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………………


「わー、こうやって目の当たりにすると、夏空ってお金持ちなんだなーって改めて実感した。扉も指紋認証だし、部屋も普通の家の何倍もあるよこれ」

「…っ、涼、お前、…っ、は、や、すぎ、」


ゼーゼーと気管支から変な音を鳴らしながら、制服の袖で額の汗をぬぐう。

一緒に走るようにしてここにたどり着いたはずなのに、オレに比べて涼があんまりへばってみえないのは、決して一方の体力がないせいではない。

…うん。オレはおかしくない。というか、この真夏に無理やり引っ張られてきたんだから、息切れするくらいは仕方がない。

しかも途中で、「病弱系美少年が放置されて泣きそうになって困ってる時の顔ってかなり萌えると思わない?」なんて今の状況と全く脈絡のない疑問を投げかけられ、オレが一人で帰れないことを知ってるくせに全然知らない場所に置き去りにしようとしてくるから、情けないけどこれはかなり癪だけど本気で泣くかと思った。半分泣きかけた。


「それにしても置いてけぼりにされたと思った時の顔、ドっキューンってきたよ。泣き顔めっちゃ可愛かったし」

「っ、ふ、ざけん、な…」


ただでさえ体調が良くなかったのに、この追い打ちをかけるようなやりかた。思い付くすべての言葉で暴言を吐いてやりたくなった。ばか。あほ。まぬけ。短小。おたんこなす。

(…水、飲みたい…)

ふらふらと怪しい足取りで冷蔵庫から水を取り出し、飲み口を口元に近づける。

と、


「そーらっ!」

「…っ゛、…は、?」


名前を弾むように呼ばれて、後ろから抱きしめられた。
同じくらいの背のオレたちは、必然的にかなり密着度が高くなる。
学校ではこんなことをされたことはない。

だから、思考が鈍り、反応が遅れる。

後ろからぎゅっと抱擁されたまま、早業かと目を見張る流れでワイシャツのボタンを外された。


「って、え、涼、いきなり、何だ…っ、よ…っ゛?」

「あはは、思った通りだ。汗が滲んで色気たっぷりのえっちな首筋」


左の方のワイシャツを肩下にまで引き下げられ、そこにヂュウと吸い付かれた。

じんわりと広がる痛みに自然と肩が跳ね、右手で持ってかたむけていたペットボトルの中身が少し床に零れる。


「っ、ばか。急に変なことするから、水が零れちゃっただろ」

「えー、水なんて今から僕が好きなだけ飲ませてあげるよ?」


あーもう、と床を濡らしてる液体を見下ろして文句を言うオレに、もっともっと強く背後からぎゅうぎゅうしてきて、シャツの下、腰とか、胸とか、色々触ってくる。それに今でさえ着崩れかけてるワイシャツを更に脱がせようとしてくる。


「いいって。自分で飲むから」

「遠慮しなくていいよ。僕と夏空の仲じゃん」


何してるんだ。っていうか、飲ませてあげるってなんだよ。と変な違和感を感じつつも、もう一度飲もうと容器を傾けようとして、ペットボトルを奪われた。


「どうせいつも雨宮先生にも飲ましてもらってるんでしょ?」

「…っ、」


嘲笑するようなセリフに思わずむっとして言い返そうとして、手を掴まれる。
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