冬のせいにして暖め合おう
 私は、冬が好きだ。


 一つ息を吐く。白くなった空気にほどけていくそれを見て、冬が訪れた事を実感した。

「待たせたな」

 落ちてきた声は真田さんのもの。息当てていた手から顔を上げれば、部活が終わってすぐに駆け付けてくれたのだろうか、ほんのりと湿気を立ち上らせている真田さんが見えて。

「いえ、私の方も先程終わったばかりですので」
「……お前のその謙虚さは華だが……何と言えば良いのか、俺の前でくらい気を緩めても……」
「ふふ、そうですね。真田さんの前ですものね」

 唸るように黙り込んでしまった彼に言葉をかける。不思議なタイミングで口を閉じて黙りこくってしまう真田さんにはこうすると良いと気付いたのはいつだったか、少し懐かしくなって笑った。

 ふと、風が吹く。
 防寒具代わりに近い長髪が煽られ、露になった首筋を12月の空気が舐める。冷えきったそれに、体が震えた。

「む、寒いか」
「え? いえ、まだこれくらいは──」

 ふわり。一瞬、灰色が視界を覆って言葉が止まる。
 再び喉が震えたのは、真田さんの自慢気な顔が見えてからだった。

「……これ、真田さんのマフラーじゃないですか」
「そんなものがなくとも、俺は鍛えている」
「それ、理由になります?」
「……しつこいぞ!」

 渇、と鳴いた真田さんに言葉を詰まらせ足を止める。怒ったような顔の彼に掛ける言葉を探し、マフラーに口元を埋める私の手を、やけに熱い真田さんの手が掴んだ。

「俺は、これで足りる」

 顔を上げれば、まるで茹で蛸のように真っ赤になったその人が目に入ったものだから、思わず噴き出してしまい。

「む……なぜ笑う。ふ、普段はこれも要らんのだぞ。……今日は、寒いからな」
「そうですね、今日は寒いです」
「あぁ、寒い」

 くすくすと溢れる笑いに、真田さん不満げな顔をしはするけれど咎める声は上がらない。何だかんだと言いつつも、割れ物を拾うように握ってくれるこの手が、私は堪らなく好きだった。


 私は冬が好きだ。照れ屋さんなこの人と、くっつく口実が作れるから。


17/12/19
20/01/13 修正

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