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今だって俺が助けに来なければ、ヤられるか、最悪の場合それに加えて重傷で病院送りだ。


「佐久間くんは、大丈夫…?」


他者に心配そうな表情を向ける悠生に、無性に腹が立つ。
ふざけんなよ。お前の恋人は俺だろうが。
なんでそっちの心配なんだよ。放っておけよ。助けてやったのは俺で、付き合ってるのも俺だろ。


「……」


…けど、そんな気持ちとは相反するように、口は動かない。

今まで募りに募った不満が、逆に言葉を出そうとしなかった。

いつもいつも、『誰か』の、弱いものの助けになることばかりを考えている悠生は、いじめられている人間を見るたびにこうして身を挺して庇おうとする。
放っておけばいいのに。そんな奴に構うな。俺の方を見ろよ。


「…ごめん、いつも、…」


俺が怒っていることを察しているらしく、軽く目を伏せ、所在なさげに謝ってくる。
いらねーんだよ。そんな言葉。俺が欲しいのはそんなものじゃない。

俺の恋人のくせに、なんでそんなこともわかんねーんだよ。
静かに見下ろせば、びくっと震える身体。


「あ、明人も、怪我、してな…」

「触んな」

「…っ、」


恐る恐る誰かの血で濡れた俺の頬に触れてこようとした悠生の手を跳ねのけた。
明確な拒絶を感じ、薄っすらと涙目になる姿を見て、更に苛立ちが増す。


「今更心配してるふりか?おせーよ。さっきまであの弱虫に愛想振りまいてたくせに」

「っ、愛想…っって、ちが、おれは、」

「ちがくねーだろーが!!!」


ドンッ、と拳で壁を力の限り打つ。「っ、!!」大げさなほど肩が跳ねた恋人の姿に、収まるどころか際限を知らずに昂っていく。


「…また、大好きな御趣味の人助けで自分を犠牲にする気か」


悠生がそうとしか生きられないのも知っている。
それを知った上で付き合うことを選んだのに、それでもこう何度も目のあたりにするとおかしくなりそうだ。

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