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「よぉ、どうだった?初稽古は」
「あ、土方さん!」

昼過ぎになって稽古が終わり、井戸で体を拭いていると久しぶりに土方さんが現れた。
どうやら私の様子を見に来てくれたらしい。

「とっても楽しいです。まだ基礎しか教えて貰えなかったけど」
「そりゃ当たり前だ」

今日は沖田くんたちと同じ稽古はせずに、ひたすら横で基本の形を振っていた。
恐ろしく単調なものだったが、自分の知らない型を学ぶのは思ってた以上に楽しかった。

「なんだぁお前は顔に似合わず剣術馬鹿かぁ?」
「…どういう意味ですか、それ」

からかうような土方さんの口調に、私は少しむくれた。
すると縁側から私達を呼ぶ声がした。

「おーいトシ!真尋!こっちで一緒にお茶せんか?」

近藤さんだった。
縁側にはお茶を飲む近藤さんと沖田くんの姿があった。
近藤さんの前ではいつも笑顔な沖田くんが心なしか不機嫌な顔をしている。
…まぁ大好きな近藤さんが大嫌いな自分を誘ったのだ。
面白くはないだろう。

「おぉ近藤さん。悪いな」

そう笑いながら土方さんは縁側に歩み寄る。
私も一応それに続いた。


〜・〜・〜


「今日はどうだった、真尋」

近藤さんは優しい笑顔で私に問い掛ける。

「とても楽しかったです」

私はありのままに答えた。

「そうかそうか!それは良かった!」

近藤さんは満足気に頷く。

「で、近藤さん。こいつの腕前はどうなんだ?」
「ん、そうだなぁ。まだ素振りしか見ていないが、基本は出来上がっている。剣筋も中々良かったし…どうだ、明日にでも一回惣次郎らと手合わせでもしてみるか?」

その言葉に私と沖田くんは驚く。
開かれた沖田くんの目は、悲しい色をしている様に見えた。

「どうだ?惣次郎?」

近藤さんの声に沖田くんは珍しく素っ気なく応える。

「別にいいですよ。僕も少し気になってましたし」
「なら決まりだな!」
「じゃあ俺も見に来るかな」

何やら簡単に決まってしまった、沖田くんや他の門人達との手合わせ。
突然のことに私は少し戸惑ってしまう。
そんな私を近藤さんは優しく撫でてくれた。

「なぁに、心配する事ないよ。前も言っただろう?きっと惣次郎とも良い勝負をするって」
「近藤さんにそこまで言わせるんだ、惣次郎以外には負けれねぇな?」

その言葉に何故だか恥ずかしくなって、私は小さく礼を言った。
そして沖田くんの方を向き、頭を下げる。

「明日の手合わせ、よろしくお願いします!」

沖田くんは俯いたまま無言だった。
心なしか震えているようにも見える。

「おい惣次郎?どうしたんだ?」

近藤さんが心配そうに声をかける。
その声に沖田くんは顔を上げるが…その双眸には涙が溜まっていて。

「……いだ」
「え?」
「近藤さんもキミも大嫌いだ!」

そう告げた彼は私を突飛ばし、走ってどこかに行ってしまう。

「何をするんだ惣次郎!」

近藤さんが怒鳴りながら沖田くんを追い掛けるのが見えた。
全くの不意打ちで受身の取れていない私は、咄嗟に体を捻り地面とぶつかった。

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