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困惑する。
…それに、どういう答えを期待してるのかもわからなくて。

そのままの感情が顔に出てしまったんだろう。


「”ご友人”と、話されていましたよね」

「ぇ、と、」


ちょっと嫌味っぽく吐き捨てられ、不機嫌な感じが滲み出ていて、…どきりとする。
ご友人、って誰のことだ、と頭の中を探ろうとして、


「『これからも、桃井の執事を続けた方が良いんじゃないか』って、そう…俺に言う気だったんでしょう…?」

「…っ、ぁ、聞いて、たのか」


いつだったか、正孝とした会話。
でも、あれは本当にさっくんが桃井を好きなら、仕方がないかもしれないって思って。だから、正孝の言葉にうなずいた。

こっちに視線を投げたさっくんが、一見無表情に、…でも悲しげに、諦めにも似た表情で瞼を伏せる。


「夏空様は、俺のことが一番大事だと、最愛だと言っておきながら、…俺が貴方より香織の方が好きだと言えば、簡単に手放せてしまうものなのですか?」

「…っ、」


零された静かな声が、悔しそうに、どこか責めるような色を滲ませている。

違う、そうじゃない。とすぐにでも言わないといけないのに、…喉が渇いてるみたいに声が出ない。

…実際にさっくんにそんなことを自分が言えるとは思ってなかった。

だって、本当に離れていっちゃったら、嫌だから。

(……嫌じゃないはず、ないだろ)

簡単に手放せるわけない。
いやだ。嫌に決まってる。

……桃井を選んで、…オレの傍からさっくんがいなくなるなんて、絶対に嫌だって思う。

でも、それはオレのワガママだから。

もし、こんなわがままを言って、
さっくんに嫌われたら、…もう二度と会いたくないって言われたら…それが…一番怖い。

オレとさっくんの関係は、家族だけど、…さっくんからみれば、…ただの主人と執事でしかなくて、それがなくなったら、…繋がりを失ってしまう。


「…殴ってくれればよかったのに」


額を押さえるようにして前髪に指を差し込みながら、そこが痛むかのように顔を歪め、掠れた声で、泣きそうに彼が笑う。


「…最低です。吐き気でどうにかなりそうなほど…最悪な気分です。貴方を誰かの代わりにするなんて、嘘を吐いて、…あのような酷いことを貴方にして、泣かせて、…俺は、」

「っ、ちがう、っ!!」


このまま、どこか遠くへ行ってしまいそうで不安になる。
何かしでかしそうな、…放っておけば本当に壊れちゃうんじゃないかって思えるくらい危うい雰囲気に、ぐ、と胸が詰まった。

彼の腕を掴んで引き、ベッドに押し倒す。


「ちがう、ちがうんだって、そうじゃなくて、あれを承諾したのは、さっくんが大事だからで…っ、それに、オレが泣い、だ、のは、」


ちゃんと話したいのに、伝えたいのに、喉が熱さで詰まって話せなくなる。
そんなオレに、さっくんが少しだけ優しく目を細めた。


「……どうしてこうなってしまったのか…わからないんです」


否定しようとしたオレから顔を反らし、戸惑っているように息を吐き出した。


「…ただ、貴方に喜んでもらいたかっただけで、…それだけだったのに」

「……?どう、いう…」


ぽつりと投げやりに零された言葉に、小首を傾げる。
一瞬頭が追い付かなかった。


「夏空様に…喜んで、褒めていただけると思ったんです」


…親に従う小さな子どものような。

けれど、…主にどうしようもないほど従順なペットのようにも見える…むしろ、それ以上の、異常だと思うぐらいのレベルで。


「だから、昨日…あの時から0時になるまで、彼女の要望の全てに応えました。」

「あの、時、って」


わかってるくせに、この、嫌な予感が当たってしまわないでほしいと、そう無意識に思って言葉が零れ落ちてしまう。


「…貴方に、1日『彼女』の執事になるようにと、ご命令を頂いた時から」

「……っ、」


その言葉に、何か言い返そうとした

瞬間、


(…っ、?)


…その身体を押し倒し、縋りつくように肌を寄せていると…不意に、気づく。

さっき腕を引いてベッドに倒した時の、…どこかに怪我をしてる、みたいな、痛みに耐えている感じの身体の反応。
…それに、桃井のいちごの香りとは別の匂いがした。

さっくんに抵抗される前に、思い切りワイシャツを引きちぎる勢いで下から上にめくりあげる。

……と、


「…っ、なんだよ。これ」


思わず、呻いてしまう。
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