ぎゅっと抱きしめてよ


神社を出て車に戻ると、呪詛師は夜蛾さんに預けた。夜蛾さんが呪符を取りだして呪詛師の男の手足に巻き付ける。

「それは?」
「呪力を封じる呪符。貼るときに呪力を込めて貼ると、貼った者にしか剥がせなくなる特殊なものだ。」
「面白ーい。」
「コイツの身柄は高専が責任を持って預かろう。今回は被害者が元の人間に戻せたから良かったが、戻せなければもっと悲惨な事件となっていたはずだ。お前達、協力感謝する。今日は約束通り、俺が飯を奢ろう。」
「「「「やったー!」」」」

夜蛾さんが私達を見て微笑ましそうに笑う。好感度は80%か、上々。そういえば悟の反転3はどうなった?…こっちも86%、まずまずだな。夜蛾さんが吉祥寺のもつ鍋屋さんに連れて行ってくれた。5人で囲んだもつ鍋は最高においしかった。もつ柔らかくてうまいしスープも美味しいし、〆はラーメンで〆た。雑炊で〆るか迷ったけど、やっぱラーメンだよね。

「はー…美味しかった!夜蛾さん、ご馳走様でした!」
「おう。」
「ごっそーさん。」
「御馳走様でした。」
「ただ飯サイコー。」
「…お前達は本当に中学生か?」
「失礼な。」
「夜蛾さんって、私達が入学したら担任になったりしますか?」
「…恐らくな。」
「わあ、楽しみ!」
「毎日飯奢ってもらおうぜ。」
「それはいい。」
「高いのね。」
「お前達は俺を破産させるつもりか?」
「やだなぁ!夜蛾さんへの信頼の現れですよ!あ、夜蛾先生か!ね、皆!」
「「そうそう。」」「うん。」
「…まあ、 たまになら連れて行ってやろう。」
「やったー!夜蛾先生大好き!」
「…フン、」
「…理玖っていつもああなの?」
「「うん。」」
「アンタ達も大変ね。」
「「超大変。」」
「目離すとすぐ人誑すからな、」
「老若男女誰彼構わず。」
「この間は猫。」
「あと散歩中の飼い犬と飼い主。」
「ちょっとちょっと、人誑しなんて聞き捨てならないんですけど!?」

私がそう言うと、皆が笑う。これこれ、これだよ、私が見たかったのは。皆が楽しそうな姿を見たかったの。嬉しい、本当に嬉しい、そう思った途端ポロリと私の目から涙が零れ落ちた。あれ、なんで、

「理玖…?」
「あ、はは、何だろ、勝手に涙出てきた。ゴミでも入ったかな、」
「理玖、擦らないで、」
「ん、ハンカチ使う?」
「あはは、ありがとう。えへ、なんか、ふふ、幸せだなぁって思ったら、涙出て来ちゃって、変だなっ、止まらないっ、うっ、」

悟が私をきつく抱きしめた。それを皮切りに私は止め方の分からなくなった涙を流して、子供のように泣きじゃくった。悟が私を抱きしめながら、何度も名前を呼んでくれる。私は、皆の幸せな世界を、作れてるのかな、そう思ってまた涙が出た。結局は私のエゴ、我儘で、皆を振り回してないかな、そう心の奥底でいつからか思っていた本音。傑が悟の反対側から私に抱き着いた。硝子は私の横から。夜蛾さんがまたその反対側から。4人にぎゅうぎゅうと抱きしめられて、私は苦しいくらいに泣きながら謝った。誰に対しての謝罪かも自分ではわからない。きっと皆も分かっていないけど、何も言わずにただ抱きしめてくれた。私が落ち着くと、押しくらまんじゅう状態の皆は一人、また一人と離れた。最後に悟が私の名前を呼んで、キスをした。

「理玖がいたから、俺の人生楽しくなった。」
「…うん、」
「理玖のおかげで私も今が凄く楽しいよ。」
「うん、」
「理玖と会ってから、自分の力について考え方変わった。ありがと。」
「うん、」
「理玖、お前のおかげで沢山の命が救われた。もっと自信を持て。お前はすごい。」
「…うんっ、皆に会えてよかったぁ…、」
「今世の別れみたいなこと言うなよ。」
「皆大好きぃ…うぇえっ、」
「あーあ、また泣き出した。」
「理玖、悟、傑、硝子。お前達の入学を楽しみにしている。」

【夜蛾正道との親密度が100%になりました。選択してください。この選択には呪力を消費しません。また、この選択は親密度が100%の相手には何度でも選択できます。(残り呪力:67)】
【1.好きだと伝える 2.友達だと伝える 3.付き合いたいと伝える 4.なにもしない】

4番。

【4.なにもしない を選択しました。この選択には呪力を消費しません。(残り呪力:67)】

その後夜蛾さんが硝子を送り届け、私は悟と傑が送ってくれた。家に着いて私の部屋に置いたままだった学校用の荷物を2人に渡す。2人が帰る後姿を見送って、再び部屋に戻る。今日も疲れた…。ここ数日は色々とありすぎて寝不足だし。あくびを一つしたところで、着信を告げるメロディが流れて携帯を探す。開いてみると、悟からだった。

「もしもし?どうしたの?」
『…公園、来て。』
「え、何処の?」
『理玖の家の近くの、』
「…いいけど、どうしたの?」
『…忘れ物。』
「え、なに?私の部屋に何か忘れた?」
『いいから、すぐ来て。』
「え、分かった…。」

お母さんに、悟の忘れ物を公園まで届けてくる、と伝えて家を出た。外出禁止だけど、お母さんもはーいって普通に返事していたから、たぶんうっかりだろう。うっかりがバレる前に家を出た。公園に着くと悟がベンチに座っていた。

「お待たせ。」
「ん。」
「どうしたの?忘れ物って何?」
「…理玖。」

悟が私をきつく抱きしめる。私も悟を抱きしめ返した。悟が私の名前を呼ぶ。私も悟の名前を呼んだ。

「…前世の話、」
「え?」
「あれ、本当だろ?」
「…まあ、そうだけど。」
「それで、理玖は俺たちのいる世界について、何か知ってる。」

ドキリ、心臓が跳ねる。

「あの胡散臭い中二病が、物語がどうとか言ってたし、理玖の元居た世界にとって、この世界は漫画とかアニメの世界。理玖は知ってる限りの悪いシナリオを変えたくて、神の子としてこの世界を変えようとしてる。…違う?」

悟の低く落ち着いた声が耳に残る。心臓がバクバクと煩くなって、息が浅くなる。

「…ご、めん、言えない、」

震える声でそう言うと、悟がパッと離れた。

「なんてな、冗談。」
「え、」
「何、マジだった?」
「…い、いや、」
「俺らの今の世界が漫画やアニメなわけねぇじゃん。寝不足か?脳みそ働いてる?」

いつもみたいに人を小馬鹿にしたような顔で私を見て、ニッと笑った悟。ふぅ、と息を落ち着けると、私もいつも通り笑った。

「最近は私が人気者のおかげで寝不足だからね、疲れて脆くなってたみたい。悟のおかげで元気出た!ありがとう!」
「…ん、ならよかった。」

悟が笑う。私も笑う。悟の手が私の頬を撫でた。ゆっくりと近付いてきた悟の顔に、私はゆっくりと目を閉じる。唇が触れると、どちらからともなく舌を絡め合った。

【五条悟の反転していた好感度が100%になりました。これより高感度が変動することはありません。再び反転しないように注意しましょう。】





...





その日の夜、布団に入った私。

【第2章 ギラギラの中学生 をクリアしました。】

「え、」

【第3章 バチバチの高専生 をプレイしますか?】
【1.はい 2.いいえ】

え!?!?!?い、いよいよ高専生!?まじ!?!?!やった!!!!!これでやっとおせっせできる!!!げへへへへ!!!!!!!勿論1番一択だっ!!!

【1.はい を選択しました。】

視界が真っ白になった。またか、アニムスのロード画面。視界が晴れた瞬間、私は首を捻る。あれ、ロード画面終わったよね?なんでまだ白い空間?そう思っていると、ピコン、と音がした。

【破瓜の相手を選択してください。選択した相手をこの空間に呼び出します。】

マジ?


—ギラギラの中学生 終—



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