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知らないから、簡単にできてしまうんだ。
「…っ、う、…さっくんのばか、責任とれ、」
鮮明に気持ちを否定された時のことを思い出してしまった。
内側から熱いものが込み上がってきた。
…泣きそうになる。だめだ。泣かない。泣くな。
「やめたい…、…もう、」
こんなことになるなら、好きになるんじゃなかった。
伝えるんじゃなかった。
袖で瞼を拭い、こんな格好悪い姿見られたくないと壁の方を向いた。
ぽたりぽたりと溢れる涙がシーツに染みこんでいくのがわかる。
もう一回涙をふいて静かに声を抑えて泣いている
と、
「…っ、え、」
軽い布擦れの音と同時に身体に回された腕に、不意にぎゅうっと後ろから抱き寄せられた。
少しだけ空いていた距離が、なくなる。
「…やめるって、何を…?」
寝起きのせいか、少し低く掠れている声。
後頭部に感じるさっくんの吐息。背中全体に感じる体温。お腹に回されている腕の感触。
その存在全てに全神経を向けさせられて、どうしようもないくらいに心臓が早鐘を打った。
「っ、…………さっくんを、好きな、こと…」
少し躊躇って、涙声で零した本音。
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