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公式が全部吹っ飛んだ。
真っ白になった。
頭を抱えて悶絶する。

「ぅおおおお」と嘆きながら、ブルドーザみたいに回転していると


ガツ…ッ


「……っ、!?……〜〜っ」


机の隅に額が思いきりぶつかったので悶絶して泣きそうになってやめた。痛い。


「もうそろそろやめてくれ。十分頑張っただろ、アンタたち。十分頑張ったよ。だから、もう休んでも、…いいんだ…」


なんて優しく隣の部屋に声をかけてやるが、当然「もう、いいんだよね…」なんて声は返ってこない。

傍から見たら、おかしくなってしまったと思われるだろう。

壁に手を付けてずるずるとずるずると床にへたり込んだ。
コンコンとかるく壁にすがるようにたたく。

(一体、俺が何をしたっていうんだ…)

毎日喘ぎ声を聞かされ、毎日勉強の邪魔をされ…。

(もう、いやだ…)

こんなにこっちは嘆いているというのに、向こうはお楽しみの最中で。

そう思うと泣きそうになる。
うう…、誰かに慰めてほしい。

そうは思っても、誰も慰めてくれるはずもないので余計空しい。

彼女、つくろうかな…。

チラリとそんなことを考え、でもこんなことで作るのも面倒くさいからやめようと血迷った思考は一瞬で消えた。


「……」

『…はるぅ…っ、だいじょ、ぶ…、キツく、ない…?はぁ…んっ!』


ガツっ。

本能で思いきり額が壁に当たった。

くそ腹立つ。
額が痛い。泣きたい。

かたや一人で自分を慰めている202号室と。

かたや二人でいろんな意味で慰めあってる201号室。

どっちのほうが精神的にきついか、お分かりいただけるだろうか。

うううと目頭を押さえながら、ぽちりとテレビの電源ボタンを押す。

すごくムカついたので、丁度放送されていたらしい深夜アニメを隣に向ける。
近所迷惑にならなくて良い感じで聞こえるくらいの音量で流してやるというささやかな仕返しをした。萎えろ。禿げろ。


「藤堂君は私のモノよおおおおおおおお!!!」
「キイイイイイイ…!!」
「この豚!!」
「ゴリラ!!」


テレビをつけた瞬間、テレビから驚くくらい野太い声で雄たけびを上げている女子達の声が聞こえた。

一人の男を巡って醜い争いを繰り広げ始めたところだったらしい。

惨めなくらい男がもみくちゃにされている。


うわ。


「…怖すぎ…」


その女子たちの熱い思いに引き気味になりながら、でも若干感心してその様子を眺めた。

ここまで積極的に奪いに行けるというのはもはや才能かもしれない。


「…(あれ、)」


そうして
優雅にお茶を啜っていると、いつの間にか隣が静かになっていることに気づいた。

バックミュージックが効いたのかただコトを終えたのかは分からないけど、よかった。

こうして俺はシーンとする隣に満足して、久しぶりに爽やかな気持ちで勉強をすることができたのであった。
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