16
冷凍庫にいるみたいに凍える。
(…あたたかい…)
ぎゅってして顔を埋めていると、驚くほど気持ちが平静になっていく。
安らいでいく。
すぐ今までのおかしいぐちゃぐちゃが嘘だったと思えるくらい、幸せだとすら思えてくる。
「きゃー、!可愛い、ね、音海くん触らせてーー!」
「毛並みすご…!」
鈴木や他の女子が話しかけてきた途端、にゃんこは不機嫌そうに目をほそめて軽々と膝から飛び降りる。
そのまま振り返ることなく開いた窓の外に逃げて行ってしまった。
「いっちゃった…。懐いてたけど、もしかして夏空くんが飼ってる猫だったりする?」
「ああ、家で飼ってる」
正しくは飼ってるっていうよりさっくんが作った猫だけど。
言ったところで信じてもらえないだろう。
それに、今は何より嫌な感じで身体が怠い。
にゃんこのおかげでかなりマシになったけど、それでもいつもと何かが違う。
汗の滲んだ額が嫌で、前髪を手で掻き上げる。
自然と入ってきた風がそこを冷やしてくれるから気持ちが楽になった。
「…ん、?」
何か考えなければならないことがあった、…ような、気がする…?
はて、なんだっけ。と記憶にない引っかかりに顔を顰め、けどそのかわりにか気分がすっきりしている。
ついさっき非常に悪かった気分を思い出し、もうああはなりたくない、結局まぁいいかと放棄した。
…それからすぐ、朝のさっくんとの出来事について皆に囲まれすぎて考える余裕もなくなったのだった。
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