11

***


「夏空様、夏空様…っ、」

「……ぅ、」


暗い部屋の中。
慣れた柔らかい感触の上に横たわっていた。

泣きそうな顔で
ベッドに横たわるオレの手を、祈るように両手で握られている。


「……俺が、もっと気をつけていれば…」

「何、…で、ここ、に…」


霞む意識の中、問えば、さっくんの顔が苦痛に歪む。


「…熱で、倒れていました」

「ねつ…?」


うまく体が動かない。
…いつの間に、体調を崩していたんだろう。
全然気づかなかった。

怠いとか、一切なくて。
今は、鉛みたいに身体が重い。

…ついさっきまで普通にできていたのに、


「だから、さっくんのせいじゃないって…いつも言ってるだろ」

「ですが、…」


舌が痺れているようにうまく回らない。
それでも、なんとか動かして叱ってやるが、心底申し訳なさそうに俯くさっくんの表情は暗いままだ。
毎度毎度オレが体調を崩すたびに、今にも死ぬんじゃないかと思うほどの過保護さで心配してくる。

別に、いつも通り、時々出る熱で具合を悪くしただけの話なのに。


「ちょっとでもオレのことを思うなら、ゆっくり休んでくれ」


弱々しい声になってしまう自分を殴りたい。
こんなの、もっと不安にさせるだけじゃないか。


「もしそれが無理なら、気分転換に外に行ってくれてもいいからさ」

「いいえ、夏空様にお仕えすることが俺の生きる意味ですから」


何でも仰ってください、と儚げに微笑む彼の顔には、隠しきれない疲れが滲んでいる。

当然だろうと思う。
いつも、オレが熱を出すと、その間看病してくれてるさっくんが寝ているのを見たことがない。

きっと、今回も凄く心配をかけた。

いつから寝ていないのか。
このままだとさっくんの方が身体を壊してしまう。

…脆弱な自分の身体が恨めしい。

時計を見ると、夜中の二時を示していた。
…こんな時間じゃ、一人で散歩に行かせるのも危ないか。


「ちょっと、手かりるぞ」


握られている手を自分の方に引き寄せ、ぴたっとほっぺにくっつける。


「へへ、やっぱりさっくんの手は冷たくて気持ちい…っ、げほっ、は、」

「っ、夏空様、」


失敗した。
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