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そう気づいて、無駄な言葉を吐き出すのをやめる。
「……、…」
首筋に触れる熱い彼の吐息が、濡れた髪が、抱きしめてくる腕が、手が、身体が、オレに触れた場所から全てを奪っていく。
なのに、触れているところが濡れていくのとは反比例するみたいに熱くなって、
視覚、聴覚、触覚、感覚…とか、言葉でするのは難しいほど全部がさっくんに向けられていた。
「ごめんなさい、ごめん、ごめんなさい、」
「………」
痛いほど抱き潰されている肌越しに、異様に速い鼓動と、呼吸が伝染する。
オレの首筋に顔を埋めながら、ただひたすらに自分の罪を悔いているかのように謝罪しつつけるさっくんに、ほとほと困り果てる。
「…主人に縋って泣きじゃくる執事なんて聞いたことないぞ」
「…っ、っ、ぅ、」
「……まったく、仕方ないな。さっくんは」
ふ、と滲むような笑みが浮かぶ。
オレより年上で身体はおっきいくせに泣き続ける、そのちっちゃな男の子みたいな彼の髪をやれやれ、ぽんぽんしてやろうと、手を持ち上げた。
けど、
「…れ、…?」
さっくんだけじゃない。
………オレも、震えた。
凍りつき、頭が揺れたような錯覚にとらわれた。
抱き締めてくるさっくんの後ろに、見えた モノ 。
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