15

目を開けると正孝の怪訝そうな顔が見え、…ぁ…と小さく狭い気管支から息を漏らした。

…弱いけど、声が、出せる。
水分が全くない喉がパサつく。

今まさに長い眠りから目覚めたばかりのように世界が眩しくて、ぼんやりとした。


「どうした?まだ体調良くないんじゃねーの。帰るか?」

「…え、ぁ、いや、オレ、は…」


寒い。熱い。
乾燥しきった声を絞り出し、困惑する。

…今、オレなにしてた…?


「つーか、その猫早く追い出せよ。ついに学校の中にまで来やがった…」

「…ねこ…?、」


もふもふして良い匂いがすると思ったらいつの間にか膝の上に白い毛並みの美しい猫が伏せていた。


「どうして、」


家にいるはずなのに、と戸惑う。

けど、それ以上に

(…さっくんと、似てる匂い…)

凄く、安心する…。

今がどこで、何をしていたのかっていうことより、とにかく今はこの異常な感覚から逃れたかった。


「…寒、いんだ…」


別に今は真冬ってわけでもないのに。
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