8−4



翌日の朝餉に真尋の姿は無かった。

「なぁ真尋の奴まだ寝てんじゃねぇの〜?」
「いや僕が部屋見た時は居なかったけど」
「腹でも壊してんじゃねぇか?」
「新八じゃあるめぇし、それはないんじゃないか?」

昨日夜遅く一緒に話したことを考えると、寝坊かとも思ったが、総司の話だともう起きてるみたいだ。
ちらりと土方さんを見ると、何か考え込むように眉間に皺を寄せている。
…俺や新八、平助は分からねぇが土方さんが真尋や総司……特に真尋だが、二人の浪士組への参加を快く思ってないことは気付いていた。

その理由も。

昨日はっきりとは言わなかったが、真尋もそれを知ったんだろう。
だからあんな思い詰めた顔でずっと悩んでいた。
甘いと分かってはいても、思わず声を掛けてしまったぐらいに。

「あぁ皆もう居たのかい」
「源さん!!」

朝稽古をしていたらしい源さんが席につく。

「なぁなぁ源さん、真尋知らねぇ?」
「何だ、まだ戻ってないのかい?真尋なら朝早くに『朝飯ぐらいには戻る』と言って出かけたが…」

……まぁあいつのことだ。
何か考えあっての行動だろうが……。
別れ際の顔は、何か吹っ切れたように清々しくて、ちゃんと腹を決めた笑顔だった。
あいつの性格上、今日には何か行動を起こすだろうと思う。
でもそれは土方さんも同じことで、先に土方さんが真尋残留を周りに納得させたらそれを覆すのは難しくなる。
俺が土方さんだったら、今の状況を逃さねぇ。

「ちょうどいい…。お前らに話しておきたいことがある」

そうそうこんな風に……

「昨日近藤さんと話したんだが…真尋は置いていくことにした」

先手を……って。
思いっっっきり打たれちまったぞ、真尋!

「はぁ!?何でだよ!」
「僕そんな話初めて聞いたんですけど」

あちゃ〜、と頭を抱える俺。
山南さんや源さん、それに珍しく新八も静観の構えをとっている。
総司と平助は抗議の声をあげるが――

「理由…本当に、分からねぇのか?」

土方さんの言葉に、強く返せない。
こいつらにもこいつらなりに感じていたものがあるのだろう、二人とも黙ってしまう。

「こいつは真尋が来たら話すからな」

こうなった以上、もう真尋を助けてはやれないだろう。
あとは、真尋。
お前次第だよ。

そう俺が天井を仰ぐと、突然戸が開き、凛とした声が響いた。

「その話、待ってもらえますか」

朝霧のせいだろうか、少しばかりの濡れ髪で、昨夜と全く変わらない……いや、それ以上に綺麗な瞳をした真尋だった。

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