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「ふー…ここはこんなもんかなぁ」
それから数日。
今日も真尋は朝早くから掃除をしていた。
特に道場は他の門人たちが来るより早く掃除する必要がある。
沖田と井上以外の門人達にはまだ正式に紹介されていないからだ。
しかしそれも明日明後日のうちには、明かされるだろう。
左腕の傷は跡は残るものの、ほぼ完治だ。
(ちょっとぐらいなら…大丈夫かな?)
周りを見回すと、道場内には自分ただ一人。
ちょっとだけならバレないだろうと…竹刀に手を伸ばす。
が、竹刀に手が触れようとした時。
「何やってるの?」
「っ!!」
いつの間にか沖田惣次郎がいた。
「えーと…掃除も終わったので…少しだけなら良いかな……と」
冷や汗がふき出るのを感じながら、沖田に言う。
(ただでさえ緊張するのに…最悪だよ……)
身体を小さくする真尋に沖田は、ただ冷たい視線を注ぐ。
正直、沖田には嫌われている自信があった。
自分がここに来て二週間ちょっと。
初めて会ったときから変わらない冷たい瞳。
交わす言葉も少なく、その鋭利な態度にどうしても気後れしてしまう。
「…道場に出る日は決まったの?」
「まだですけど…でも腕も完治したし、近い内には出れると思います」
目を泳がせながら答える。
「じゃあそれまで我慢したら?僕今から稽古するから邪魔だし」
そうこちらを一度も見ずに告げる彼。
いつもよりもキツい物言いに、気も重たくなる。
「すみませんでした…」
深く頭を下げ、沖田を見る。
「!!!」
目に入った沖田の横顔は……赤紫の痣が張りついていた。
「沖田くんそれ…」
どうしたの?と驚きながら聞く。
そんな真尋に沖田は何か思い出したように目を見開くと、隠すように後ろを向き言う。
「なんでもないから。早く行きなよ」
「でも…」
「行きなよ、って言ってるのが分からない?」
先程よりも強い拒絶に真尋は何も言えなくなる。
何か言おうとして口を開きかけるが、結局は何も言わずに立ち去ることを決めた。
〜・〜・〜
「本当に嫌われてるよなぁ」
先程の沖田くんの言葉は、思いの外私の心に突き刺さった。
嫌われるような心当たりは無いが、無意識の内に何かしてしまったのかもしれない。
それでも、一応心配で声をかけたのに、あんな言い方しなくても良いじゃないか。
そう思わずむくれてしまう。
「出来たら仲良くしたかったけど…」
無理だよね。
こんなに嫌われてるんだもん。
態度も言葉も冷たすぎる。
近藤さんと話している時は、それはそれは眩しいくらいの笑顔なのに。
そう思うと、何だか悲しくなってきて、私は空を見上げた。
そこには、分厚い雲が広がっていた。
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