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***


…彼の案に乗ったのが、間違いだったと気づいたのはその数分後。

さっくんが意地悪なサディストだということを忘れていたために、こんな状況になってしまっている。


「…っ、ぁあ、ぁぁあああ…」


がくがく。ぶるぶる。おろろろ。

ソファーの端で毛布にくるまりながら、若干の苦悶を吐き出しつつ画面を見る。
スクリーンの中では、ある館に入った四人組の学生がどうにかして出口を探しているところだった。

まさかホラー映画だとは思っていなかった。

大の苦手だ。
かなりの苦手だ。

昔あまりの怖さに漏らした。

見終わった後も映像が何度もフラッシュバックして、一メートル以内にさっくんがいないと不安でどうしようもなくなった。
忘れてない。忘れられないあの屈辱。

だけど、だからといって主人たるもの、オレが楽しめるようにとの善意でさっくんが借りてきてくれたDVDを見ないわけにはいかない。

今は『弟』だからと、そんな理由で逃げるわけにはいかないのだ。

まだ序盤の序盤なのに震えが止まらないが。
涙が出そうになるが。

…それでも、さっくんの誇りとなる主人としては絶対に見なければいけない。


「怖いなら、こっちにおいで」

「…っ、べ、別に怖くない」


ソファーの少し離れた場所で腰かけ、…思わず見惚れてしまうような優しい笑みを零して声をかけてくるさっくんからふんと顔を背ける。

(…もしかして、オレをいじめるためにわざとこの映画を選んだんじゃないだろうな)

じとり。睨めば、何もかもわかっているような表情で目を細めた。
意地を張ったってばればれなのは百も承知だが、簡単に甘えるのはどうかというプライドが邪魔をする。

…もし、もしも、万が一だけど、オレが怖がるだろうというさっくんだけが楽しい理由でさっくんが借りてきたのだとしても、いや、だからこそ余計に甘えてなるものか。


「わかりやすく震えてるのに、素直じゃないなぁ」

「っ、うるさいぞ」


頬を緩め、可笑しそうにクスクス笑うさっくんにむくれる。
…というか、敬語じゃないと一気に距離が縮まった感じがして、…なんか、…たまらない感情になる。


「弟なんだから、もっと甘えてもいいんじゃない?」

「…そういう、もんなのか?」

「うん」


淀みなくすんなりと肯定するさっくんに、心が揺れる。
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