「なぁ…」
後頭部にたら…と血が流れるのを感じながら、薄く微笑む。
(なぁ、洋平…感謝されてもいいくらいのことをしただろ。俺)
好きな女とのきっかけを作った。きっと女は洋平に感謝する。これでまた会うきっかけになる。洋平は滅茶苦茶格好良いから、きっと女は洋平を好きになる。だから、いつもみたいに褒めてくれよ、そう、思った。
のに、
「ふざけるな…!!」
本気で怒鳴られ、びくっと震えた。
「え…?」
どうやら、期待した結果にはならなかったらしい。
なんでだ。怖い。洋平が、こわい。こわい。こわい。こわいこわいこわいこわいこわい。
「ぁ、あ…ぁあああぁ…っ!!!」
俺は、洋平にそんな顔をされたことはなかった。そんな目を、向けられたことはなかった。だって、だって、洋平はいつも凄く優しかったから。
…洋平だけは、昔からずっと、俺に優し
「俺が、嫌い…?」
ぽつりと零れた言葉に対する反応を見る余裕はなかった。
きっとそこには憎悪がある。嫌悪がある。侮蔑がある。そんなの、見たくない。
「ごめん、ごめん、ごめんなさい、」
まるで昔の俺だった。
結局、俺は…ぼくは、何も変わってなどいなかったのだ。
新しい自分になれれば、何かが変われると思ったのに、向けられる目に、自覚してしまった。
「…っ、なんで、おこってるの?」
「なんで、って…それくらい、わかるだろ…っ」
「わからない。…ぼく、何かまちがった…?」
わからない。
わからない。
どれだけ謝れば、元の洋平に戻ってくれるだろうか。それとも、もう…
「なぁ、洋平」
どうしてか、涙が止まらない。ごめんと、もう一度あやまる。
ゆらり、立ち上がるとめまいがする。
俺を見上げる洋平の顔が、
「死んだら、許してくれる…?」
「…っ、待っ、」
焦った、顔が、
伸ばされた、手が
喉を突き刺した ナイフが
…そこで、俺は終わった。