちらを見ているのは、何故かここにいる前田慶次。

話題の中心となっているのは間違いなく俺。

本当なら政宗に向かっていなきゃいけないんだが、この状態で前を向けるわけがない。

生々しい情事を思い出して顔が見れない────なんていう生っちょろい感情の乙女的展開だからなんて事はあり得ない。

散々ボコられて大量出血したにもかかわらず、昨日一日の蛮行が嘘のように、今朝も息子は元気だったくらいには身も心も破廉恥だ。

死なないと分かっておはようの蹴りに殺気がこもりだした小十郎に蹴り起こされ、持ってきた着物を着ろと言われたのが雀も鳴き出さない明朝。

血塗れの座敷牢で正座させられ事情を、【異世界】とか【悪鬼】とか【命の狩人】とか【元女】のあたりは省いた自分に都合のいい事情を話した後、そのままそこで寝て、わずか数時間で蹴り起こされ、褌の履き方も知らないのかと殴られ、しかし褌から全て着せてもらえ、髪まで結われる美味しい状況を堪能したので、差し引き幸福度はプラスとか思っていたのに、この大広間に入ってからはマイナスへと下がり続けている気がする。

ともかく現在の興味の矛先は政宗から大きくそれていた。

それは、俺が座らされたのが────リーゼントのアーチの中だったからに他ならない。

両側にずらりと座るのは青い伊達軍の武将や侍大将達。

これだけ畳をひきまくった大広間なのに、真横の武将の座布団との距離は1メートルと離れていないので、メンチビームが出てるんじゃないかってくらい視線が痛い。

しかも誰も彼も、一人の例外もなく、がっちりねじり上げたリーゼントが頭から大砲のように突き出し、にょーんと伸びているものだから、人垣からアーチ状に黒いリーゼントが出ている事になる。






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