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故意につけられた沢山の傷を存在していないかのように、いつも通りに笑う。

その表情に、ゾクリとする。

…何が、そこまで彼を歪ませたのか。異常なことを、当然のように感じてしまうようにさせたのか。

得体の知れない感覚に、震える。

…こんなの、まるで呪いみたいじゃないか。


「……貴方に、そんな顔をさせるはずじゃなかった」

「…っ、ぅ、うう…っ、」


オレの問いには答えず。
困ったように笑って、頬に触れている指が目尻を優しくなぞってきた。

だめだ。
だめだって、わかってるのに、…溢れる涙がとまらない。

オレのせいでさっくんがここまでするなんて思わなかった。
わかっていたら、桃井の提案を受け入れたりしなかった。


「……、ぅ、ぇ…っ、…ごめん、」


謝ったって意味のないことだけど、言わずにはいられなかった。

…傷跡にそっと触れて、ああどうしたらいいんだよ、と目の前の現実にまた泣きそうになる。

思わず息を呑んでしまうほど完璧な身体つき。
程よく筋肉のついた腰回り、美しく透明感のある肌は、…きっと、女だけじゃなく男も見惚れるか、もしくは嫉妬するレベルのものだ。

けど、そこに今回つけられただろう真新しい傷達に加えて…幾つもの古い傷。

それが、刻まれた傷とともにその”誰か”の存在を残すように白く歪な跡になっていた。

昨日の傷だけではなく、

ずっと昔の…誰かに、何かで傷つけられたような跡が幾つもあって、前に少しだけ聞いた話では…それはさっくんにとっては普通の日常で、だからこそオレに会えたんだって、…嬉しそうに笑ってて。

でも、オレはさっくんと同じようになんて笑えなくて、…怖くて、…本当はちゃんと昔の話も聞かないといけなかったのに、ずっと知らないふりをしてた。

けど、オレだけは痛い思いをさせないようにしようって思ってた。

なのに…今回はオレのせいで、その傷を増やしてしまった。

さっくんにこれまでそうした誰かと同じように、嫌な思いをさせてしまった。


「…本当に、ご心配なさらないでください。貴方と違って、俺はどのような行為に対しても、”それ自体”に特別な感情を抱いていません」

「っ、」

「それに、傷ができたからと言って…もし、夏空様の執事として生きる許可を頂ければ…の話ですが、今後の執事としての役割には何も影響はございませ」

「…っ、そんな風に、言うなよ…っ、!」


ばか、と涙を下にいるさっくんの頬に散らして、叫ぶ。
彼を押し倒したまま、驚いたように軽く目を見開くさっくんに、もう一度ばか、と詰った。

行為自体に特別な感情を抱いてないとか、桃井との…ことも普通のよくあることだとか、そういう言い方をしてほしくない。


「自分のことも、オレとのことも、全部どうでもいいことみたいに言うな」


どんなこともさらっと、まるで風景みたいに流していくさっくんに、不安になる。
もしかしたら、オレがぐちゃぐちゃ悩んでることは、さっくんにとっては些細なことでしかなくて、
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