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***


…どうして、この男を好きになってしまったんだろう。

熱の余韻でぼんやりとする頭。
部屋の中が暗いから、まだ夜中だということに気づく。



「……」


オレを腕の中に閉じ込めたまま、隣で目を閉じてまだ眠っているさっくんを見つめた。

絶対に苦労する。
今までだってさっくんを本気で好きになった人間をたくさん見てきた。

女性受け間違いなしの美男であることに加え、養護教諭としてもさりげない優しさを見せるさっくんに溺れ、苦しみ続ける女子達をたくさん見てきたのだ。

…まず、ライバルが多すぎる。
しかも本人に想いを伝えても悉くうまく躱される。となればこっそりと恋人になれるように裏で細工しつつ、さっくんと話すどの人間にも嫉妬心を燃やし、お互いに誰が敵かと疑いながら牽制しなければならない。

それらを傍観しながら、あんな風に望みのない恋はしたくないと、何度も思っていた…はずだったのに。


「…今なら、まだ引き返せるかな」


オレの苦悩も知らず、安らかに眠る綺麗な寝顔を見ながら…ううむと唸る。
セックスしている時も頭がおかしくなるくらい動悸がしていたけど、今はただ顔を見ているだけなのに、傍にいるだけなのにその時と同じくらい身体が火照り、頬が熱くなった。

…やっぱり、異常なほどドキドキしてしまう。胸が苦しい。痛すぎる。


(…いつかこれのせいで死んだらどうしよう…)


こんな身が裂けそうな感情を一生抱えていくのかと思うと、想像しただけで勘弁してくれと思う。

昨日も、オレの気持ちを受け取る気はさらさらないくせに、…キスはしてきやがって。


「……〜〜っ、ぅ、…」


自分の唇を指先でなぞってみて、…眠っているさっくんのそれも見て、…残っている気がする感触に声をおさえて悶えた。

好きだと自覚する前まで、家族として日常のように繰り返していた行為。

もっと深いのだってたくさんしてたはずなのに、別にあの頃はなんとも思わなかった。

恋じゃなかったから。普通にできた。

…だからこそ、さっくんは知らないんだろう。
わからないんだろう。

さっくんにとっては大したことない…触れるだけのキス一つでも、オレがどれ程苦しくなるか。心臓がぎゅぅーーーって痛くなるのか。


それから

…どれ程、嬉しいと思ってしまうのか。

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