プロンプトくんとキャンプ〜ご飯編〜

「すっごーい!!」

「だろ。オレの自慢のコレクションだからな」


今回の目的地である街はかなり遠くて、イグニスの想定通り到着前に日が暮れちゃったから、パーキングが近い標でキャンプをすることになった。
トランクからキャンプ用品を取り出すグラディオに瞳をキラキラ輝かせながらついて歩くなまえさん。ハンターである以上、自給自足…野営をする事が多いわけで、昔は四苦八苦したそう。でも今ではキャンプマニアなんだって。グラディオと同じ、ね。


「そっち引っ張ってくれ」

「はいよーっ」

「……」

「…見過ぎじゃね?」

「なっ、ノクト?!見てないし?!」

「水、溢れてんぞ」


ノクトの声に心臓が跳ね上がって、言われて手元の鍋に視線を落としてみれば、注いでいた水が鍋からダバダバと溢れていた。慌ててボトルを持つ手の傾きを直してキャップを締めると、鍋の水を8分目くらいまで減らして焚き火にくべる。


「…最近考えてるんだよね」


なまえさんは毎日のように…いや毎時?10分おきって言っても過言じゃない!ー…に、オレに「好き」って言う。そりゃたまにはふざけてみんなにも言う時はあるけど、抱きついてきたりベタベタするのはオレだけ。
そうなるとオレに一途なんじゃん、ってなるんだけど…何しろ出会ってまだ日は浅いし、2回目に顔合わせた時に「好き」って言われてたしさ、疑うって言ったら悪いけど、簡単にハイそーですかって受け入れられるほどオレも軽くないしね?!


「グラディオ引っ張りすぎー!」

「悪い悪い!」


グラディオと楽しそうにテントを張るなまえさん。すごく無邪気な笑顔で…もう空は星が見え始めているというのに、その笑顔は太陽のように眩しい。


「ねぇノクト、聞いてもいい?」

「あ?なにを」

「ノクトはさ、なまえさんの事どう思う?可愛い?」


突然の質問にギョッと目を見開くノクト。「別に聞いただけだから!」と付け足すと、「それ聞くか」と困ったように髪を掻き乱してから言った。


「顔とか性格はもちろん悪くねぇし、強いし頼りにしてる。…あとはバカやんのも悪くねぇってとこ」

「…ふ〜ん、なるほど…」


まぁノクトは正直(嘘つけないって言うか)だから、そんな感じなんだろうなとは思ってたけど。


「……」

「オイずりぃぞプロンプトは!」

「えっ、オ…オレは……可愛いと思「プロンプトくーん!」うわあ?!」


危ない!!
何が危ないって、正面から飛びついてきたなまえさんを何とか抱きとめたのと、まさか話してる時になまえさん本人が来るなんて…!
さっきまでテント張ってたのに、と視線をそちらに向けてみればテントはすっかり綺麗に張られていて、グラディオは夕飯を作るイグニスの隣でコーヒーを飲みながらお喋りをしていた。


「…セーフ」

「なにがセーフなの?」

「あ、いや何でもな「こいつずっとなまえの事見てたんだぜ」ノ、ノクト?!」

「えー本当?嬉しいなぁ」


ノクトまじなに言ってんの?!オレもいい加減怒るよ?!
裏切った上にニヤニヤしちゃってさぁ。なまえさんも嬉しそうにニヤけてるし!オレの味方はいないの?!


「何でわたしを見てたのか聞きたいなぁ〜」

「へ?」


相変わらずニヤニヤしながら当然のようにオレの隣へ腰をおろしたなまえさんの発言に心臓は落ち着いてくれない。


「うーんと…強くて頼りになるし、一緒にいて楽しいねって」

「ふーん?」

「…それだけだよ?」

「へーえ?」

「……」

「……プッ」


なんて返事しようか悩んだ結果、ノクトのを丸パクリして仲間として心強い事を話していたと答えれば案の定なまえさんはつまらなそうに聞き流して、他はと言いたげに見つめてくる。
目をそらしたら怪しまれると思って頑張って見つめ返してるけど、そろそろ冷や汗が吹き出てきそう…という時にノクトが吹き出し笑いした声で空気が変わった。


「もう勘弁してやれよなまえ…くくっ…」

「ねぇノクトひどくない?!」

「いや、なまえが楽しそうだからさ」


お腹を抱えて笑うノクトの背中をばしんと叩いてやっても懲りてなくてなまえさんの味方につく発言。それを聞いたなまえさんはノクトとハイタッチしてるし…もう…。


「オレの味方ほしい」

「わたしがいるじゃん!」

「いやいやいや!どう考えてもなまえさん敵だから。むしろ原因」


思わず心の声が漏れてしまうと、すぐ隣からひょいっと顔を覗かせるようにして立候補するなまえさんに、手をぶんぶん振って全力で否定した。もちろん、そりゃ敵でしょ…味方だったらそもそもオレとなまえさんが付き合ってるとかイジられる事ないだろうし。


「ひどーい、こんなに好きなのにっ」

「ぐえっ」


でた、なまえさん必殺抱きつき攻撃。もう何度抱きつかれた事か…


「わたしいつまで片思いなんだろー」

「もう付き合ってんだろ?」

「ノークートー???」

「だってプロンプトくんから1回も好きって言われた事ないよ?」

「言わないってば!」


ダメだ…グラディオもやっかいだけどノクトは悪ノリがひどい。
もう何言っても無駄な気がしてきた…と絶望感でいっぱいになっていた時、イグニスから食事に呼ばれた。女神!お母さんじゃなくて女神だよ!!


「イグニスありがとう!ちょー女神!」

「何だそれは…」


抱きついているなまえさんを離させて一番乗りでイグニスの元へ走っていく。手袋をしていない両手を握って感謝を伝えれば眉間のシワが深くなった。
そして遅れて来たノクトとなまえさんの目の前に、最大の敵であり、オレの味方が現れる。


「げっ!!」

「うわ!!」


「次は食べる、と約束したのを忘れていないよな、なまえ」


イグニスが持つお皿に盛り付けてあったのは、イグニス特製、ごろごろ野菜たっぷりのカレーだった。2人の顔は恐怖に歪んでいる、気がする。よっぽど嫌いなんだね…
オレにも苦手なものはあるし、可哀想だけど、ごめん…フォローしてあげる気が起きないんだけど。ごめん。


「なまえのせいでオレまでとばっちり食らったじゃねーか!」

「違うし!てかノクトわたしの味方なんでしょ?!わたしの全部食べてよ!」

「1人1皿完食しろ」

「えー?!」


相変わらず鬼のように責め立てるイグニスと迫るカレーに後ずさるノクトとなまえさん。じりじりと距離が縮まっては離れを繰り返していると、なまえさんが口を開いた。


「わ、分かった!プロンプトくんが全部あーんしてくれるなら食べる!」

「え?!なんでオレ?!」


もうどうやって抵抗しても無駄なのになーなんて他人事のように考えていたらまさかのオレの名前が出てきて、しかもオレがあーんしなきゃ食べないなんて意味わかんなくない?!なまえさんのバカ!!って内心悪態をついていると、イグニスの視線を感じた。


「頼まれてくれるか、プロンプト」


…どうせ拒否権はないと思ってたよ。
っていうか女神だと思ってたイグニスもちょっと楽しそうにニヤニヤしてるし!


「わかった、やればいいんでしょ!ほらさっさと食べるよなまえさん!」

「わーい!」


もうなるようになれ、というヤケになってなまえさんのカレー皿とスプーンを手に隣に座る。
もうちゃちゃっと済ませなきゃ…とりあえずたくさん野菜をすくって…


「はい」

「…あーんって言ってくれなきゃ」

「………あーん」


不満そうに文句を言いながらジト目で見てくるなまえさんに、渋々、お世辞にも恋人っぽいとは言えないやらされてる感たっぷりの表情でスプーンを口元へ差し出すと、桃色の唇がぱくりとスプーンを咥えてたっぷりの野菜を食べていった。
ニコニコと嬉しそうに食べるなまえさんの表情はあんまり苦しげではなくて、よっぽと自分から食べるのは嫌なんだなぁって思ってたら。


「んーっ、カレー美味しい〜!」

「…え。美味しいの?野菜こんなに…」

「この入ってる野菜、全部食べれるやつなんだよね」

「えぇぇ?!」


してやったり顔のなまえさんの隣で固まるオレ。まんまと騙されたわけだ…
早く次食べたいとせがむなまえさんをよそに、結局振り回される自分に落ち込んだオレだった。とほほ…





to be continued...



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