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その日の夕方。
真尋が道場近くを通ると、中の方から数人の声がした。
何かを打ち付ける音もする。
「何だろう……?」
誰かが稽古をしているだけかもしれない。
でも――何か嫌な予感がした。
真尋は物音がする方向へと足を向けた。
〜・〜・〜
「…の野郎!調子乗りやがって!」
「ちょっと強いからって…よぉ!」
距離が近くになるにつれて、声がはっきりしてきた。
どうやら門人たちが騒ぎを起こしているらしい。
私は隠れながら恐る恐る覗いた。
そこに広がっていたのは、驚くべき光景。
四人の門人たちが木刀片手に一人の少年を囲んでいた。
その少年は…沖田惣次郎。
唯一木刀を持っていない彼は、ただ一方的に痛め付けられていた。
「酷い…!」
既に彼の体には無数の傷。
そこで私は今朝の彼の顔の痣を思い出す。
「これが原因……」
止めなければ。
私はすぐに身を乗り出そうとする。
でも、踏み留まった。
(私が出ていっても何が出来る…?)
そう、自分は彼と同じ子供。
木刀を持っている大人に勝てる訳がない。
それでも、このまま見過ごすことも出来るわけがない。
私は周りを見回した。
そして目に入ったのは、壁際に積み上げられた薪の山。
これしかない!!
私はすぐに真ん中の束を引き抜いた。
瞬間、私は物陰に身を隠す。
――予想以上の薪が、大きな音をたててぶちまけられた。
その音に驚いたのだろう。
「やべ!誰かいる!」
「早くずらかれ!!」
男たちは慌てたように道場から出ていった。
男たちの足音がしなくなったのを確認してから、私は物陰から出た。
「…こんなに倒れるとは」
地面に散乱した薪を見て溜息をつく。
これは直すのに骨が折れそうだ。
「でもまあその前に」
先程の様子では、彼の傷は酷いものだろう。
私は手拭いを冷やすために、母屋へと戻った。
〜・〜・〜
手拭いと包帯を持って再び道場を訪れると、そこには誰もいなかった。
「井戸にでも行ったのかな」
とりあえず辺りを探そうと道場を出る。
すると今度は裏の方から声が聞こえた。
今度は迷わず足を向けた。
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