見上げてごらん


パパ黒に家まで送ってもらった。バンビちゃん状態の私を姫抱きにしたパパ黒の全速力で家まで送ってもらった。めっさ早くて( ゚д゚)状態だった私は、家の前で降ろされてようやく意識が戻ってきたくらいだ。パパ黒とはそこで別れた。いや、まあ…水面走るくらいだからな…、うん。足がまだちょっとバンビちゃんだけどなんとか家に入って、すぐにお風呂に入った。精子塗れのキャミソールは洗面器で手洗いしてから洗濯機に入れた。あれを着る度にパパ黒のえちえちなお顔を思い出すとなるとたまらん興奮じゃ。お風呂を上がって夕飯を食べる。部屋に戻って思い出した。携帯!!!

「そりゃ充電切れてるよねええ!!」

充電器をさして電源を付ける。うっわ、悟と傑の着信とメールばっかりだ。あ、硝子からも1件メール来てる。何だろう。

『五条と夏油が理玖と連絡取れないってうざいんだけど、どうしたー?』

アイツら硝子にも連絡してたのか…。

『ごめーん、今日は野暮用で学校休んだだけだよ!』
『マジ?それだけで騒ぎすぎでしょ(笑)』
『いつもこんな感じだよー…(´Д`)ハァ』
『(_´Д`)ノ~~オツカレー』

さてと、どっちから電話するかな。反転具合からして悟かな?

「もしもし悟?」
『おせぇ!!!』
「ごめんごめん、ちょっと色々あって!」
『…何してたわけ。』
「ん?知り合いに会いに行ったの。」
『は?男?』
「男と女。夫婦だよ。」
『…んだよ、心配かけんなっつーの。』
「心配?」
『…日曜、高専行ったんだろ。』
「あ、うん、良く知ってるね?」
『呪術連上層部がごっそり入れ替わった。理玖がやったんだろ。』
「あぁ、そっか御三家には情報回るの早いか。ちょっと腐ったミカンが転がってたからね、お掃除しただけだよっ。」
『上から狙われねぇように気をつけろよ。』
「大丈夫だよ、一応脅してきたから。それにアイツらの呪力も術式も奪ったから、ただの老いぼれ集団だよ。」
『マジ?それも理玖の術式でやったわけ?』
「うん。なんかできた。神様仏様に感謝だね!あ、明日は普通に学校行くから!じゃあね!」
『あ、おい、』
「なに?」
『…俺が守るって約束覚えてる?』
「うん、覚えてるよ。」
『…上からなんかされたらすぐ言えよ。俺も腐ったミカン踏みつぶしてやるから。』
「ふふ、ありがとう、悟。大好き!じゃ、また明日ね?」
『俺も理玖のこと大好き。明日。』

「もしもし傑?」
『理玖、やっと連絡がついた…。心配したよ。』
「ごめんね?ちょっと野暮用で出掛けてた!」
『明日は学校は?』
「行くよ!それにしてもすごい数の電話とメールをありがとう…。」
『ああ、理玖がいなくて暇だったからね、悟と競ったんだ。』
「なんちゅうくだらない競い合い…。」
『失礼だな。』
「冗談だよ、心配かけてごめんね?」
『心配する身にもなってほしいね。』
「あ、それお母さんによく言われるわ。」
『だろうね。』
「じゃあまた明日ね?」
『ああ、また明日。理玖、大好きだよ。』
「私も傑大好き!じゃあね!」

電話を終えると布団に入って目を閉じた。すぐに眠りに落ちた私。次の日、三人で学校に行って、下駄箱を開ける。…またか。私の上履きの上に折り畳まれた紙切れ。広げて見れば、案の定呼び出しだ。けど今日はなんだかかわいらしい文字で書かれている。

「またかよ。」
「女子の字だね。」
「また僻みかなぁ。めんどくさいけど行ってねじ伏せるわ。」
「俺も行く。」
「私も。」
「好きにしてくれ〜。」

昼休み、呼び出し通りに体育館裏に向かった。勿論番犬がおがおも一緒だ。私に鬱陶しいほどくっついている2人。悟なんて3人ごと無限張ってるし。呼び出しの主は女だった。しかもあの女、

「萌部谷さんじゃん。なに、話って。」
「…どうして五条君と夏油君が、1人で来てって書いたじゃない!」
「俺達がいるとなんか都合悪いわけ?」
「そ、れは…、」
「どうせ理玖に対する嫌がらせだろう。」
「…っ、」
「反論できないってことはそうなんだろ?」
「私たちの理玖に手を出すことがどういうことか、分かっていないみたいだね。」
「こらこら2人とも、やめなさい。萌部谷さん、話くらいは聞くけど。」
「…これ、あげるわ。」

そういって萌部谷が差し出したのは人型の人形。毛糸の様なものでぐるぐる巻きにされたそれ。

「…うわ、マジ?」
「分かっててやってるのか、分からずやってるのか、どちらにせよタチが悪いね。」
「萌部谷さん、これどこで手に入れたの?」
「…貰った。」
「誰に?」
「知らないわよ。廻神さんに渡してって言われたの。早く受け取ってよ、気味悪いから。」

萌部谷の持っている人形には呪力が籠っていた。恐らく誰かが私を呪おうと、彼女に近付いたんだろう。やれやれ。セーラー服の中に仕込んでおいた十手を取りだした。悟が何やら騒いでいるけど今は無視。2人を引き剝がして、萌部谷の持つ人形を十手で突いた。呪力を吸収したおかげで禍々しい気配はなくなったけど、流石に素手で触れたくはない。頭に着いたストラップの紐部分を十手に通してくるくる回す。萌部谷は目を見開いて私を見ていた。

「…え、なにそれ、」
「ん?知らなくていいよ。それと知らない人から変なもの貰っちゃダメ。わかった?」
「…うん、」
「あ、あと最後に。」

萌部谷の肩に人型の形代がついているのが見えた。ぽん、と萌部谷の肩に手を置くフリをしてそれを剥がす。

「萌部谷さんってすっごく可愛いんだからさ、こんなクズ2人を好きになっちゃダメだよ?いい人見つかるから。」
「…か、可愛くなんか…、」
「え、大丈夫、可愛いから!自信持って!ね?」
「…もう、なによ!」

顔を真っ赤にした萌部谷。え、なんで萌部谷の好感度100%になってんの?

「廻神さんなんて嫌いよっ!」
「あ、うん、そっかー。」

捨て台詞を吐いて逃げて行った萌部谷を見ながら、くしゃりと形代を握り潰した。悟と傑が大きくため息を吐く。

「ため息吐きたいのはこっちなんですけど。」
「ったく、とんだ人誑しだよな。」
「私達よりも理玖の方がクズじゃないか。」
「えぇ!?何もしてないんですけど!」
「つーか何その呪具、いつの間に持ってたわけ?」
「あれ、てっきり悟は感付いてるかと思ってた。特級呪具、倶利伽羅不動明王の十手だよ。術式効果は触れたものの呪力を吸収して、一時的に無効化。いいでしょ?」
「どこでそんなものを…。」
「昨日、甚爾様のツテで手に入れたの。」
「は?あいつに会ったわけ?」
「あ、用事の後にたまたま…。」
「油断も隙もないね、全く。」

十手に引っ掛かっている人形を掴む。

「ブードゥー人形じゃん、なっつ。流行ったわぁ…。」
「は?」
「これ、願掛けに使われてたの。もともとは呪いの人形らしいけど。」
「ブードゥー教の?」
「そ。日本の藁人形と同じ使い方するの。にしても、誰が私を呪おうとしてるんだろうね?関係ない非術師まで巻き込んで。」

人形を掴む。悟がまじまじと人形を見ている。傑は顎に手を添えて何やら考えているらしい。

「それにしても、こんな雑魚人形で理玖が呪えると思ってる頭がめでたいよな。」
「神仏は理玖の味方だろう?」
「そうだよー。だから全く意味がないのよ。ウケるー。」
「そっちは?」

悟が私の手を指さした。さっき握りつぶした形代を広げる。

「これで萌部谷さんを監視してたってとこかな。」
「そうかもね。辿ってみる?」
「できんの?」
「わかんない。セレクト。」

【???があなたを監視しています。選択してください。選択すると呪力を20消費します。(残り呪力:120)】
【1.辿る 2.呼び寄せる 3.なにもしない】

「呼び寄せることもできるっぽい。やってみる?」
「いいね。」
「どんな面か拝んでやろうぜ。」
「じゃあ2番。」

【2.呼び寄せる を選択しました。呪力を20消費しました。(残り呪力:100)】

「理玖の術式ってなに、なんか選んでんの?」
「んー、ま、そんな感じ。」
「セレクト、というのが術式の発動条件かな?」
「別に口に出さなくても使えるけどね、最近はなるべく口に出してる。ブラフかませるし。」
「へー。」
「今まで術式については言えなかったはずだけど、」
「内容については言えないけど、今みたいに使うことはできるっぽい。私も最近知ったの。」

話していた私たちの真上に影が落ちた。ん?と3人で見上げると、影はどんどん近づいてきてそれが人だと悟った時、私たちはそれぞれ飛びのいた。ドシャリ、地面に打ち付けられたのは老いぼれたおじいちゃん。…誰?

「ぐぅっ…、」
「あ、生きてる。」
「な、何が…、」
「初めまして、おじいちゃん。」

私はにっこりと笑った。私の顔を見て顔色を変えたソイツは、突然私に土下座をした。

「廻神理玖様ぁ…っ!」
「そうですけど、あなたどちらさま?」
「どうか、うちの孫娘をお許しください…っ!」
「は?誰のこと?」
「まずは名乗ってほしいものだね。」
「し、失礼を…、私は豊橋心海の祖父、豊橋兼太郎と申します…!」
「豊橋心海…豊橋心海…、ああ、悟のストーカー!」
「あ?」
「誰だい?」
「知らね。」
「ほら、少し前に理玖ちゃん独占デートしたでしょ?そん時私を呪おうとした人。」
「…あー…、アイツか。」
「で、その人のおじいさんがどうして理玖をつけるようなことをしたのかな。」
「じ、実は、」

どうやら豊橋心海という女は、私の術式で天罰が下り、気が狂ってしまったらしい。それで私のことを探して、同じ学校の生徒に形代をつけて私のことを見ていたと。

「どうか、孫を…心海を許してやってください…っ、この通りでございます…。」
「どうする?」
「どうしようか?」
「2人は黙ってなさい。では、条件があります。」
「は、はい、」
「まず1つ、真っ当に生きること。そして2つ、私たちについて嗅ぎまわらないこと。そして3つ、あなたの神社で祀る神の名前を教えること。どう?」
「は、ははあ…っ!」
「ウケる、時代劇みたいじゃん。」

兼太郎は私に神の名前を告げた。パチン、と指を鳴らす。多分これで豊橋心海に下った天罰終わり。

「神職に使える身なら、邪の心は捨てなさい。心海さんにそう伝えてね。あと、悪いことしたらまた罰当たるから。」
「はい…っ!」
「神様は、見てるよ。」

私は空を指さしてにっこりと笑った。



← 70 →
back

top