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いや、でも、ぬ、うぐ、と悩み、…ふむ、とこくんと首を縦に振った。


「じゃ、じゃあ、さっくんが怖いだろうから、傍にいてやる」


もそもそと毛布にくるまったまま近づく。
と、不意に掴まれた手を結構な力で引かれた。

声をあげる前に、倒れ込む。


「な、何す、」

「遅いから」

「っ、」


オレを抱き留めながら、酷く楽しそうに、揶揄うような笑みを浮かべたさっくんにドキリとする。
敬語がとれると、なんだかその笑顔さえ壁がないものに感じてしまう。


「う、う」


なんだこの体勢は。
それと…この、綿菓子みたいに甘ったるい雰囲気は。


「それに、”お兄ちゃん”…だろ?」

「…ぁ、あわ…っ、」


膝の間に座らされ、振り返れば優しさ半分意地悪半分な表情で目を細められるから、喉が詰まって、頬が熱くなって、うまく息ができない。
兄弟っていうか…恋人、みたいだ。


「……」

「…”弟”なのに、首筋も耳も真っ赤」

「っ、…っ、」


背後からお腹に回されている両腕。
いつもよりはっきりと背中全体に感じる彼の体温と、後頭部のあたりに触れる彼の吐息に、自然と呼吸を浅くしてしまった。

抱き竦められる、という言葉を実感する。
さっくんの方がオレより背が高いから、後ろからぎゅううって包まれているような感覚。

(赤くならないでいられるかこれが…!!)

兄になってくれとは言ったが、仮にも自分を好きだと言った相手をこんな風に無防備によく後ろから抱けるなというか、もうこれ以上好きにさせるなばか。


「静かにして。映画に集中できない」

「だ、だって、」


小さく唸りながらごそごそしていると叱られた。
若干しょんぼりしつつも、さっくんが話すたびに吐息が頭を掠めるから意識が頂点を達して余計にてんぱってしまう。

どう考えてもこっちは映画どころではない。

画面では男の一人が、フードをかぶった男に殺されそうになっている。
話の流れは一切わからないのに、その一場面だけで肝がひやっとした。

無意識にさっくんの裾を掴もうと手を動かす。


「っ、」


その手に、触れる感触があった。
服ではない。

彼の手に、さまよっていた”それ”を迎えるように下から重ねられる。
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