5

知らないから、簡単にできてしまうんだ。


「…っ、う、…さっくんのばか、責任とれ、」


鮮明に気持ちを否定された時のことを思い出してしまった。

内側から熱いものが込み上がってきた。
…泣きそうになる。だめだ。泣かない。泣くな。


「やめたい…、…もう、」


こんなことになるなら、好きになるんじゃなかった。
伝えるんじゃなかった。

袖で瞼を拭い、こんな格好悪い姿見られたくないと壁の方を向いた。
ぽたりぽたりと溢れる涙がシーツに染みこんでいくのがわかる。

もう一回涙をふいて静かに声を抑えて泣いている

と、


「…っ、え、」


軽い布擦れの音と同時に身体に回された腕に、不意にぎゅうっと後ろから抱き寄せられた。
少しだけ空いていた距離が、なくなる。


「…やめるって、何を…?」


寝起きのせいか、少し低く掠れている声。
後頭部に感じるさっくんの吐息。背中全体に感じる体温。お腹に回されている腕の感触。
その存在全てに全神経を向けさせられて、どうしようもないくらいに心臓が早鐘を打った。


「っ、…………さっくんを、好きな、こと…」


少し躊躇って、涙声で零した本音。
prev next


[back][TOP]栞を挟む