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…本当に嬉しそうな表情をするからこっちまで変な気分になる。
「黒猫クンが嫌ならもうアイツと話さない」
「だ、だから違っ」
「嘘つき」
もうやだ。
否定すればするほど益々小鳥遊さんの顔がご機嫌に緩んでいく。
ぶっとばしたい。
「あれは暇潰し兼仕事の研究でしてただけだからやめても問題ないし」
「仕事?自宅警備員ですか」
「断じて違う」
…まぁなんとなく把握してるけど。
何度この人の汚い文字だらけの紙を整理したことか。
ていうか、実は編集さんらしいあの人、前困って泣きながら俺に相談してきたんだから、面白半分で実験台にするのやめてあげてほしい。
しかも、最初の日にキスしてたのだって、わざわざ俺が帰ってくるのわかっててやったって聞いたから、本気でタチが悪い。
「…でも、まさか妬いてくれるとは思わなかったからかなり嬉しい…」
「っ、別に俺は」
言葉に詰まる。
異常に顔が熱い。
「…あの人で遊ぶのやめたって、俺は代わりにそういうことしたりしませんよ」
亀甲縛りとか絶対しない。
「…俺は黒猫クンが傍にいてくれるだけでいいよ」
「…っ、」
心臓がドクンと跳ねる。
そんな口説き文句みたいなことをさらっと言って綺麗に微笑む小鳥遊さんにじわじわ頬がまた熱くなるのを止められない。
「…だから、橘くん」
不意に真剣になる声。
こういう時に限ってちゃんと苗字で呼ぶのは卑怯だ。
「俺の恋人になってくれませんか」
「…っ、」
動揺して更に真っ赤になった俺に、彼はまた嬉しそうに笑ったのだった。
【こうして黒猫クンと変人さんは。】
「…考えておきます」
「はは…っ、顔真っ赤」
「煩い」
「え、」
胸元を掴んで引き寄せて、返事代わりに唇を塞いでやった。
「小鳥遊さんも顔真っ赤ですよ」
「っ、」
珍しく照れたように顔を赤くする小鳥遊さんを揶揄うと機嫌を損ねたらしい。
(…まぁ、人生に一回くらい、こういうことがあってもいいか)
男同士とか、変態とか、この人を目の前にすると全部どうでもよくなった。
…結局、その後散々仕返しをされたのは言うまでもない。