2-8



僕は何をしてしまったんだろう。
道場裏まで来て思った。

近藤さんが笑顔であの子の頭を撫でて。
あの子も嬉しそうに笑っていて。
その上素振りしか見せてないくせに、あんなに近藤さんに誉められて。

それが悲しくて見たくなくて僕は……

「惣次郎」

振り向くと近藤さんがいた。
ゆっくりと僕の方に近づいてくる。

「何であんなことをしたんだい?」

いつもより低い声に、先程の行為への後悔が沸き上がる。
溢れ出た涙は止まらない。

「…近藤さんをとられると……思ったんです」

僕は正直に話した。

「真尋くんが来て…近藤さんと話す時間が減った気がして……」

怪我をしている、という彼を近藤さんはとても気に掛けていた。

「前も道場前で…真尋くんの素振りを見ていて…」

たまたま見かけた2人の姿。
片腕だけでただ真剣に竹刀を振るう彼とそれを見つめる近藤さん。
自分がそんな事をしてもらったのは、一体どれぐらい前だろうか。

「僕は…僕は!寂しかったのかもしれない…っ」

話している内に、涙で声が擦れた。
泣きじゃくる僕を近藤さんは、そっと抱き寄せてくれた。

「そうか…それは悪い事をしたな……すまなかった」

怒るわけでも、諭すわけでもなく。
決して近藤さんは悪くないのに。
それでも僕の身勝手な理由に、本当にすまないと謝ってくれる。
僕は無我夢中で言った。

「近藤さんは悪くないんですっ!僕が勝手に思って、勝手に拗ねてただけなんです!」

こんな自分を追いかけ、抱き締め、理不尽な主張に謝ってくれる。
そんな彼をどうして取られたなんて思ったのだろうか。

「ごめん…なさい。ごめんなさい、近藤さんっ!大嫌いなんて嘘です!!」

僕はひたすら泣いた。
そんな僕を近藤さんは、泣き止むまでずっと抱き締めてくれていた。

- 11/45-

*前 | 次#

戻る/しおり
ALICE+