田舎あるある言いたいな〜


「そうだ、これはあなたが?」
「いえ…、これは?」
「そ、違うならいいや。」

兼太郎はブードゥー人形と関りはないらしい。ぺこぺこと私に何度も頭を下げる兼太郎を見送って、改めて人形を見る。黒いブードゥー人形は呪いとか支配とか、そんな意味があった気がする。そして全く心当たりがない。人形と言えばを呪骸作る夜蛾さんってイメージもあるけど、夜蛾さんは可愛いを作ってるしなぁ…。

「手掛かりなしかぁ。」
「捨てれば?」
「拾った誰かが悪用しないとは言い切れないでしょ?」
「そりゃそうか。」
「高専関係者に調査を依頼するとか。」
「じゃあやっぱり夜蛾さんかな。」
「夜蛾ってこの前の?」
「そ。あの人呪骸作れるから、なんかわかるかも。」
「ふぅん。」

早速夜蛾さんに電話を掛けてみた。私の顔に2人が両側からぴったりと寄り添って団子3兄弟状態になる。なにこれ可愛すぎでしょ。

『夜蛾だ。』
「こんにちは、夜蛾さん。理玖です。」
『…理玖、この前上層部に何をした?』
「あ、その事も兼ねてお会いしたいんですけど!」
『兼ねて?何か用か。』
「ちょっと興味深いお人形さんを貰いましてね、見てほしいんですけど。」
『…いいだろう。いつでも来い。』
「あ、じゃあ今から行きます。」
『学校はどうした。』
「サボタージュしまーす!」
『学校が終わってから来い。』
「ちぇ。」

電話を終えると、傑が首を傾げた。前髪が揺れる。可愛い。

「上層部に何かしたのかい?」
「あー、ちょっとムカついたからちょちょいと呪力と術式取り上げた。」
「そんなことが可能なんだ、凄いね理玖は。」
「おかげで上層部総入れ替えだってよ。ただの老いぼれ達が座る席じゃねぇし。」
「それにより少しはマシな人が就いてたらいいけどね。」
「腐ったミカンには代わりねぇよ。」
「腐ったミカンねぇ。」
「世のため人のため、故きを温ねて新しきを知るのよ。…今ちょっと頭いいこと言った?」
「それいったら台無しだね。」
「あー言わなきゃよかった。」

学校が終わると悟が車を手配した。車で高専に向かい、応接室まで向かう。

「ノックしてもしもーし。」
「入れ。」
「失礼しまーす。」

中に入ると、夜蛾さんがソファに座っていた。私だけが来ると思っていたらしい夜蛾さんが、私に続いた悟と傑に目を見開いた。

「オマエたちも来たのか。」
「すみません、言っても聞かなくて。」
「いや、かまわん。」

ソファに座って鞄から人形を取り出し、目の前の机に置いた。夜蛾さんが人形を手に取ってまじまじと見つめる。

「…これは呪骸ではないな。」
「あ、やっぱり?」
「これをどこで手に入れた。」
「クラスメイトが私に渡すようにと、知らない誰かに頼まれたそうです。」
「理玖を呪いたいってやつがいるみたいなんだよねー。」
「理玖も大変だな。」
「ええ、まあ…。」
「この残穢から、理玖を呪った呪詛師を特定すればいいという事か。」
「あ、特定は自分でできるんですけど、その後の対処を聞いておこうと思って。」
「というと?」
「殺してもいいのか、はたまた生け捕りがいいのか。」
「簡単に殺すもんじゃない。」
「あ、私の殺すってのは、呪術界で死ぬことなので、本当に殺すわけじゃないですよ?」
「それはあの上層部みたいに、呪力も術式も剥奪するという事か?」
「はい、そりゃ勿論。呪力や術式に頼ってきた人からしたら、死んだも同然でしょう?」
「…それならまあ、いいだろう。」
「あ、いいんだ。」

夜蛾さんが人形を机に置いた。私はそれを鞄に戻す。悟が茶菓子に出された羊羹を食べ終えたらしい。私の羊羹に手が伸びたのを傑がぺちんと叩いた。なにやってんのこのカワイ子ちゃんたち。

「理玖、先日言っていた件だが、丁度1件引き受けてほしい任務がある。」
「あ、はい、いいですよ。」
「そう言ってくれると思っていた。これが任務の概要だ。」

ホッチキス止めされたプリントを受け取って目を通す。悟と傑も一緒にプリントを覗き込んだ。なになに?

「○○県××市△△村…、聞いたことないね。」
「未だに生贄とかやってる村あんの?」
「生贄の祭壇とかあるのかな?石仮面に血を吸わせてさ、族長(オサ)、族長(オサ)、みたいな。」
「何の話?」
「あ、うん、なんでもない。」

プリントに掛かれていた内容はこうだ。○○県××市△△村にある山にある祠に、15、6の生娘を生贄として捧げていた風習があったらしい。人身御供というやつで、その祠には大蛇神が祀られているとか。今はもう人を供物として捧げることはなくなったそうだけど、ここ数十年の間に何人もの年若い娘たちが大蛇の様なものに絞殺されているそうだ。

「なるほど、信仰心の低下と、大蛇神に対する人々の恐怖心から呪いに転じたって感じですかね。」
「恐らくな。行けるか。」
「勿論です!じゃ、さっそく行ってきます。」
「今から行くのか。」
「早い方がいいでしょう?」
「俺も行くー。」
「私も。」
「じゃあ3人で行きますね。報告書とかって出したがいいんですか?」
「可能なら出してくれ。箇条書きでも何でも構わん。」
「りょ。じゃ、いこっか。」

3人で高専を出て、悟の家の車で向かう。移動中にお母さんに電話をして、高専からの依頼で任務に行くこと、今日は遅くなることを伝えた。

「理玖のお母さんなんて?」
「まったく、この子は…、だって。」
「もはや口癖だね。」
「あとでお土産買って帰るわ。」
「そうしろ。」
「土産よりも早く帰ってあげた方がいいと思うけど。」
「それはほら、あちらさん次第。」

件の村に着いたのは日も落ちたころだった。さすがに山間にある村なだけあって、辺りはもう暗がりになっている。傑がランタン型の呪霊を出してあたりを照らしてくれた。プリントに載っていた地図を頼りに、祠を探す。

「生娘って処女ってことだろ?」
「そういうこと。私適任じゃない?ヤらなくてよかったぁ〜。」
「ちぇ。」
「ヤっておけばよかったよ。」
「そしたら出てこないかもしれないじゃん。」
「帳は降ろすかい?」
「その方があちらさんも出やすいと思うけど、この暗さじゃ一緒じゃない?」
「さっさと終わらせて帰ろうぜ。それかどっか泊まる?」
「こんな田舎じゃ民宿とかだろうね。」
「やってるかどうかも分からないよ。」
「あ?ラブホとかあんだろ。」
「その手があったね。」
「はいはい行きますよー。」

祠は山の奥にあった。プリントを傑に渡し、私は祠を開ける。中には小さな白蛇がいた。蛇は私を見るとチロチロと舌を出して頭を垂れた。

「なにこの子、可愛いっ!」
「虫はダメで蛇はいけんのかよ。」
「蛇は神様に仕えるからいい子なの。」
「その白蛇と今回の件、関係性がよく分からないね。その白蛇が人を襲ってるようには見えない。」
「そいつは今回の件とは別物ってことだろ。」
「そうみたい。言葉とかわかるかな?セレクトしてみるか。」

【白蛇がいます。選択してください。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:120)】
【1.声を聞く 2.案内させる 3.なにもしない】

「ラッキー、話せるっぽい。」
「マジ?」
「てことで1番。」
「私達にも聞こえるのかな。」
「どうだろう。」

【1.声を聞く を選択しました。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:120)】

<廻神理玖様、お待ちしておりました。>
「わあああ、しゃべったあああ!!!」
「傑、聞こえた?」
「いや、聞こえないね。」
<神に仕えるモノの声は、神の子である理玖様にしか聞こえません。>
「私しか聞こえないらしいよ。」
「さすが神の子、」
「なんでもありだな。」
「で、ちょっと聞きたいんだけど、ここ何十年と続いてる若い女性を狙った事件について、知ってることは教えてくれる?」
<ご案内します。>
「お、案内してくれるって。」

白蛇が祠からするりと抜け出した。私たちの前を白蛇がするすると這って行く。それに続くと辿り着いた崖。崖の下からは呪力の気配があった。

「この下やべぇな、何級だ?」
「1級相当かな。それに1体だけじゃないみたいだね。」
「もしかして、生贄ってここに突き落とされてた系?」
<左様でございます。>
「マジ?えっぐ。」
「じゃあ大蛇神の呪霊堕ちじゃなくて、ここで死んだ女たちの無念な気持ちってやつが寄り集まって呪霊になったってとこか。」
「女は怖いね。」
「ほんとそれな。」
「…なんで2人して私見るの?」

崖の下からずるりずるりと音がした。それは崖を這って登ってきているらしい。

「私が取り込もうか?」
「欲しいなら譲るけど、その前に供養だね。」
「一気に祓えばよくね?」
「祓うだけが全てじゃないってこと。」
<来ます。>

崖を這いあがってきたのは女の体に何本もの人の手が生えたムカデの様な呪霊だった。

「いやあああああキモいキモいキモいキモい!!!」
「取り込もうか?」
「傑はなんでそんな冷静なの?!」

鳥肌が立つ私をよそに、悟が私と傑の腕を掴んで無限を出した。私は白蛇ちゃんを掴んで抱き寄せる。ひぇえええ!!ムカデみたいなのが無限に巻き付いてて気持ち悪いいいい!!!セレクト!!

【???があなたを狙っています。選択してください。選択すると呪力を40消費します。(残り呪力:120)】
【1.祓う 2.供養する 3.なにもしない】

勿論供養します!!

【2.供養する を選択しました。呪力を40消費しました。(残り呪力:80)】

突如呪霊の動きが鈍った。けたたましく金切り声を上げたそれに耳を塞ぐ。

「傑、欲しいなら今のうち!!」
「じゃあ貰おうかな。」
「うるせぇから早くしろ!」

傑が手を翳して、黒くなったそれを飲み込んだ。悟が無限を解いて、溜息を吐く。白蛇が私の首にゆるく巻き付いた。



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