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呆れたような態度をとられ、余計にわけがわからなくて混乱する。
「だって、ヤりたいって言ってるようなもんじゃん」
「…っ、な」
「明らかに自分に好意を寄せてる女子を誘うんだから、余計にそう思うよ」
淡々と続けられる予想外の言葉の羅列に、絶句する。
足を止めたオレを振り返り、怪訝な表情をした涼が、「え、本当に何も考えてなかったの?」と素っ頓狂な声を出した。
「僕達幾つだと思ってんの?高校生だよ高校生。もう小学生とか中学生じゃないんだよ」
「…オレは、…その、ヤる、とかそういう意味じゃなくて、ただ、」
狼狽えながら言い返そうとして、…たんだん言葉尻が窄んでいく。
自分の言葉に、自信がなくなってきた。
じゃあどういう意味で誘ったんだよ、と言われれば、何も言えなくなる。
確かに、前に告白されたからっていうのは理由にあって、…なら、さっきオレが誘ったのは、
「ふーん。いやー、無自覚って怖いね。凄い凄い。流石夏空。天然ジゴロって仇名は伊達じゃないね」
「バカにしてるだろ。しかも変な仇名勝手につけるな」
じとっと睨めば、なんでそうなるかなぁって首を竦めた。
「褒めてるのに」
「そういうわかりきった嘘はもういい」
「本当だよ。僕は、そういう夏空が好きだからね」
「…っ、」
さらっと真剣な顔で吐かれた言葉に不意を突かれて驚くオレに、薄い唇で弧を描いた涼が、あははと笑った。
…校門を出たところで、あ、と再び自分の不甲斐なさに気づく。
「もしかして、帰り道わからない?」
「…うん。いつも、ついていくだけだったから」
誰に、とは癪なので言わない。
(…なんだよ、オレ。さっくんがいないと、自分の家にも帰れないのか)
せっかく全部忘れようとして、違うことで必死に頭を埋めてたのに、こうやってまた思い出す。
なかったことにしようとしても、生活のすべてで思い出してしまう。
「……ごめん。オレ、やっぱり今日はやめとく。…正直、凄く嫌だけ、…っど、……涼?」
さっくんに教えてもらいに行かないと、と顔を俯かせて呟こうとして、手首を掴まれた。
「行こうよ」と強い口調で、ね、と微笑む涼に、戸惑う。
「でも、」
「大丈夫だよ。道ならわかる」
「…へ、っ、うわ、ちょ、っと、歩くの早、い、っ、」
手首を掴んだまま、スタスタとどこかに歩き出してしまう背中に、戸惑いながら後を引きずられるようにして追う。
「っ、わかるって、なんで、」
「安心していいよ。僕、夏空の家の場所知ってるから」
一回も来たことないのに、どうして。
そう聞こうとした声は、まるでデートでもしてるみたいに楽しそうな笑顔を浮かべて目の前を歩く涼の姿に躊躇われて、喉の奥に消えた。
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