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「…嫌?」

「っ、ちょ、ちょっと待って!嫌っていうか、むしろ嬉しいけど、え、い、いきなりすぎっていうか、まだ早いっていうか、心の準備ができてないっていうか」


面白いくらいに、めまぐるしく視線やら顔の向きやらが動いている。

…確かに、朝霧の言う通りかもしれない。突然すぎた。ちょっと反省した。

そうは思ったけど、まだ、来ないとは言われてないわけで。


「だめ?…無理?」

「…っ、っ、」


手首を掴んだままじっと見据えて答えを待っていると、「ぎゃぁああ何この展開やばいし狡いその誘い方ズルいよ!絶対わかっててやってるでしょ色々!」と顔を片手で覆って悶絶し始めた。

「狡いって何が?」と聞けば、「嘘つき!」と謎の誹謗中傷をされた。結構傷ついた。


「そ、そりゃあ、前告白して、断られちゃったのはすごくショックだったけど、でもでもまさか今度は突然家、なんて」

「うーん。ちょっと乙女心を無自覚に弄びすぎだよね」

「そうだよ!って、あれ、…宮永、君?」


流れるように自然に会話に入ってきたのんびりとした声。
予想だにしない返しに目を瞬き、教室のドアの方へと顔を向ける。


「それって僕じゃだめかな」

「…それ?」


淡いベージュの髪色に軽い癖っ毛。

大体の人が好青年と印象づけそうな笑顔を浮かべた涼が、「夏空の家に行くの」と鼻歌でも歌いそうな雰囲気でオレの目の前まで歩いてくる。


「いくら同意があったって、やっぱり男女が二人で密室にいるのは良くないと思うんだ。それに、夏空はとりあえず自分を好いてる人間であれば良いって感じだし」


朝霧の手首を掴んでいたオレの手を握ってそこから離された。
と思えば、逆に今度はこっちが手首を掴まれている状態になる。


「僕も、君のこと好きだよ」

「…そうなのか?」


まぁ確かに嫌われてはいないだろうってことはなんとなくわかってた。
正孝に比べたら一緒にいる時間は少ないけど、それでもクラスの人間の中ではかなり仲が良い方になるだろう。


「うん。好き。だから家に行きたいんだけどなー。だめ?」

「ううん。オレは良いけど」


迷うことなく頷かれて、少し気分が良くなる。

こくんと了承し、「朝霧は?」とそっちを向く。

…と、なぜか銅像みたいに固まっていた。オレと涼を、なんだか凄い形相で見つめている。


「…朝霧?」

「え、ぇえええ?!宮永くん、今、え、す、好き?!って、ど、え、もうわけわかんな…っ、え?!」


一拍おいて、耳がつんざくような音量で発狂しはじめた。

「うっそこの展開はもっとやばいすごい最高ひぃぃ…!」とかなんとか聞き取れたのはこのくらいで、後はよくわからない単語を叫んでいる。

…うるさい。今度はなんなんだ、と眉を寄せて首を傾げると、


「は、…!そうだ!私はまた別の日にするね!ぜ、ぜひ、是非二人で楽しんで!」


がんば!と謎の応援ポーズをして走るようにして教室から出ていってしまった。
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