ドウタヌキ?


1話〜20話


V系百番勝負(1〜20話)



その1「そんな時代の人達(ドリンク・オア・ダイ)」

某イベント楽屋にて。
挨拶回りやらなにやらをすませてようやく腰を落ち着けたのはムックの逹瑯&ミヤ。やや間隔をあけてパイプ椅子に座ったので「並んでいる」というよりは、空いているところに座ったといったところか。
そしてやっぱりたまたま空いていたのだろう、机を挟んでお向かいさんに腰掛けたのはイノランだった。先程挨拶したものの、礼儀正しくそして絶妙に縦割り社会気質が残っている逹瑯とミヤは改めて立ち上がって頭を下げた。イノランもそれに返す。
「今日って打ち上げどこでやるの?」
「さぁ、聞いてないです」
いきなり打ち上げの話かい。
先輩との交流は大事だ、逹瑯も携帯電話をしまって話を聞くモードに入った。
「二人とも飲むでしょ?」
「いや、俺はほとんど飲めなくて・・・」
申し訳なさそうに言ったのはミヤ、逹瑯も黙って頷いている。
「ちょっと飲んだだけですぐに意識が飛んじゃうんですよ」
ミヤの言葉にイノランは驚いたように目を丸くした。
「酒って意識飛ぶまで飲むものじゃないの?」
((・・・・・・こ、これがエクスタシー系かっ!!!))

−純度180%人間火炎瓶は伊達じゃない。


その2「煮え煮え井上様」

都内某飲み屋にて。ギタリスト二人がギターの話で盛り上がっていた。元ジュディアンドマリーのタクヤと元ルナシーのイノラン。
仲良し同士である。
ちょうどタクヤが12弦ギターの話をした時、イノランが首を傾げた。
「タクヤ君、12弦ギターなんて持ってたっけ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたの?鳩が鉄砲水くらったような顔して」
死にます。
「・・・な」
「な?」
「なんでやねんっ!」
ずびしっと宙に手刀をつきだしてタクヤが叫んだ。
ツチノコより珍しい、京都人の「なんでやねん」である。
イノランは先程より3倍ぐらい遅い動作で首を傾げた。
「ほ、香港旅行の時っ!」
「あぁ、あれね、楽しかったねぇ」
一緒に行ったことは覚えているらしい。
「楽器屋でイノラン君が12弦ギター買おうとしたけどカードが使えなくて俺が代わりに出したやろ!?」
シマリス君並に(つまりほぼ水平に)首を傾げたままイノランはタクヤを見る。
「で、日本帰ってからイノラン君が“タクヤ君が金出したからタクヤ君のだよ”って俺に渡したやん」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん、そうだったねっ!」
思いだしてねぇだろ。
「ホントに思いだした?」
「・・・・・・うん」
「シラフの時にもう一回聞くからね」
元々据わりぎみの目をさらに据わらせて言うタクヤにイノランは朗らかに言い放った。
「シラフになったら忘れるよっ!」
(ハリセンを下さい、一発叩いてこの人の頭のネジ直すから!)

−あの12弦ギターエピがそもそも理解できない件について。


その3「じゅ〜でんちゅ〜(腐っぽい?)」

親しい人に抱きついて「じゅ〜でんちゅ〜(充電中)」と言って下さい。

タクヤ→イノラン
煮え煮え煮え煮え煮え煮え煮え煮え煮え。
既に舌は回らない、視線も合わない状況の中、タクヤはイノランの肩を掴んでみた、反応はない。
「じゅ〜でんちゅ〜」
「・・・・・・あは」
酔っているのでなにがなにやら。

イノラン→ケン・ロイド
「ケン、ちょっと来い」
ちゃんと素面でケンを呼ぶイノラン、素直に寄ってくるケン。
が、顔が見える位置まで来たところでイノランの顔に浮かぶ凶悪かつ凶暴な最凶の微笑みに気づき、今すぐにでも逃げたくなった。
「ケン、おいで〜」
声は優しげだがどこか笑いを含んでいるようにも聞こえる。ケンは覚悟を決めてイノランの前まで来た。ひょいと手を掴まれる。
「じゅ〜でんちゅ〜っ!」
「ちょっ!痛い痛い!ギブギブっ!」
関節技かけてます。

京→薫
「はぁ?無理やし、ありえんし・・・」ぶつくさ言いつつも薫に寄っていく京、良い人です。まぁ男同士のじゃれ合いと思えばそこまで恥ずかしいものでもない、が、直前で自分の年齢やらキャラやらに思いをはせてしまったのか急に恥ずかしくなってしまったようで、薫の隣に立ったまま固まっている。
「ん?どした、京君」
怪訝そうに見下ろす薫の服の袖を抓むととてつもなく思い詰めた顔で
「じゅ、充電中っ!」
と、叫んだ。
デスボイスで。
ぱたぱたと去っていく京の後ろ姿を呆然と見送るリーダー、薫。
「そろそろオフがいるなぁ、事務所に掛け合ってみるか・・・」
ものすごく良い人です。

ミヤ→逹瑯
「逹瑯・・・」
地を這うような声で名前を呼ばれ(ヤバイ、俺またなんかやったか!?昨日作詞放り出してゲーム三昧してたのバレた?それかミヤ君はマゾだって言いまくったの怒ってるとか!?)とまぁそんなテンションで1000文字分ぐらい頭の中猛省してから逹瑯はふり返った。
案の定、鬼目全開で真っ黒いオーラを放出しているリーダー、ミヤが立っている。が、内心ビビってるくせに天の邪鬼かつ俺様な逹瑯はあくまで尊大に「なんかよう?」と椅子から立ち上がった。
何故立つかって、立てば見下ろせるからだ。
ミヤの頭は逹瑯の肩の辺り。
視線が合わない。
「近づきすぎ」だと思ったのか、ミヤが一歩離れる。
視線が合った。
「っっっっっっっっっっっっっっ無理!!」
そう一言叫んでミヤは踵を返して部屋を出ていた。
「はぁ!?何が!?」
という逹瑯の当たり前な疑問には答えずに。
その後「なにが無理だったんだ?」と首を傾げる逹瑯にユッケが「顔が無理だったんだよ!」と言い。本気でどつかれるのはお約束なので割愛する。

ガラ→京
骨・・・ガラはしばらく虚空を見つめてからきっぱりと言った。
「無理です」
そうですね。

−ライヴで散々絡んでるのに改めてやれと言われると死ぬほど照れる。


その4「覚醒(ドリンク・オア・ダイ)」(時間軸は93〜4年辺り)

無敵と書いてエクスタシーと読むならば「ゆばまんがしら」と書いてなんと読もう・・・なんて、楽しいからいいんだけれど。
夜の闇が濃くなってくるにつれ正気を保っている人間はほぼ皆無といってよかった、喧騒というには優しすぎるレベルの盛り上がりはピンクな人を頂点に巨大な台風となって荒れ狂っている。
この時間帯になれば他の客もいないので店員もスルーしているようだ。
Jは壁に寄りかかるようにして座りながらお向かいさんを見た。
イノランが、酒を酒で割って飲んでいる。
飲まなきゃこの状況についていけないのでそこには突っ込まない。
なんでだかは知らないけれど、さっきから皿やビール瓶が宙を舞っている。
あれか、枕投げと同じ感覚なのか?
黙々と酒を飲み続けるイノランは意味もなく楽しそうだった。
ビール瓶がこちらに向かって飛んできた。「危ない!」とは思ったもののアルコール過多で脳がふやけているせいか声も出ない。
飛んできたビール瓶を見もせずに、イノランは頭を下げて避けた。壁にぶつかったビール瓶はそのまま床へと落ちる。
イノランは黙々と飲み続けている。
つぎに飛んできた皿をこれもまたチラリとも見ずに受け止めてからイノランはポツリと言った。
「俺、なんか今・・・覚醒してる」
「してる、してる」
その言葉にげらげら笑ってからJは気がついた、さっきからポテトだと思って囓っていたものは自分の大嫌いなキュウリであることに。
訂正しよう、正気を保っている人間は「ほぼ皆無」ではない。
「皆無」である。

−「二日酔いが怖いなら三日三晩飲み続ければ良い」という発想は悟りに近い。


その5「かっこいい言葉」(切り裂きムックより)

−ユッケの「かっこいいこと言って」という要求にたいしてサトチは悩んだ後「鋭利」と答えました。

スタジオにて、ユッケは携帯ゲーム機と格闘中の逹瑯に話しかけた。
「ねぇねぇたつぅの思う“かっこいい言葉”ってなに?」
「なんだよキノコ、今忙しいんだよ」
「ゲームやってるだけじゃん!」
相手をしてやろうと思ったのか偶々きりのいいところだったのか逹瑯はゲーム機を置いてユッケを見る。
「あぁ、ブログに書いてたやつ?」
「うん!“かっこいい言葉”」
「“かっこいい言葉”ねぇ・・・“俺”」
ユッケから冷ややかな視線を浴びせられるが逹瑯は全く動じずに睨み返す。
「間違ってねぇだろうが」
「まぁたつぅらしいけどさぁ」
二人が「かっこいい言葉」で盛り上がっていると、作業ブースからミヤが出てきた、また徹夜でもしたのか少しピリピリしている。
「なんの騒ぎだ?」
とミヤが聞いてもユッケと逹瑯は話に夢中で気がつかない。ミヤはしかたなくその様子をニコニコ笑いながら見ているサトチに声をかけた。
「なにがあったんだ?」
「お〜〜〜?ん〜〜〜〜??」
サトチは笑いながら頷いている。
「なにがあったんだ?」
「ん〜〜〜かっこいい言葉だべ!」
意味が分からない。というかサトチに聞くのがそもそもの間違いだ。
「あ、ミヤ君」
逹瑯がミヤに気づいた、ミヤの表情を見て一瞬で危険を察知したユッケと違い逹瑯はへらへら笑いながら言う。
「また徹夜?ほっそい目がますます細くなってるよ」
ぶちっ。
「逹瑯・・・」
そこまで来てようやくコトのまずさに気がついたパグ・・・いや、逹瑯は「はいっ!」と立ち上がって返事をした。
「オマエ、今日此処にいるってことは歌詞は出来上がってるんだよな?」
「えっと、あともうちょい推敲をすれば見せられる段階にいくかと・・・」
「なら今すぐやれ」
「はい!」
次に鬼目が捉えたのはキノコ・・・いや、ユッケだ。
「優介」
本名呼びである、本気でヤバイ証拠だ。
「・・・な、なに?」
「3曲目のベースライン、見直してくれるように頼んだのは終わったのか?」
「い、今すぐやりますっ!」
しゃちほこばった二人を前にミヤは重低音で言い放った。
「オマエら、仕事はちゃんとやれ」
いいようのない緊張感が包む現場の中で一人ニコニコと笑っていたサトチが突然言った。
「お〜ミヤ君の優勝だべ」
「は?」
ヤンキー顔全開になったミヤがふり返ってサトチを睨む。
「だから“かっこいい言葉”。ミヤ君が言った言葉が一番カッコイイっぺ!」
サトチ、超笑顔。
ミヤの肩が震えだしたのを見て「ヤバイ、マジキレする!」と逹瑯とユッケは焦ったが予想に反して・・・
「あはははははははっ!」
ミヤは笑い出した。
一頻り腹を抱えて笑った後「やっぱ、オマエらって最高だべ」と言い残してミヤは作業ブースへと戻ってしまった。
取り残されたパグとキノコもあまりの超展開に笑い出し、サトチは変わらずにニコニコとその様子を見ていた。

−バカは地球を救う。そしてミヤのツボはメンバーにも分からない。


その6「カバンの中」

ディルアングレイメンバー会議中。きゅぅぅぅと腹の虫が鳴いた。
「ちょ、今の誰?」
笑いを堪えてるのか頬をぴくぴくさせながら堕威が言う。
「・・・ごめん、俺」
そう控え目に言ったのは京、天下のボーカリストでも生理現象はしかたがない。
「なんや京君、お腹すいたん?」
薫の優しい問いかけに京は頷いて答えた。
「ほな、これ食べる?」
そう言って薫はカバンからあるものを取り出して京に渡した。
「あ・・・ありがとお・・・」
引きつった顔で京はそれを受け取るが、最初に堪えきれなくなった堕威が爆笑し、続いて敏弥が笑い出した、心夜も顔を伏せて肩を震わしせている。
「え?なんやおまえら」
「ちょ、薫君!カバンの中に“ハッピーターン”入れてんの!?」
笑いの発作が治まらない敏弥が途切れ途切れながら言うと薫は「そうやけど」とむしろなにが可笑しいのか分からないといった表情でメンバーを見渡した。
「大阪のおばちゃんみたいやん!薫君、自分の外見考えろや!」
息切れするまで爆笑した堕威に続いて「うちのオカン思いだす」と心夜も呟いた。
そう言われるものの薫はやはり分からないらしく、
「だって美味いやろ、ハッピーターン。なぁ京君」
と言って京に同意を求めた。
「そういう問題じゃないよ、ちょい悪親父みたいな外見した薫君のカバンからハッピーターンが出てきたのがもうっ・・・ぶははははははっ」
敏弥はまた腹を抱えて笑い出した。
「・・・京君、俺が変なんか?」
薫はしつこく京に同意を求める。京は手に持ったハッピーターンを見つめ、それから薫の顔を見た。心なしか目が潤んでいる。
「京・・・」
「ごめんっムリっ!もうムリっ!」
律儀にそう断ってから京も机につっぷして笑い出した。薫に気を使って本当にギリギリまで笑いをこらえていたらしい。
爆笑の渦に包まれる会議室の中で薫は「オマエらいいかげんにせぇよ」と言いながらも(ま、これだけ笑ってもらえたらええか)と微笑んでいた。

−薫、基本クーデレ、メンバーにはデレデレ。


その7「充電中逆回転」

親しい人に抱きついて「じゅ〜でんちゅ〜(充電中)」と言って下さい。
今回のルールは「照れたら負け」です。

イノラン→タクヤ
躊躇なく、イノランはタクヤに後ろから抱きついた。
「じゅ〜でんちゅ〜!」
それに対してタクヤはいつものポーカーフェイスを崩すことなくさらりと言う。
「これくらいじゃ動じまへん」
後ろから抱きつかれていたためイノランがニヤリと笑ったのが見えなかったのはタクヤにとって幸か不幸か。
がっちりとタクヤの首に腕を回してイノランはふっと耳に息を吹きかけた。
「うひゃぁぁ!」
珍妙な悲鳴を上げてタクヤは飛び上がった。
「ちょ、待て!耳弱いから!耳弱いから!」
「タクヤ君の弱点ぐらい把握してるんだな、これが」
「いや、なんのために!?ってうひゃっ!」
再び息をかけられて、もはや涙目だ。ふりほどこうにもがっちり掴まれている。華奢に見えてもギタリスト、腕力はあるらしい。
「すいません!俺の負けです!だからやめてぇぇぇぇ!」
完全に自分のキャラを放棄して叫ぶタクヤにイノランはようやく離れた。
「俺の勝ち!」と意気揚々とピースサインを出すイノランを前に(この人には勝てないっ!)と改めて思うタクヤだった。

ケン・ロイド→イノラン
偽?年下チームから「頑張って下さい!」という声援を受けてケンはパイプ椅子に腰掛けるイノランの後ろに立った。
(ライヴ中だと思うんだ、恥ずかしくない、恥ずかしくない・・・)と自分に言い聞かせて覚悟を決める。
イギリス出身なんだからハグの習慣あるんじゃねぇの?と突っ込まれそうだがケンは基本、シャイな男なのだ。
思い切ってばっと抱きつくとケンは「充電中!」と素早く叫んですぐに離れた。
イノランがゆっくりとふり返りケンを見る。
恐ろしく冷ややかな絶対零度の視線を向けられて平静を保てる人間がいるなら教えて欲しい。
「・・・すいません」
謝ってしまった。
もちろん正面を向いたイノランは勝利の笑みを浮かべていたのだが。

薫→京
薫は隣に座った京の頭に手を伸ばした。京は特にリアクションをせず黙っている。金に染められた癖っ毛をわしゃわしゃと撫でながら薫は少しだけ口角を上げた。
「どうしたん、薫君?」
京が黒目がちな目を向けると薫は笑って言った。
「《充電中》や」
「さよか」
京もちょっとだけ笑ってされるがまま頭を撫でられている。ツッコミ所満載の構図だが本人達はなんら疑問に思っていないらしい。薫が京に向ける視線なんぞを見ているとメンバー同士というよりは親子に思えてくる。
「だあああああああああああ!」
叫んだのは京でも薫でもなく正面に座っていた堕威。
「見てるこっちが恥ずかしなんねん!なんやそれ!?」
「だから充電中やん、なぁ京君」
「そやな、充電中や」
「・・・・」
堕威、何故か戦ってないのに敗北。

逹瑯→ミヤ
(ひ/ぐ/ら/し/の/鳴/く/頃/に/の緊迫したシーン風に)
「クールになれ!岩上逹瑯!」
相手はミヤだ、完璧な布陣を引く必要がある!おふざけでプロレス技をかけた上に下ネタを吐いても大丈夫なユッケとは違う、完璧な計画を立てる必要があるのだ!
そのために逹瑯は本日の仕事を一切サボらず、巫山戯もせず真面目にこなした!携帯ゲーム機を一度も出してはいない!今日一日の逹瑯に対するミヤの心証は悪くないはずだ!そしてこれで計画は完璧となるっ!休憩時間を狙って「ちょっとコンビニ行ってくるね」と言って買ってきたこれ。
『季節限定スイーツ・プリンパフェ』
ミヤの大好きな生クリームと苺がたっぷりのったスイーツだ。生クリームが好きすぎて自宅で生クリーム作ってボウルで食べちゃう、居酒屋でジョッキパフェ食べちゃう、団子屋で全種類食べた後「やっぱりシメはこれだよ」とか言って苺大福食べちゃう!そんなミヤはきっとこれで機嫌良くなってくれるはずだ!
「これで俺の計画は完璧だべ!」
不気味な微笑みを浮かべながら逹瑯はスタジオに戻った。
「ぐっちゃ!これお土産!」
親近感を出すため最近は使用頻度が減った「あだ名」でミヤを読んでプリンパフェを手渡した。
喜んで受け取ってくれるはず!と思ったがミヤはむしろ不審そうな顔で逹瑯を見た。
「え?俺に・・・?」
普段やらないことをやるからそうなる。
「う、うん!」
「そうか、サンキュ」
まだちょっと納得いかないという表情だったがミヤはプリンパフェを受け取って食べ始めた。
ミヤが食べ終わったら行動開始だ!
あっという間にプリンパフェを食べ終わったミヤの隣へ移動する。少し危なかったがミヤの機嫌は良いようだ。
恐る恐るミヤに抱きつくと逹瑯は小声で「充電中」と言った。
首の辺りに回した手がそっと掴まれる、どんなリアクションをされるのかと不安になりながら視線を下に落とすと、予想外に真摯な、そして優しいミヤの視線とぶつかった。
「逹瑯、なにか悩みがあるならちゃんと言うんだぞ?」

頭を掻きむしりながら走り去る逹瑯を見て「策士、策に溺れたなぁ」とユッケが呟き、ミヤは真剣な表情で「あいつやっぱりなにか悩んでるのか?今日一日様子おかしかったし・・・」と本気で心配していた。
逹瑯、敗北。

−改めて書いて思った、ミヤの甘味好きは異常だ。


その8「愛すべき関西勢」

ここに一見共通点のない二人がいる、ディルアングレイの敏弥とソフィアの黒柳。
いや、共通点ならあるじゃないかとすぐに分かる人も多いだろう。
二人ともベーシストだ。
しかし、もう一つこの二人には共通点がある。
『自分以外のメンバーが全員関西人』だというところである。
「やっぱり最初はついていけないですよね、関西のノリって」
敏弥の言葉に黒柳は重々しく頷く。
「ついていけないな。ところで君のところのメンバーの出身地は?」
「三重、京都、兵庫、大阪」
「まだ、いいじゃないか・・・」
「え?」
「まだいいじゃないか!ウチなんか兵庫、兵庫、兵庫、大阪だぞ!?しゃべればオチはないのか!とか言われるし、なんでボケてるのにつっこまないんだ!って怒られるし、浜田さんの後輩だとか理解できない自慢されるし、テレビでお笑い芸人に会うと異様ににテンションあがるし、あいつら未知の生き物だ!」
黒柳が吼える。クールキャラ放棄だ。
「でもまぁ、慣れたけどな・・・」
「・・・慣れますよね」
「ま、悪くはないよな」
「悪くはないです」
二人は小さく笑った。
「ところで君はどこ出身なんだ?」
「長野で〜す!」
「長野って・・・東北?」
「・・・愛知県と同じ中部なんですけど!つーか一応隣接してるんですけど!」

−愛知県民にとって仲間は三重と岐阜だけです。

その9「リーダーはつらいよ」

久々にメンバー全員がオフというその日、薫は自宅でマネージャから連絡を受けた。
曰く「明日の撮影がセッティングの関係で3時間早まったのでそれを全員に伝えて欲しい」とのこと。
マネージャーも色々忙しいので「それぐらいは」と引き受けた。
「問題は全員捕まるかどうかやな〜」と呟きながら薫は携帯電話を手に取る、まず最初にかけたのは敏弥。あっさりと通話が繋がったのでホッとする。
「とし坊、俺やけど」
『か、薫君ゴメンっ!』
「は?」
『あ、なんだ、あのことじゃないのか、ならいいいや!薫君、なにかあったの?』
「いやいやいや、ちょお待てや!オマエなにしたんや!?」
『気づいてないならいいよ〜、なにか用事?』
「ふざけんな、オマエ俺にあやまらないかんようなことしたんか!」
薫、意外と沸点が低い。
『た・・・ただいまおかけになった電話番号は現在使われておりません』
「今の今までつながっとったやん」
『えへ。薫君、昨日帰ってから鞄の中見た?』
そう言われたので慌てて鞄の中を確認すると・・・
「ちょ!なんで鞄の中にアッガイ入っとんねん!」
『え〜可愛いイタズラだよっ』
「電話じゃなかったらどついとるからな」と低音で言い放ってから薫は連絡事項を伝えた、ここで時間を取っている場合ではない。
次にかけたのは末っ子ドラマー心夜。これもあっさり繋がった。
「お〜俺や、俺」
オレオレ詐欺と勘違いされそうな言い方だ。電話の向こうで心夜の愛犬の声が聞こえるので自宅にいることが分かる。
『・・・ただいまおかけになった電話番号は現在使われておりません』
「おまえもか!それ敏弥もやったぞ!」
『・・・アレと被るなんて最悪や』
メンバーをアレ呼ばわりしたあげく舌打ちする心夜に少しビビりながら薫は連絡事項を伝えて電話を切った。
「次は京君やな、繋がりますように・・・」
京のライフスタイルに携帯電話は合わないのか自宅にいる率は高いのに繋がらないことが多いので薫はそう祈ってから電話をかけた。
拍子抜けするほどあっさりと京は電話に出た、威勢の良いかけ声や爆発音が聞こえるのでDVDでも見ているのだろう。
「京君、俺やけど」
『ただいまおかけになった電話番号は現在使われておりません』
「・・・ねぇなんやのそれ!?流行ってんの!?俺の知らないメンバー内ブーム!?」
『お客様のおかけになっている眼鏡は現在使われておりません、もう一度メガネのマ●ダでおかけなおし下さい』
「な・・・懐かしい!」
このCMを覚えてる人がいったい現在日本にどれだけいるだろう。
『薫君の眼鏡、ダサイよな』
「え、マジで!?」
そこは突っ込め、関西人。
『うん。で、なんのようや?』
そして否定してやれ、京。
「あ、あぁえっとな・・・」
本気でダメージを受けたもののなんとか立ち直り、薫は京に連絡事項を伝えた。
ラストは堕威、こちらも運よくあっさり繋がった。
「俺や、薫や!」
『携帯やからちゃんと名前表示されとるて、薫君。今日はどないしてん?』
堕威の朗らかな声を聞いた途端、薫は全身の力が抜けた気がした。
「だ・・・堕威・・・」
『どうしたん、薫君』
「誰もまともに電話も出てくれへん、俺ちょっと泣きそうや」
『なにがあったんや?』

その後悩み相談会になってしまい、連絡事項を伝えるのを忘れたため、集合時間になっても堕威が現場に来ずにマネージャーが泣くはめになったのだった。

−リーダーはみんなから愛されてます。


その10「ザレゴトメイテル?」

撮影のためにスタンバイ中のケンとイノランがパイプ椅子に腰掛け退屈そうにしていた。セッティングが押しているらしい。
暇が最高潮に達したイノランは気怠げな声でケンに言った。
「ねぇケン。猫の“ね”って英語でなんて言うの?」
「・・・“キャ”とか言わないからね」
ひっかけ失敗、イノランは軽く舌打ちする。
「じゃあさ“ともだちんこ”って英語でなんて言うの?」
「・・・っっなんとも言わねぇよ!」
ケンが顔を赤らめたのでイノランは満足そうに笑った、ひっかけではなく只のセクハラだったらしい。
「じゃあさ、イノラン“チミモウリョウ”って英語に訳したら何になるかな?」
ケン、反撃開始。
「魑魅魍魎ねぇ・・・“デビル&フェアリー”」
「・・・嘘だよね?」
「どう思う?」
にやりとイノランは笑う。これは判別かつかない。
「じゃ、じゃあさ!“チミモウリョウ”って書ける?」
「書けるよ」
イノランは特に躊躇した様子もなくその辺りに置いてあった紙の上にさらさらと文字を書き始める。
(すごい、書けるんだ!)と感動したケンの目の前に差し出された紙にはでかでかと
『ちみもうりょう』
と平仮名で書かれていた。
「漢字でだよっ!」
「漢字でなんて言わなかったじゃん」
「普通漢字だろ!この場合!」
エキサイトしてきたところでスタッフから「ケンさん、スタンバイお願いしま〜す」と声がかかった。
ケンが立ち上がってセットに向かおうとすると後ろから笑い声が聞こえる、数人のスタッフが笑っているらしい。怪訝そうに振り向くケンに一人のスタッフが言った。
「ケンさん、背中・・・」
「背中!?」
慌てて手を伸ばして探ると、紙が貼ってあるのが分かる。引っぺがして見てみると、下手くそな字でデカデカと『冷やし中華はじめました』と書いてあった。
一際大きな声を上げて笑い転げているイノランに紙を丸めてぶつける。
「バカじゃないの!?」
そう言いつつもあの笑顔を見ると許してしまう自分がちょっとだけ悔しかった。

−いたずら大魔王イノラン


その11「ゴーストハンター」

「なぁ薫君」
とてつもなく思い詰めた顔の京にそう声をかけられて、《保護者》である薫はすぐに相談を聞くモードになり、優しく「どうしたんや?」と返した。
「俺の家、幽霊がおんねん」
「幽霊!?」
「なんかな、夜中に叫び声が聞こえるんや」
「さ、叫び声!?」
「男の声でな、毎晩なんかすごいデスボイスのシャウトがするんや、それでいつもビックリして夜中に目が覚めるんや・・・」
それを近くで聞いていた敏弥は素早く隣にいた堕威に顔を寄せて小声で囁いた。
「ちょ、それってさ、十中八九自分の声じゃない?」
「・・・だよな、俺も思った。間違いなく京君自身の声やと思う」
「あれだよね、自分の寝言にビックリして起きてるんだよね!?」
「夢の中で《朔》か《マゴッツ》でも歌ってるんやない?」
笑いを堪えている二人には気づかずに京は真顔で薫に語っている。
「ちょっと怖いんやけど、俺どうしたらええかな?」
「えっとそうやなぁ、どうしたらええかな・・・」
真剣な京に薫は・・・
「薫君、顔引きつってるよ!気づいてるよ!オレらと同じ事思ってるよ!」
「気づいとるけど言われへんのやろなぁ、薫君は京君に甘いから・・・」
「だからってどーすんのさ、京君絶対気づかないよ」
「かといってほんまのこと指摘できへんやろ」
「だいたい京君も薫君に相談して解決すると思ってるとこがすごいよね」
「おまえ、容赦ないこと言うなぁ」
敏弥、年長者は敬ってやれ。
「あかん、薫君キョドりだした・・・」
薫はしばらく視線を宙に漂わせてから言った。
「こ、怖いんやったら俺の家泊まるか?」
「それはイヤや」
即答でキッパリと京は拒否した。
「うわっ、京君にとって幽霊より薫君の家泊まるほうがイヤなんだ!」
「そらもう薫君ん家なんか泊まったら世話焼かれまくって、実家帰った並に落ち着かんからな」
ひそひそと囁き合う二人の横を通って心夜が京の前に立った。
「京君、これ」
心夜が差し出したものを京は不思議そうに受け取る。
「御守り?」
「そうや、その御守りには悪霊封じの力があんねん、それ持っとったら絶対に幽霊は出ぇへんから安心してええで」
「ほんまに?」
「ほんまや」
「・・・ありがとう」
頭の周囲にクエスチョンマークを大量に散らした残り三名をよそにその日はそのまま解散となった。

翌日
「心夜!この御守りすごいわ!昨日は叫び声聞こえへんかった!」
嬉しそうに報告する京に心夜も微笑む。
「よかったな。その御守りは京君にあげるから持っとき」
「ありがとう!」
京が部屋を立ち去るのを確認してから残りの三名が心夜のところに寄ってくる。
「やもちゃん、あれどういうことなんや?」
「・・・プラシーボ効果」
「プラスチックの脂肪??」
そう疑問を返した薫に心夜から冷たい視線が送られる。
「まぁこれで解決なんやから、よけいなこと言ったらあかんで」
そう言って心夜も部屋を出ていった、後には相変わらず「?」でいっぱいの三人が残された。

−京君はすごく簡単に引っかかるか、はなから信じないかのどちらかだと思う。


一応解説すると、睡眠中に叫んで起きる癖がついていた→それを幽霊だと思いこんでいた→それを「幽霊」だと肯定した上で「御守り」渡し、「もう幽霊は出ない」と信じ込ませた→そもそも自分で起こしていた現象なので「幽霊は出ない」と信じ込んだことにより睡眠中に叫ばなかった→解決。



その12「そんな二人」

繁華街と商店街の間ぐらいのにぎわいの道を元フレアの二人が歩いていた。スギゾウとユウナ、背景に薔薇を散らしたくなるような組み合わせだ。
二人ともクレープを手に持って食べながら歩いている、成人男性二人がやってるのはなかなか珍しいが、この二人ならまぁいいかなぁと思わせてしまう。
「あ、にゃんこだ!」
唐突にスギゾウが道端に座っている猫を見つけて笑顔で寄っていこうとする。隣にいたユウナは一瞬反応が遅れて何を思ったかスギゾウの長い髪を掴んで止めた。
しかも思いっきり。
見た目よりずっと力の強いユウナに引っ張られ、スギゾウはがくんと後ろに反り返る形になった。ギターソロの如く。
「なにすんだよっ!」
当然ながらキレるスギゾウにユウナはにこやかに言った。
「猫アレルギーなんですから、にゃんこ触ったらダメですよ」
「・・・あ」
いい大人が「にゃんこ」って言うなよって感じだが、この二人なら以下略。
「だからって髪掴んで止めることないだろ」
当然の主張だが拗ねたように言うのは十歳年上としてどうなのか。
「ほかに掴むとこなかったんですもん」
「ならしかたないか〜」
しかたなくねぇよ、服でもいいだろ、そもそも呼び止めればいいだろ。
「でも可愛いですね、にゃんこ!にゃあ!」
「にゃあ!」
成人男子が二人揃って野良猫に猫語で挨拶するのもどうかと思うが、以下略。
「ちょっと症状出ても良いからなでなでしたいなぁ」
「ダメですよ〜これからランチなのに鼻出して行く気ですか?」
「ん〜じゃああきらめる・・・」
なでなでとか言うな、ランチとか言うな、あとスギゾウ、10歳下の後輩に猫ごときで宥められるな。
「久々ですね、チョコレートフォンデュ」
「行ってる回数は多いけど頻繁には行けないもんな忙しくて」
今、クレープ食ってんのにさらに甘いもの食べに行くのか!?つーかランチにチョコフォンデュ!?
「美味しいですもんね、あそこのビュッフェ」
あぁ、食べ放題の一部にチョコフォンデュがあるってことですね・・・なにそのOLが行きそうな店。
「俺、いいかげんあの店の店員に顔覚えられてるよ〜」
「俺もしょっちゅう行ってるから覚えらえてますよ」
あの・・・・・すいません、お客様の中にツッコミのできる方はいらっしゃいませんか!?私にはもうムリですさようならっ!(脱兎)
「あ!《地の文》が逃げた!」
「いいじゃないですか、スギゾウさんが喋ってれば50ページぐらい持ちますよ」
「それもそうだな、よし、喋ろう!」
強制終了。

−ツッコミ不在の会話。


その13「半ハゲの行方」

「なぁ、ちょっとええか?」
ディルメンバー会議中、堕威が真面目な顔で手を上げて話を止めた。
そしてビシッと敏弥を指さして言う。
「帽子かぶれや、気になって集中できへんっ!」
「ほえ?なにが???」
不思議そうな顔をする敏弥に向かいでハッピーターンを栗鼠のように囓っていた京が顔を上げて言う。
「オマエの半分ハゲな髪型がおもしろすぎて話に集中できへんってことや」
敏弥の髪型、半分スキンヘッドで半分ロン毛。
「え〜だってこの髪型カッコイイってみんなも言ってくれたよね!?」
「いやいやいや、そらライヴとか撮影の時はええで、その、なんて言うか・・・」
的確な言葉を探して悩む堕威に心夜がボソリとフォローを入れる。
「日常生活で見るのはキツイ」
それに便乗して京も一言。
「つーかキモイ」
「まじまじと見ると本当に気持ち悪い」
「美的センスが崩壊しそう」
京と心夜から交互に抉るような言葉を浴びせられて、敏弥は焦った。
「そ、そこまで言わなくても・・・ちょっと、薫君!この二人ちゃんと教育したの!?」
「俺が育てたわけとちゃうし」
笑顔で返す薫に堕威は感心した様子。
「まぁ確かにそうやな」
「いや、もう1823回目やからな、その台詞」
「そんなに言われてるんや・・・つーか数えてんのかい!」
「ちなみにその内の1809回が京君のことなんやけど」
「それネタ?マジで数えてるの?」
「マジで数えてるの」
薫、根に持つタイプなのだろうか。
「も〜!じゃあ帽子かぶるけどさ、暑いからエアコンの温度下げてよ」
「俺が寒いからイヤ」
キッパリと言い切る京、さすが殿。
「とっちは京君のそういうとこ大好きだよっ!」
と戯ける敏弥は京から蛙の礫死体でも見るような視線を送られて大人しく帽子をかぶった。
「そういや敏弥、おまえその後どうするんや?その頭」
「どーいうこと?」
「その髪型止める時、どうやって止めるんやってこと」
堕威の質問に敏弥は少し考えてから答えた。
「ん〜いっそスキンヘッドにしちゃおっかな〜って思ってるよ」
敏弥のスキンヘッド姿を想像しているのか一同に沈黙がおりる。
しばしの静寂の後、心夜の一言。
「なんかにゅるっとした感じになりそうで気持ち悪い」
「・・・・・・さ、会議の続きしよか」
「え!?フォローなし!?俺ちょっと心が折れそうなんだけど!」

−たぶんみんな同じことを思った。


その14「リーダーと僕」

はい!どうも、ムックのイケメン天才ボーカリスト逹瑯様です。
《地の文》がツッコミ疲れで知恵熱出して倒れたので、キュートな俺が語り部ってわけですよ。
今、パグって言ったやつ、一歩前へ。
耳元でデス声で叫んじゃうよ?なに?俺のデス声なんか怖くないって?
・・・誰と比べてだよ。
京さん?いや、あの人とデス声で張り合う気はないよ!たぶん誰もないよ!
まぁそれはおいといて現在の状況を説明すると、ミヤ君が隣で寝てるわけです。
はい、今やましい想像したやつ、一歩前へ。
近距離で変顔しちゃうぞ!な〜んてお茶目な俺。
なんでこうなったかといいますとね、ムックとメリーのメンバーで飲んでたんですよ、そしたらミヤ君がつぶれちゃってね、送ってけとか言われて。タクシーでミヤ君の家まで行ったんですけどね、ミヤ君の鞄あさっても鍵が出てこないんです!
なんか大量にチロルチョコは出てきたんだけどね!50個ぐらい!種類はね、『いちごミルクもち』と『あまおうタルト』と『練乳いちご』でした。苺ばっかだよ!
どんだけ苺好きなんだよ!
もう鞄の中がカオスなんですこの人!
なので諦めて俺の家に連れてきました、今は寝かせてます、床で。
だって他人にベット触られるのいやじゃね?(←神経質)
ちゃんと頭のとこにクッション置いてあげたんだよ、俺って優しい!
ソファに寝かせればいいだろって?
そんなことしたら俺がくつろげないじゃん!
あとユッケも酔いつぶれてたんですけどね、ガラが介抱してる隙に置いて来ました。
前にネロ君が背中で吐かれたっていうのに学習能力ないね、ガラは。
ヤスは途中で逃げたから明日どつきます。
ミヤ君は平和そうに眠ってます、顔に落書きしてやろうかと思ったけど、この方の寝起きの悪さは世紀末的なので止めました。
まだ命は惜しいので。
顔にテトさん乗せて遊んでるけどね!全然起きないんです!熟睡リーダー!
それも飽きたんでぼちぼちゲームでもして遊ぼうかな。
「・・・ん」
あれ、ミヤ君起きるのかな?
「・・・あなたが大嫌いです」
いきなり嫌われた!?
「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い・・・」
寝言で『大嫌い』歌ってるのか、びっくりしたぁ。
「○※◆×△β〜」
口でギターソロやっているようです、夢でもギター弾いてるなんて仕事熱心なリーダーです。
ちょっぴり感動したので、タオルケットをかけてあげました。俺って優しい!

翌朝、目を覚ましたミヤ君に「口の中が猫の毛だらけだ」とか「身体の節々が痛い」とかキレられました。なぜかチロルチョコを3個パクったのもバレて怒られました。
ミクシィで新しいメンバー探してやる!と言ったら口きいてもらえなくなりました。
理不尽だ!

−ミヤ君はツンデレ


その15「憧れのあの人」

明希がイノランになかなか写真を頼めなかった理由を予想してみた。

某イベント楽屋内で、一幅の絵のような景色が存在していた。
イノランとハイドが談笑しているのだ。
V系界の絶世美形二人が並んで話している姿は、女性スタッフなどは思わず立ち止まって見とれてしまうくらい美しい光景だ。
そこから少し離れたところでシドの明希がその様子を見ていた。
「マオ君!イノランさんだよ!」
隣にいるマオの首を掴んでがくがく振りながら明希のテンションはメーターをブッ千切っていた。
「ちょ、明希!苦しい!」
「ど、どうしよう!?写真一緒に撮ってもらえるかな!?」
「頼んでみたらいいだろ」
やんわりと明希の手をふりほどきながらマオが苦笑する。
「い・・・行ってくる!」
デジカメを手に明希、出陣!

そろそろと近づいて二人の会話が聞こえる位置まで明希はやって来た。
「やっぱさ、電車って痴漢多いよねぇ」
「多いわ〜。俺なんか変なオヤジに太股撫でられてん、あれキモかったわ」
「それって髪長い時?」
「そうや、腰ぐらいまであったかなぁ」
「それさぁ、たぶん女と間違われたんだよ、俺も女と間違われてよくナンパされたもん、髪長い頃」
「ん〜。そんな女っぽかったかなぁ」
「俺なんか中学の時に拉致されかけたからね!」
「拉致はキツイな、拉致は!」
「でさぁ、こっちの世界入ったらやたら先輩が口説いてくるんだよ!一回やらせてくれとかなんとか」
「あぁ、俺も言われた。×××さんとかかなりしつこく言われたわ」
「俺は××さんかな〜。ずっと断ってたけどあんまりしつこいとさ、一回ぐらいいいかな?とか思っちゃって若気の至りで」
「え〜!?それでヤったん!?」
「ないない!さすがにねぇ・・・なんか変なランキング付けられるし」
「あぁ!姫ランキングな!オマエに票入れたぞ〜!とか言われて」
「言われた、言われた!」
そんな会話をしながらハイドとイノランはけらけら笑っていた。

「あれ?明希、写真断られたの?」
戻ってきた明希にマオはそう声をかけた。
「・・・いや、なんていうか・・・俺の知らない世界が展開されてた」
「は?」
遠い目をする明希にマオは深く質問することができずに黙り込む。
談笑を続けるハイドとイノランは相変わらずそのままフレームに収めたいぐらいの美しさでそこに存在していた。

−綺麗な花には毒があるんです。


その16「着信あり!」

ディルメンバー撮影のためスタンバイ中。パイプ椅子に腰掛けて雑誌を読んでいた薫はすぐ近くで鳴るバイブ音に顔を上げた。
机の上に置かれた携帯電話が振動している、薫のものではない、京の携帯電話だ。
一応教えてやったほうがいいかなと部屋を見渡すと京は部屋の隅っこで荷物に埋もれて丸まりながら携帯ゲーム機で遊んでいる。
ジャンガリアンハムスターのようだった。
緩む頬を押さえながら京に声をかけようとする薫を隣にいた堕威が肩をばんばん叩いて止める。「なんだよ?」と睨みつけると堕威は口を押さえながら京の携帯電話の画面を指さしている。「見てみろ」ということだと解釈して薫も携帯電話をのぞき込んだ。
『メール着信あり まこてぃ』
「っっっっっっっっ!」
「京君、ガラのこと《まこてぃ》って登録してんで!?」
堕威が肩を震わせながら小声で言う。
「入れたんや!自分で《まこてぃ》って入れたんや!」
笑うのを我慢するあまり薫は口角がぴくぴくと引きつっている。
「な、なぁ薫君・・・オレらのことはなんて登録してんのかな?」
まだ顔はにやけている堕威がもっともな疑問を言う。
「そやな、なんせ《まこてぃ》やもんなぁ、気になるわ・・・」
かといって京のアドレス帳を勝手に見るわけにもいかない、間違いなく激怒されるだろうし、それ以前にマナーの問題だ。
「あ、そや薫君、今、京君の携帯に電話かけてみたらええんやない?そしたら名前表示されるやん」
「そやな!堕威、頭ええなぁ」
薫はさっそく自分の携帯電話を取り出して京の番号を選択する。再び震えだした携帯電話に表示されたのは。
『着信中 薫くん』
という文字だった。
「なんや、案外普通やなぁ」
堕威が残念そうに言う。なにを期待していたんだ、なにを。
「でも平仮名で《くん付け》なのがなんかええなぁ」
薫は嬉しそうだった、末期である。
「じゃあ俺も普通やろな」と呟きつつ、堕威も京の携帯電話にかけてみる。
表示された文字は・・・
『着信中 安東』
「えぇ!?なんで俺は名字なん!?しかも名字だけ!?」
「なにしてんの?」
「いや、だから京君の・・・・あ・・・・」
いつの間にか目の前に京が立っており不思議そうな顔で二人を見ている。
「俺がなんやねん?」
「え・・・いや、なんでもないねん!」
不思議そうから不審そうに表情を変えて京は自分の携帯電話を取った。
「・・・なんで二人とも俺に電話かけてんの?」
「「・・・・」」
二人は頭をフル稼働させて考えたが、この行為の言い訳など思いつくはずもない。
眉間にシワを寄せる京の前で縮こまる年上チームを横目に、心夜が心底呆れたようにため息をついた。

−不覚にも萌えてしまった年上チーム


その17「コーラスお願い!」

ONDの会議中の出来事。ルナシーメンバーは練習スタジオの二階で細かい部分の話し合いをしていた。
「イノラン、この曲なんだけどさ、コーラスやってくれない?」
スギゾウが隣に座っているイノランにそう言うと、イノランは少し首を傾げた「なんで?」という意味を読みとってスギゾウは続ける。
「イノランのほうが声量あるしさ、すげぇ上手くなってるし」
「ん・・・でもそこは杉ちゃんだよ」
「いやいや、そこをさ、イノランにやってもらいたくて」
「杉ちゃんでいいと思うよ」
煙草を加えたままにこりと笑ってイノランはスギゾウを見る。
「だからさ、俺的にはここにイノランのコーラスが欲しいなと思うんだ」
ここぞとばかりにスギソウは持ち前の饒舌さをフル回転させてイノランを口説きまくった。10分後、うんうん頷きながら話を聞いていたイノランにスギゾウは最後の一言を言う。
「どうかな、やってくれる?」
「ん〜〜〜〜〜〜〜。イヤだ」
超笑顔で簡潔に断る井上様。
「そうか、ならしかたないなぁ」
スギゾウも今ので何をどう納得したのか笑って頷いている。
(つーかスギソウの言い分を論破せずに黙らせるのってイノランぐらいだよなぁ)
とその会話を聞いていた真矢は心の中でツッコミを入れていた。

−理屈で話すタイプと感覚で話すタイプでは感覚で話すほうに軍配が上がります。


その18「世界で一番お姫さま!」

ムックメンバーレコーディング中。「さし入れで〜す」とスタッフから渡されたのは某有名ドーナツ店の2箱。スタッフはそのうち一つを、逹瑯、ユッケ、サトチが座っていたテーブルに置くともう一つの箱をミヤに渡した。
「お〜ありがと〜」
笑顔で受け取るミヤに「ちょっと待ったっ!」と逹瑯が声を上げる。
「なんでミヤ君には一箱まるごとなの!?」
「あぁ、ミヤさんのは本人の自腹で買ったものですから」
とミヤの代わりにスタッフが答える。
いや、そこも問題なんだがもっと問題なのは・・・
この店の箱入りドーナツセットは有名で、ちょいちょいさし入れとして来るので逹瑯も知っている、これは12個入りのセットだ。
「ぐっちゃ!ドーナツ12個も食うの!?」
思わずあだ名呼びをして、引きつった顔で聞く逹瑯にミヤは当然だろうといった表情で言う。
「だっていろんな種類食べたいだろ?」
「限度ってもんがあるだろ!?」
めずらしく正当なツッコミを入れる逹瑯だが、ミヤに不思議そうな顔をされてしまった。
「・・・・・・ミヤ君、太るよ?」
「頭使ってるから大丈夫だべ」
笑顔でそう返されては逹瑯も二の句の継げがない。
「お〜〜なんか、あれだな、あれ、あれ、アリみたいだな!」
サトチが突然そんなことを言い出した。隣にいたユッケが小声で「主語言って、主語!」と呟いたのを受けてサトチはしばらく考えてからもう一度言い直す。
「甘い物が好きってぐっちゃ、なんかアリみてぇ」

いや、蟻はねぇだろ、蟻は!

その場にいた全員が心の中でそう叫んだが、あまりに爽やかに断言されてしまったので、上手い否定の言葉が浮かばない。
逹瑯とユッケが必死で「甘い物好きな可愛いorカッコイイ生き物」を考える中、ミヤはドーナツを頬張りながら
「そうか、俺はアリか〜」
と何故か嬉しそうに笑っていた。

−欠点?かわいいの間違いだべ!文句はゆるしません。


その19「僕たちのラッキーナンバーは《9》」
(96年〜98年辺り)

深夜11時45分。これでも充分早く終わったほうだ。Jが事務所の出口に向かって歩いていると後ろからイノランに声をかけられた。曰く「これからタクヤと遊ぶんだけど、よかったら一緒にどうか?」とのこと。
確かにタクヤは共通の友人だが三人で遊んだことはない、どうして誘ってきたのかと聞くとイノランは笑って「気づかない?」と言った。
「なにがだよ?」
「今日は何日?」
「えっと、9月8日だろ・・・あ!」
明日、正確にはあと15分でタクヤの誕生日だ。
「これからタクヤ君は不眠不休でお祝いしまくられるからね〜その一番手が俺ってわけ。まぁ一番手なのは単なる仕事の都合なんだけど」
イノランは嬉しそうだった、しかし「不眠不休でお祝い」ってなにか辛いものがあるような気もするが。
しかし友人の誕生日なら祝いたい。Jは一緒に行くことにする。
驚いたことに、タクヤは事務所の出口で待っていた。最初からそういう予定だったらしくイノランは「タクヤ君!」と駆け寄って行く。
タクヤも軽く笑って手を振りそれに答える。奇妙なのはその後の二人の行動だった。何故か向かい合って腕時計を見つめたまま無言で固まっている。
何事か?と思ったが、二人の間に漂う奇妙な緊張感に声をかけることができず、Jも腕時計を見つめた。
もうすぐ日付が変わるというころ、二人は5秒前からカウントをし始めた。
5,4,3,2,1,0
「タクヤ、誕生日おめでとう!」
「ありがとう、イノラン」
急にお互いを呼び捨てにしてそう笑い合う二人にさすがのJも我慢できなくなって聞いてみる。
「なぁ、なにやってるんだ?さっきから」
「俺とタクヤね、今日から20日間だけタメなんだ」
「そう!今、俺とイノランと同い年!」
(だからなんだよ!?)
のど元まで出かかったその言葉をJはぐっと飲み込んだ、タクヤもイノランもとても嬉しそうだったからだ。
よくは分からないが、彼等にとっては大事なことなのだろう。
理解はできないけれど。
「同い年になったところでイノランに言いたいことがあるんや、ここ半年、俺の携帯の着メロがちょいちょい《必殺仕事人のテーマ》になってるのはイノランの仕業かな!?」
「タクヤ、それはきっと妖精さんのイタズラだよ、きっと今日あたりまた変わってるんじゃないかなぁ」
「妖精さんは今、俺の目の前にいますか?」
「心の綺麗な人には見えるから、きっとタクヤにも見えてるよ」
「その妖精さんの名前は《イノラン》やろ?」
そう言ってけらけらと笑い合う二人の横でJは帰りたい気持ち半分と面白いのでもっと見ていたい気持ちに揺れていた。
「とりあえずどこからつっこんだらいいのか分かんねぇんだけど・・・おまえら馬鹿か!?」

−シメの言葉は「イエス・フォーリンラヴ」で

千年花のPVでイノラン=妖精説が浮上したのがもはや「懐かしい」部類に入る話題であることにびっくりした。


その20「新本格魔法少年京」

薫は何故か廃墟の中に立っていた。朽ち果てたコンクリの建物。他に人影はない、いや一人だけいる。
薫の真正面にドレインのPV衣装を着た京が立っている。衣装がドレインであるだけでメイクはしておらず髪も金色だった。
何故か赤い三角帽子(魔女が被るアレだ)を被って。
手の甲から血が滴っている。
京が流血しているのは珍しいことではないが(冷静に考えたらそれもどうなんだって話だが)それでもライヴ以外で怪我をしているとなると保護者気質の薫は「すぐに手当しないと!誰か呼ばなきゃ!救急箱!」と慌ててみたりするのだが、京はなんのリアクションもせずに無表情で立っている。
「京君?」
不安になって声をかけてみると京の姿が突然、爆ぜるように消えた。
そして、世界は赤に包まれた。
目の前が赤い赤い赤い赤い波に呑まれる。
一面の、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤、赤。
廃墟の地面に広がる赤い水面、京の姿はなく赤い帽子だけが風に飛ばされたように舞っていた。
「きょ・・・」
唖然とする薫の周囲で声が響き渡った、歌のような節のある、聞いているだけで飲み込まれそうな京の声。
「のんきり・のんきり・まぐなあど ろいきすろいきすろい・きしがぁるきしがぁず のんきり・のんきり・まぐなあど ろいきすろいきすろい・きしがぁるきしがぁず まるさこる・まるさこり・かいぎりな る・りおち・りおち・りそな・ろいと・ろいと・まいと・かなぐいる かがかき・きかがか にゃもま・にゃもなぎ どいかいく・どいかいく・まいるず・まいるす にゃもむ・にゃもめ」
不快な音を立てながら赤が渦巻き、廃墟にその声は木霊する。
「にゃるら!」
にゅっと地面に広がる赤の中から腕が生えてきた。《今の》京の腕ではない、禍々しい入れ墨がない、筋肉などほとんどついていない、細く、白い腕。
その腕に見覚えがある。
腕が数回宙を掻き、赤い帽子を掴んだ。
赤い海がその腕に集約されていき、最後に残ったのは一人の少年。
長い髪、細く華奢な体、今より数段幼い顔立ち、それでもなお印象深い大きな漆黒の瞳が混沌をたたえて揺れている。
「・・・え〜と、京君?」
薫の記憶に間違いがなければ、それは出会ったころの京の姿だった。
衣装はドレインのままだったが。
「は〜はははは!どうも、こんにちは!たいへん長らくお待たせしました!パーフェクト京様!かっこいい〜!ぜっこ〜ちょう!わぉっ!メラゾォマァァァァ!」
少年の姿の京は高笑いしながらそう言って三角帽子を被って薫を見る。
「あれ〜!?あれあれあれ!薫君!?しばらく見ない間に老けたなぁ。つーか太った!?」
「え、あ、ごめん。っていうか京君!?」
「京様やで〜!なんや、しばらく見んうちにメンバーの顔も忘れたんか?」
そう言って京は猫を思わせるアーモンド型の目を細めて笑った。

「・・・っていう夢を見たんやけど、どう思う?」
至って真剣な顔の薫にメンバーから冷ややかな視線が送られる。
「薫君、欲求不満?ていうか変態?」
敏弥、年長者は敬ってやれというに。
「なんか色んなものが混ざりすぎて意味不明」
心夜、そこは夢なんだから大目にみてやれ。
「まぁあの頃の京君は可愛かったわなぁ、薫君デレデレやったし・・・それは今もか」
その発言もけっこうアレだぞ、堕威。
手酷いツッコミを他のメンバーが薫に入れるなか京は一人
「っていうか・・・俺、昔そんなキャラやったっけ?」
と首を傾げていた。

−京君ならできると信じています


元ネタは『新本格魔法少女りすか』りすかは17年時間を早めて大人に変身するわけですが京君には逆行してもらった、いっそ7歳ぐらいにしてやろうかと思いましたが自重。りすかの変身シーンはもっとグロいんですがそこも自重。
『赤』の衣装がドレイン以外浮かびませんでした。さすがに「赤のワンピース」を着せるわけにもいかないし。問題なのはドレインの衣装は長袖なので筋肉のつきぐあいまでは分からないんじゃないかということ(入れ墨は手の甲まであるから判別できるけど)本当はもっとパロりまくりたかったんですが京君に「りすかポジション」はできても薫君に「創貴ポジション」はムリだろうなと、彼には策士もムリだし非情さがない。

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