18

僕にはやらなければならないことがあるんだ、と意を決して喉から声を絞り出す。



「……っ゛、」

「す、」


すみません、というために開いた唇が目的を果たすことはなかった。


(……ぇ、?)


その情景を見て、初めに胸を突いた感情を捉えきれない。

彼の頬を、涙が伝っている。
顎から零れ落ちた雫が、下へと落ちていく。


「……っ゛、で、…」


少年は眉根を寄せながらまつげを僅かに伏せ、悲痛な叫びを小さく漏らしていた。
既に泣き声に近く、震えすぎている声音の意味は読み取れない。

何か見たくないものを目にしてしまったようにその場所を、
……その障子の隙間の向こうを目に映したまま、動揺したように片足を後退させた。

見てわかるほど身体を震わせながら、今にもその場に崩れ落ちそうな膝は言うことをきかないらしく既に役にたたないものとなっている。


(…なんだ、…?)


と、

澄ますまでもなく、部屋の中から聞こえる声と………音。


「――――――……」

「―――……」


描写するまでもなく、この障子の向こうで婚前の男女ならしてもおかしくない行為をしているのがわかった。

幾度となく打ち付けて濡れる肉感的な音と女性特有の淫らな嬌声。
愛を乞い、伝えることを要求されれば、昼間と同じように求めに応じて甘い声音が男の色気を隠さずに囁いている。

……それに、結構直接的というか性欲を煽るようなやりとりが聞こえて、……耳にするだけでも男として色々な事情を含めてたまったものではない。


(……なんつーか、これはやばいな)


普段の僕なら、多少の罪悪感を抱きながらも映像とは違う…生の行為にかなりキてしまっただろう。
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