傷痕

 久しぶりに会った君は少し痩せていた。抱きしめたらすぐわかる。腰回りが特に細くなって、なんだかちっちゃくなったね。
「◯◯痩せた?」
「あー、そうかも」
 歯切れが悪い。僕は久しぶりに二人っきりで会えたのが嬉しかったし、完全にそのつもりだったんだけど、あれ、今日はお預けなのかなって一瞬思う。
「ちゅーしていい?」
「して」
 両頬を手で挟むとやっぱり痩せてる。手のひらに吸い付くようなほっぺだったのに。きらきらひかる目がより大きく見えて、僕んちの犬みたいな、小動物を抱えているような気持ちになった。そっとその唇に唇を重ねる。キスを拒まれている様子はなく、少し緊張していたけど、君が僕の唇を挟んで、だから僕も優しく挟んで、舌を触れ合わせた。上顎をなぞると君はぴくっと背中をくねらせたので手を延ばす。服の上からブラジャーのホックを外す。そのまま触れながら浮いたブラジャーの隙間から、胸を探し当てる。左手は少し細くなったウエストをなぞって、お尻をもんだ。
「していい?」
「……うん」
「どうしたの? なんか怖い?」
 いやだったらしない、それが僕らのルールだ。君は僕の胸に顔をうずめて、それから胸の中にくるまるように身を寄せた。
「……あの、今日は電気消して、服着たまましたい」
「いいよ?」
「あと、あんまり奥はしないで欲しい」
「わかった。てかやめとく?」
「やだ、それはやだ」
「わがままだなぁ」
「いいじゃん……頑張ったんだから、褒めてよ」
「うん」
 腰を抱きながら寝室へ行く。お望み通り電気は点けないけど、廊下から光は漏れてるからなんとなく見える。僕は脱いでするのが好きだから全部脱ぐ。君はそっとショーツを脱いだ。スカートも履いたままだ。
「しわになるよ?」
「いい」
「……ね、どうしたの。今日おかしいよ」
「……」
「教えてよ、じゃないと、なんか僕、レイプしてるみたいでこわい」
「あー……全然そんなのじゃないんだけど」
「うん」
「あの……うーん。こないだ手術してさ、そゆこと」
「? どっか悪いの?」
「だからそれを治したんだけど、だから、その……傷が……傷痕。結構ドカーンってある」
「ドカーンって、いやそんなの全然気にしないけど。僕もほら、足あるし」
「お腹に傷があるの」
「へー」
「……」
「良かったら見せてよ、僕全然大丈夫だから」
 僕はあえて「全然伝わらないバカな男」のふりをした。君の話しぶりから察したんだ。これは、多分、相当に「ドカーン」としたことなんだろう。
「引かない?」
「引かない」
「絶対?」
「絶対。引いたら……そうだな、ちんこ噛んでいいよ」
「なにそれフェラする前提じゃん……萎えたら噛み切ってやる」
 笑った君のガードがゆるんだのを察して、スカートの中に顔を入れる。あったかい人間のにおいがする。太ももにキスして、手を伸ばしてお尻を触る。少しずつ上に登っても、君は僕を払いのけることはなかった。あそこを一旦通り越して、その上に行く。皮膚に口づけると、わずかだけど凸凹が分かった。ここか。
「……痛くない?」
「痛くないよ」
「スカート、脱いで」
「……ん」
 ジッパーを下ろして、僕は頭を抜いてスカートを引っ張る。するすると抜けたそこには、まぁ、確かに、傷があった。思っていたよりもちょっと大きかった。
「これ」
「痛そう」
「もう痛くないよ。ちゃんとくっついてるし」
「そりゃ離れたら大変だよ」
 僕は傷口にもう一度キスした。それはもともとは決して華奢じゃなかった君(ちなみにこれを言うとボコボコに蹴られる)を、華奢にしてしまうくらいだったから。
「おっきいよね、びっくりするよね」
「別に……」
「これのせいでさ、結婚できなかったらどうしようとか……思うよ」
「え? そんな理由で結婚しない奴とわざわざ結婚する必要なんてある?」
「……」
君は黙ってしまった。あれ、僕なんか、変なこと言ったかな。傷口にそって舌先を這わせる。ポコポコしてて舐めがいがある。
「こそばゆい」
「……かわいい」
「え?」
「かわいいよ、きれいだ」
「……」
「売れ残ったらもらってあげるよ」
「やだよ……なんで、今、急にそんなこと言うの」
「……」
「だから嫌だったのに……勇利くんに見せるの……」
「ごめん」
「謝らないでよバカ……っぅ……」
 君の手は僕の髪を撫でた。お腹に力が入って、細く息をしているのが伝わってくる。唇に伝わるその傷はおそらく丁寧に縫われたんだろう、僕の足の傷なんて乱暴もいいとこで、まだ縫い跡がちょっと見える。
「すぐ目立たなくなるよ」
「うん」
「後で僕のも見る?」
「うん」
 枕元のティッシュで目鼻を拭いた君は、深呼吸をしてもう一度僕の頭を撫でた。
「勇利くん、変なとこで優しいからやだな」
「えっ、そう?」
「結婚するつもりなんてないくせに」
「そうだけどさ。ていうか大丈夫でしょ、ふつうに。手術ぐらいみんなするって。しょうがないって」
「そっかなぁ……」
「どこでしたの?」
「○○病院」
「あーー」
「……何よ」
「僕も足そこでしたんだけどさ、そん時の看護師さんとヤった事ある」
「はぁ!? 今その話する?? てか何歳それ?」
「違うよ、その後何年かたって、たまたまヤった相手がそうだったって話」
「焦った〜、子供の時かと思った」
「うん……だから、ヤろ?」
「っふふ」
「ね? 全然僕、こんなのじゃ萎えたりしないよ。ほら」
 よいしょ、と君の頬の横に手を置いて、僕はあそこの外側にペニスをくっつけた。
「ちょっと出そうだもん、もう」
「……奥痛いかもだから。ゆっくりしてもらってもいい?」
「うん。ゆっくり、気持ちよくしてあげる……ヤリチンの名誉にかけて」
「やだなぁもう」
 唇を軽く触れ合わせるキスをした。ちゅ、ちゅ、とすると君の口角が上がったのが分かった。どうせだから、と君は服を脱ぐ。吸いつく肌は温かくてすべすべしている。ちょっと小さくなった胸の間に顔を寄せて、わき腹を掌でふわっと撫でた。
「緊張してる?」
「大丈夫」
「震えてるよ」
「……寒いだけ」
「ん……」
「っは、ぁ」
 柔らかい肉の上からクリのまわりをゆっくり揉む。君は僕の腕に頬を寄せた。
「濡れにくいと思うから、それ、とって。ぬるぬるするやつ」
「どれ?」
「それ、そこの、ゴムの上」
「ああ」
 ドレッシングみたいな個包装のパックの中にローションが入っている。袋の上から掌で温めて、開けたそれをそこに垂らした。
「あ、いいにおいする」
「なんか優しいやつだって。天然系」
「おいしそう」
「あっちょっと」
「舐めたら悪いやつ?」
「大丈夫だけど、あっ、まっ、ああっ」
「……甘い」
「っううっ」
 全部舐め取ってしまったら意味がないけど、穴の周りにローションを塗って、その上のぽつんとしたクリにキスした。小っちゃくてまだ隠れているそこ。早く出ておいで、気持ちよくなろうよ、一緒に。ちゅうと吸い上げると少しずつ大きくなって、皮の間から顔を出した。舌先で舐める。
「あ、ん」
「久しぶり?」
「ぜんぜん、一人でしてない、から、やばいっ」
「へぇ」
「あ、それ、んんっ」
「……」
 ぢゅ、ぢゅ、ぢゅるっと音を立てる。空気に震わされて揺れる。君は枕を握りしめて気持ちいいのに耐えてるみたいだった。
「◯◯ダメだよ、手、噛んじゃ」
「だって」
「もっと大きい声出していいよ、ね、僕しか聞いてない」
「ん」
「かわいい、大丈夫だから」
「あ、ぁ、あぁっ」
「そ……上手」
 クリを吸い上げたまま、ゆっくり指を入れる。ローションの分と、濡れてきた分と、両方で、すんなり指が入った。
「痛くない?」
「だいじょ、ぶ」
「痛くなったら言って」
 歯医者さんかよ、と心の中で思いながら少しずつ指を進める。ほんのちょっと、第2関節まで入れたところで、きもちいい所を押した。
「あっ、あ、はぁっ」
「ここは?」
「いい、いいっ、っううっ……」
「もう少し奥、いい?」
「うん、いれて……」
 ぬる……。奥まで入れる、正直、何がどう変わったのかはよくわからない。一番奥はやめて、って言ってたから、なんとなく手前までにしとく。
「もうやだ、入れて、早く入れて」
「っでも」
「今ならだいじょぶ、なきがする」
「ん……わかった」
 コンドームを探すとその手を君が止めた。
「ナマ……ナマでいいよ」
「え」
「ナマでして」
「……いいの?」
「うん」
 その瞬間、ずくっと重くなって、ガチガチになったのがわかった。溢れ出る先走りを引き伸ばしながら、熱いそこに当てる。
「っあ……◯◯……」
「あ、ぁ」
「ちから、抜いてっ」
「ッ、ふ……ぅ」
「ぁ……そ、そうそう」
 大きくて申し訳ないなんて思うのは初めてだ。抜き差ししながらゆっくり進める。処女にだってこんなに気を遣わないのに。ちんこは3/4くらいまで入ったけど、この辺でやめておこう。
「大丈夫? 痛くない?」
「大丈夫……はぁ……」
「なんか、初めてエッチしてるみたいだ」
「ほんと……今まで何回したんだっけ?」
「ねー……」
 ゆっくり抜く。そして、ゆっくり途中まで入れる。君は腕で顔を隠していた。
「顔見せて」
「だって」
「痛いかどうか、わかんない。僕の腕持ってて」
「うん」
「動くね」
「ん……は、ぁふ、ぁ」
「はぁ……」
 途中まで、途中までと歯を食いしばりながら腰を動かす。ゆっくり感じる粘膜はうねりとか熱さをじっくり伝えてきて、とても優しいんだけど今までしたことがないセックスみたいで気持ちがいい。
「どう?」
「あっ、ゆうりくんの、かたち、わかるぅっ」
「……」
「ひぁ、あぁ、あっあっ」
「……っ」
「ナマ、すごいっ」
「いいね、すごい」
 掴んでいた手が僕を探すように上がり、頬を預ける。
「ゆうりくん、気持ち、いい?」
「っいい、ちょ、やば、ぁ」
 ぬぽぬぽしてるとあったかいのに包まれて、一つ一つの細胞が丁寧に吸い込まれていくみたいな感じになる。奥からじわーっと痺れる快感が、溜まってきた。
「あ、ぁ、よかったぁ……」
「っそんなこと言わないで、あ……くそ」
「だって、あぁっ、気持ち良くな、って欲し、からっ」
「あーもう、優しく、するって決めたのにっ」
「ちょっと、あ、少し中、入れていいよっ」
「あーーーもうーー」
「あぅ、あっあっ」
「……痛かったら、本当に、言ってよ?」
「うん、うんっ」
 恐る恐るもう少し奥まで入れてみた。
「あぁ……はぁ、ぁん」
「どう? 痛い?」
「大丈夫……痛くない……待って、そこでじっとしてて」
「っむり、ここで我慢するの、やばい」
「……突いてもいいよ?」
「……やだ、絶対しない」
「なんで」
「痛いこと、しない、絶対っ……ぅ」
「ん……」
「キスしよ」
「うん……」
 君の舌を捕まえる。中がおとなしく感じあっている分、舌は激しく絡ませあった。君は僕の唾液を吸い上げようと強く攻め立てるし、息つく暇もないからぼんやりしてくる。じくじくと熱が伝わる下半身は、もうちょっと動くだけで暴発しちゃいそうだ。
「勇利くん、ちょっと動かしてよ」
「いいの?」
「いい、もう少し……ぁ、そこ」
「痛い?」
「痛くな、あぁ……ん」
「……」
「ゆっくり、あ、わかる、あぁぁ」
「ふ……」
 両ひじをついて君の体に体重を預け、腰だけをゆっくり動かした。待って待って、これ、気持ちいい。
「僕もわかる、こんな、きゅうきゅうしてるの」
「あぁぁ」
「ねぇ、いつもこんな、きゅうきゅうして、たの?」
「ぁあ、はぁ、あぅっ」
「やばい、あぁ、気持ちよかぁ」
「やだ、やだっ、そんな、言わな」
「なんで……このおまんこ、すっげ……気持ちいい、いい、あぁっ」
「ぁぁぁっ」
「クリもさ、敏感じゃん……おっきくなってる……エロっ」
「耳、あぁぁ」
 耳たぶを舐める。穴をじゅぽじゅぽする。
「みみ、セックス、してるみたい」
「ふぅっ、あ、あぁあぁ」
「わかる……? 腰、動いてるよ……すげ、あ……目、こんなとろとろにしちゃって……」
「ぁあ、ひ、ふぁ」
「すご、かわいい、◯◯、かわいか、ずるい……ずるい、なんで」
「そんな、あっ、ダメ、ぁあ、っあ」
「……ぁー、ダメ、出そう、っぁー……」
「ひぁ、あ、ぁ」
「なんで、おかしい、あ、やっば、ぁ」
 奥までガンガン突き上げるセックスばっかりしてきたのに。ちんこの先っぽがバカみたいに気持ちよくなって、あーもうダメ。嘘でしょ? カクカク動く腰の奥から栓が外れたように気持ちいい流れがドワって上がってくる。
「むり、ぁ、ごめ、いく、出るっ……」
「ぁ、いい、気持ちよくなってぇ……っ」
「っつ……! ぅぁ……! ……!」
 がくん、がくがく、腰が、溶け、る。
「ぁあ〜〜……っ……」
 唇を噛んで射精の快感に耐える。お腹の奥から上がってくる射精感がやばい。唇を噛んどかないと涎を垂らしてしまいそうだ。
「んんっ……ぁ……」
「ぁ……ごめ、ん、先、イっちゃった……」
「ううん……ぁ、ヒクヒクしてる……」
「っ締めないで、って」
「……ふー……」
 ちょっと情けなくて顔が見れない。首筋に埋めていると、君の首の拍動をどくどく感じた。汗をかいて二人とも肌がしっとりして、首筋がしょっぱい。
「……ごめん、イってないでしょ……イかせたげようか?」
「ん……もうちょっとこのまま」
「うん」
「ねぇ、気持ちよかった?」
「先にイっちゃうくらい」
「変な感じは?」
「全然ないよ」
「そっかぁ……よかった」
 イってもないのに君はとても嬉しそうな声を出した。ちんこは少しずつしぼんで、精液がたらりとこぼれた。拭くものを探して後ろを向くと、背中からお尻まで指先でつつつとなぞられた。
「やめて、くすぐったい」
「ふふ」
「あー、汗かいた」
「気持ち良さそうだった」
「よかったよ。あんなにされたら、無理。誰でも先に出ちゃう」
「ナマだしね」
「それもやばい」
「そう」
 君はでっろでろになったそこを拭いたあと上機嫌にベッドから起き上がり、下に落ちた服を拾い立ち上がった。ドアを開けると明るくて、全裸の全身が照らされる。首筋。胸。お腹。お尻。足。
「勇利くん、一緒お風呂入ろ?」


END