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「………」

「……さ、っくん…」

「…………」


息を吸う音さえ、伝わってしまうほどの静寂の後


「……申し訳ありません。…うまく、できませんでした」


綺麗な顔に、酷く辛そうな痛みを滲ませ…俯いた彼が、そう呟いて

…力を失ったように、手が離された。


「べ、つに…そんなこと、は」


家族ごっこができなかった、とか、そういう話ではないのだと思う。

”夏空”

オレの名を口にしたあの瞬間、

…はじめて、『本当の』さっくんが見えた気がした。

きっと
今までだって、嘘ではない。
当たり前にある優しさ。温かさ。丁寧な口調。

どれをとっても理想的で、完璧で、大人で、皆の憧れとまで言われて

…けど、人と話すときに常にその間に壁を作っている。

今まで、どうすればその固い隔たりを壊せるのかわからなかった。

――それが、…崩れた。

(…どう、して…今…)

期待していたはずなのに、動揺し、触れていた手を無意識に擦る。


「…頭を冷やしてきます」


どことなく強張り、暗い表情を浮かべたさっくんが腰を上げ、オレの方を見ずに小さく零した。

「ぁ、…うん、」となんとか声を絞りだし、…浴室の方にその後ろ姿が消えた瞬間、…身体が震えていることに気づく。

…違う人に、見えた。

一瞬、ほんの一瞬だけ、…いつもの、じゃなくて


「…(気のせい、かもしれない、けど)」


向けられた方の、気が狂ってしまいそうなほどの感情を…見た。

心臓が、脈打つ。
息をするのが、難しい。

(……最近、あの瞳を見たような、)

ぼんやりと記憶を探るようにリビングに視線をやって、
ふと、思い出す。


「…そういえば、」


誰かと、ここで何かをしていた、のは…
いつ、何をしたか、頭を中を探ろうとして、

……パチン、と映像が途切れた。
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