8−9
「どうして切っちゃったの」
シャキンシャキン、と小気味いい音を出しながら総司は私の髪を整えてくれている。
「それは内緒〜」
鎖骨にかかるくらいの長さとなった髪は、総司の「それぐらいならお揃いに出来るね!」の一言でそうなる事が決定していた。
元服した時から密かに羨ましかった髪型は素直に嬉しい。
でも、似合う似合わないを考えてみると、どうしても後者だと思われるのでちょっと怖い。
「前から思ってたけど、真尋の髪って柔らかいよね」
切りながら時折総司は私の髪に指を通す。
「そうかな〜。総司も柔らかいじゃん」
「僕はどちらかというと猫っ毛だからね。でもそうじゃなくて…もっと根本的な所が違う」
「根本的?」
「何ていうか…毛も細いし、絹糸みたいに柔らかい。うん…女の人みたいに」
びくっ、と肩が跳ね上がるのを耐えたことを褒めて欲しい。
お前、まさかあの話聞いてたのか?と思ってしまう話題をさらりと出された私は、冷や汗をかきながら総司を見る。
「ん?どうしたの?」
そう不思議そうに首を傾げる総司は、本当に純粋に疑問を抱いているようで、先程の言葉は心からの感想らしい。
私は言い訳しようと多少どもりながら言葉を繋ぐ。
「いや…まぁ……総司は女の人の髪を知ってるんだなぁって」
………もっとましな言い訳は無かったんだろうか。
いや確かにそれは気になったのだけれど、もっと話題を変えれば良かったのに!!
そう私が心の中で焦っていると、総司は意味深に沈黙を作り、私の髪を結い始める。
「あの〜総司?」
「…………」
「…総ちゃん?」
口を開かない総司に、考えられる可能性をありったけ脳内で考え、声をかける。
その口調に、興味の色を宿して。
そんな私に総司は感情が読めない笑顔を見せ、
「内緒だよ」
と言う。
「うっわー気になる!気になーるー!!」
そう私が騒げば「うるさい」と頭をはたかれ、鏡を渡された。
「できたよ」
「…うわぉ」
鏡に映る自分の新しい髪型は、予想に反して意外としっくりきていた。
近藤さんとお揃い!というよりは、どちらかというと総司とお揃い!という方が馴染むが。
「ありがとう、総司」
「いえいえ。真尋は髪が綺麗だから、触ってて楽しいよ」
その言葉にもう一度ありがとう、と言うと、総司は先程までの笑みを消して私の顔を覗き込む。
そうして発せられた言葉は、何故か深い安堵が乗せられていた。
「参加出来るようになって、本当に良かった…」
「うん……ありがとう」
本気で心配を掛けてしまっていたらしい。
こんな総司の顔を見るのは久しぶりだ。
「ほんと、どうしようかと思ったよ」
「う…ごめんだって」
ばつ悪く私が目を逸らせば、総司は小指を私の目の前に突き出す。
その意図が分かった私は、自身の小指を絡ませた。
「これでやっと何か出来る」
「うん…やっとだね」
こつん、と額を付け合わせ、私達は微笑む。
「「近藤さんの役に立つ」」
そうして私達は指をきった。
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