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空き教室の真ん中。
「ぶっさ、マジコイツきもいんだけど」
「…っ、ひ、すび、すびませ…っ、」
「謝罪なんかいらねーよ気持ちわりー」
複数の男子生徒に足蹴りにされている男。
もう何度も見慣れた光景だった。弱いものが虐げられ、強い者が他者を蹂躙する。この学校では当たり前のことだった。
集団から見えない位置で、偶然通りかかっただけの俺はその様を無感情のまま見下す。
ただ、それだけで…日常と同じように過ぎていく。…はずだった。
…けど、
「やめろ…っ、!」
「…――…」
芯を持った、柔らかい声音。
続いてその声が殴打によって苦痛を滲ませるのを聞き、不快感に眉を寄せた。
(…また、アイツ…)
チッ、と怒りに任せた舌打ちが零れる。煮立つ感情が、一気に身体を侵食した。
何度も何度も肉を打つ音が十数秒ほどし、……
「――…、クソ」
感情のまま吐き捨て、教室内に入る。
ゆっくりとその集団に向かって歩いていると、その中の一人が俺に気づいた。
当然、弱者をぼこぼこにして憂さ晴らししてたヤンキー共が俺を歓迎するはずもなく。
「…ムカつく、」とぼやき、一人を蹴り飛ばせば、一気に場はどよめきと復讐心に荒れて。
…けど、喧嘩慣れしてる俺にエセヤンキー共が敵うはずもなく、それはものの数分で終わりを告げた。
「…あ、りがとう、明人」
少しの安堵と、罪悪感を滲ませた顔で見上げてくる恋人の声を無視する。
「悠生、くん、 僕のせいで、ごめ、」
「…っ、痛、…ううん。おれが勝手に来ただけだから、」
自分だって殴られたくせに、なんでそんな弱虫を心配すんだよ。