ドウタヌキ?


叩いて殴ってじゃんけんぽん!


叩いて殴ってじゃんけんぽん!





D(リズム隊+英蔵が相部屋の夜)


「あー、まだ寝るにも早いしヒマだー」
半裸で冬眠前のクマのように部屋を歩き回る大城に英蔵が苦笑する。
「今日は打ち上げ短かったですからね」
「というかいつまで半裸でいるんですか?」
既にパジャマに着替えて半分ベッドにもぐりこんでいる恒人も苦笑。
「いやいや、若人よ。まだ寝るには早いだろ」
「ゲームでもやってればいいじゃないですか」
「英ちゃーん、なんかツネちゃんが冷たいよー?」
「あー、はいはい」
いつもこんなものだ、しれっとした態度を崩さない。
「あ、そうだゲームだ」
と大城は手を叩いて爽やかな笑み。
夏の空とか太陽とか向日葵を連想させる笑顔で言う。
「叩いて殴ってじゃんけんぽんしよーぜ」
「いいですけ・・・あれ?なんか名前おかしくないっすか?」
「おかしくないよね、ツネちゃん」
「・・・おかしくないですね」
半笑いで頷く恒人に警戒した様子の英蔵。
「もう一回言ってもらえますか?」
「叩いて殴ってじゃんけんぽん!」
「おかしいですよ!攻めしかないじゃないですか!」
「男は守りに入ったら負けだぜ?」
「いや、ゲームが成立しませんし!なぁツネ!?」
「うーん」
と恒人は悪戯っぽく笑って二人を見る。
「見てみたいですね!」
自分の参加は拒否しつつやるのを促す見事な言葉に英蔵は肩を落とした。
「あー・・・はい、やりましょう」
どう言おうがやらされるのであれば、ぐだぐだ言うより了承してしまったほうがいい。
そう判断して頷くと大城は満面の笑みで腕を組む。
「おっけー、おっけー!じゃあ俺と英ちゃんで対決ね!」
「あーはいはい、じゃあとりあえずルールを教えて下さい」
「断る!」
「ルールすら教えてもらえないんですか!?」
「はい、叩いてー!」
振りかぶってチョップを入れてくる大城から逃れようと交代した英蔵がベッドに引っ掛かってダイブする。
「殴ってー!じゃんけんぽん」
「どわわわわわっ!?」
自分の真横に炸裂してスプリングを揺らす唸る拳に悲鳴を上げているうちに大城はパーをだして笑っていた。
「はい、英ちゃんの負けー!」
「ゲームですらない!?一方的な暴力!?」
「負けたから罰ゲーム!」
「その上ペナルティまで!?」
「ツネちゃん、こいつをくすぐれー!」
「りょーかいしました」
「オマエしれっとなに言って、ちょ・・・たんまーーーーっ!」
リズム隊二人に捕まえられ、思い切りくすぐられてようやく解放されたあと、英蔵は荒く息をつきながら窓際に逃げる。
「あーもう!今度は二人でやればいいでしょう」
「うーん・・・」
悪戯っぽく目を細め大城は恒人の頭を雑に掴んだ。
「じゃあナデナデじゃんけんぽんで」
「えこひいきっすね」
「えこひいきだね、俺の相棒だから」
頭を掴まれたままだった恒人は大城の頭を掴み返す。
「こんな感じっすか、ナデナデじゃんけんぽん」
「こんな感じで、力こめないでね痛いから」
「ツネ!思い切り握ってしまえ!」
叫ぶ英蔵に恒人はしれっと言う。
「嫌だな、どこの世界にメンバーに乱暴する人間がいるんですか?」
「・・・俺がさっきやられたことはなんなわけ?」
「愛を込めたじゃれあいだろ?英ちゃんも混ざるか、ナデナデじゃんけんぽん」
「・・・恥ずかしいからいいっす」
「うわ、なんで照れてるんですか?」
「俺って何を言ってもダメ出しされるのか・・・」





ディルアングレイ(移動中のバスの中)


「なぁ敏弥」
区切りにつけられたカーテンを開けて京が顔を出す。
「なに?」
敏弥もカーテンを開けてそれに答えた。
「暇や」
「そりゃね、君はずっとそこに籠り切りだから・・・」
「ゲームしよ」
「いいけどさ、なにやるの?」
「叩いて殴ってじゃんけんぽん」
「なにそれ怖い!?」
さっと上のカーテンが開いて薫が顔を出す。
「敏弥は拳使ったらあかんで、一応ベーシストなんやから」
「注意するところ違うよ!?あと『一応』って言った!?」
「ということは」
後ろのカーテンが開いて心夜が出てきた、臨戦態勢で。
「ドラマーは拳使ってええってことやんな?」
「さらっとなに言ってんのこの子!?」
「じゃあ、やろか」
マイペースに頷く京に敏弥はぶんぶん首を振る。
「嫌だよ、そんな暴力ゲーム!」
「京君、どんなルールなの?」
拒否する敏弥を無視してどうやらやる気らしい心夜に京は淡々と言う。
「じゃんけんで相手を全力で叩くか殴るゲーム」
「思った以上にルール適当だね!?」
突っ込む敏弥にも京は動じることなく頷く。
「シンプルでええやろ?」
「そやね」
「ダメだこいつら、ブレーキついてない」
「ええやん、面白そうやし、やれやれ」
薫の向かいから堕威が顔をのぞかせてけらけら笑う。
じゃあオマエがやれよと言いたかったが、堕威が入ると状況が悪化するので言えない。
「じゃあ一回戦、心夜と敏弥な」
無表情で前に立つ心夜に気圧されながらも敏弥は覚悟を決めて頷いた。
「じゃんけんぽん!」
ぱーを出した心夜にちょきを出した敏弥。
「よし、勝っ・・・」
びんたされた。
思い切りびんたされて敏弥は目をぱちくりさせる。
「え?そういうルール!?」
「ちゃんと聞いとけや、じゃんけんして叩くか殴るって言うたやん」
京はあくまで普通のトーンで自分がおかしいのかと思えてくる。
「ちょきなら目潰しやけど、危険だからナシ」
心夜も淡々と言って頷く。
「あれ?じゃあパーかグーの時しか手は出せないってこと?」
「うん」
「当たり前やん」
これまた普通に顔を見合わせて頷く京と心夜。
「ちょ・・・ちょっと待って・・・」
つまりチョキを出しても意味はないということだ。
びんたするか、殴るかのゲーム・・・いやゲームですらない。
そして薫から拳は使うなと言われている敏弥はパーしか出せる手がない。
「いや・・・つまんないんだけど、これ」
というか・・・
「そもそも京君も心夜も叩けないし、俺が一方的にやられるだけじゃん」
さっといきなり心夜が自分のスペースに戻ってカーテンを引いた。
同じように京も引っ込んでしまう。
「あれ?」
きょとんとしている心夜に顔をのぞかせた堕威が笑う。
「あーあ、照れて引っ込んだなお子様二人」
「お前もたまには言うなぁ」
薫も感心したように笑っている。
「え・・・いやあ、別に」
「うざい!」
京のスペースから手が伸びて空のペットボトルが見当違いな方向に投げつけられるのを目に、敏弥は声を殺して笑った。




ムック(楽屋にて)


ヒマだヒマだ喚いている逹瑯の背後に音もなくミヤが立つ。
「そんなにヒマか?」
「おぉえあ!?」
飛び上がらんばかりに驚き、ドキドキする胸を押さえながら逹瑯は振り返った。
「うん、ちょっとね・・・」
「じゃあゲームでもするか?」
「ゲーム・・・いや、通信できてミヤ君も持ってるのってゆーと・・・」
「道具は必要ないゲームだ」
「え・・・?なに?」
「叩いて殴ってじゃんけんぽんだ」
「ワンモアプリーズ」
「叩いて殴ってじゃんけんぽんだ」
「もうね、根本からおかしいから突っ込む気にもなれないんだけど」
首を振る逹瑯にミヤはうっすらと笑う。
「これは××××で採用されていたゲームだぞ?」
「いや、それミュージシャンじゃなくて怖い人の集まりだったとこですよね?」
椅子ごと身を引く逹瑯にミヤはあくまで穏やかだ。
「そんな怖いものじゃない、ちょっとした拳の語らいで根性を鍛えるためのものだからお前にぴったりだ」
「俺の記憶違いじゃなければミヤ君の拳って一撃で車のバンパー凹んだよね?」
「そうだな・・・初めてだからルールを説明しようか」
「人の話を聞け!!やらねぇよ!!」
「・・・やらないのか」
残念そうなミヤにちくりと胸が痛む、どうやら本気で遊ぶつもりだったらしい。
しかし名前からして恫喝のようなゲームをする気もない。
「俺がやる!俺がやる!」
名乗りを挙げたのはサトチで、後ろでユッケが蒼白な顔でぶんぶん首を振っているのがよく見えた。
「おし、じゃあやるか」
ミヤはあっさりと頷いてサトチと連れ立って行ってしまう。
離れたところでスタッフの悲鳴に近い歓声と、鈍い音が響いていてやっぱりやらなくて正解だと思った。
ライブ前に怪我をしない加減でできる二人がやっている分には問題ない。
「でも・・・ちょっとやってみたかったな」
そう呟く逹瑯にユッケが首を傾げる。
「殴られたいの?あのゲームそうとうエグいよ、スタンドバトル並みに怖いよ」
「あー、そういう心理戦なんだ、よくサトチができるな」
「サトーはほら、野生の勘で」
「なるほどねぇ・・・」
「やってみたいの?」
「いや・・・ミヤ君とゲームをね」
「ふぅん、別に誘えば乗ってくると思うけどなぁ」
「・・・・・・照れくさいんだよ」
「ホント、図々しいくせして変なとこ繊細なんだから」
「あぁ!?」




リンチ(楽屋にて)


「葉月さーん」と子犬のように寄ってきた明徳を手を突き出して葉月は止める。
「うるさい、用があるならそこで喋れ」
「昨日知ったんですけど、叩いて殴ってじゃんけんぽんってゲームやりません?」
「はぁ?なんだそれ」
ふ、と吹き出した玲央がこちらに寄ってくる。
「それを言うなら『叩いてかぶってじゃんけんぽん』だ。そうか、明徳の世代だともう知らないのか」
「あー・・・俺がなんか聞いたことあるレベルですからね」
葉月は頷いて明徳を見た。
「で、なんでそんなことしなきゃいけねぇんだよ」
「いやー、面白そうだったんで」
「いいじゃないか、つきあってやれよ」
と言う玲央に葉月は口を尖らせた。
「そんな、弟の面倒見ろって感じで言わないで下さいよー。どっかに厚紙ないかな・・・」
ぶつくさ言いつつもやってやるつもりでいる葉月に玲央はまたくすりと笑った。
「とりあえず、ハリセンと・・・ヘルメットはないから帽子な。ルールは分かってるか?」
「だいたい・・・」
「じゃんけんで勝った方がハリセンを取って叩く、その時に叩かれる前に帽子をかぶったらセーフだ。先に三回叩いた方が勝ちな」
「はい、分かりました」
なんでこんなことをやっているんだと思いつつ、楽屋の床に向き合って座り、真ん中にハリセンと帽子を置く。
玲央が二人の間に立って、どうやら審判をやってくれるようだ。
「じゃあ・・・いくぞ。たたいてかぶってじゃんけんぽん!」
あいこ、だった。
これは以外に緊張すると葉月は気を引き締めた、明徳はというといつもと変わらずにこにこしていたが。
「たたいてかぶってじゃんけんぽん!」
負けた・・・。
即座に帽子をひっつかんでかぶるがその上からハリセンで叩かれた。
「馬鹿!帽子かぶった場合は叩かなくていいんだよ!」
「すみません、つい勢いで・・・」
「はい、たたいてかぶってじゃんけんぽん」
二回あいこが続いてまた負ける、とっさに帽子をひっつかんでかぶりこれまたセーフ。
「白熱の戦いだな・・・たたいてかぶってじゃんけんぽん!」
また負ける。
帽子をかぶってギリギリセーフ。
そうして10回ほど負け、全てセーフではあったが息の切れた葉月に明徳は笑顔のまま言った。
「葉月さんってもしかして、じゃんけん弱いんですか?」
「・・・うっせー、たまたまだ」
「なあ、撮ったムービーなんだけどツイッターにあげていい?」
いつの間にか傍にいた晁直がそんなことを言う。
「ダメに決まってんじゃないっすか」
「ダメなのかぁ、じゃあ葉月の知り合いに一斉送信、っと」
晁直の隣にいた悠介が携帯電話をぽちぽち弄って言う。
「なにやってんだぁぁぁ!!」
「もう送っちゃった」
やっぱりやるんじゃなかった・・・葉月はがっくりと項垂れた。





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