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安心して、気持ちよくなれる方法のはずなのに、キスが濃くなればなるほど不安が大きくなる。


「…ッ、んん、や、…っ」


身体が怠くて、胸を押し返す手に力が入らない。


「…っ、…夏空様、お願いします…」

「……ん、ふぁ…っ?」


深い口づけをされた後、少しだけ唇が離れた。

それでもまだ痺れてるみたいに舌がうまく動かなくて、前に出さされていた舌から唾液がこぼれ落ちる。

首筋に顔を埋めたさっくんが、すがるようにぎゅうっと強く抱き締めてきた。


「…どうか、俺を…拒まないでください、」

「ッ、」


(そんな泣きそうな声と顔で言うの、ずるい)

それに言われるまでもなく、

拒むことなんて、単純に慣れの差でできない。

逃げても逃げても舌の動きを追われ、絡めとられ、隅々まで犯され、そうしているうちに何がなんだかわからなくなってきた。

どうやって抵抗したらいいかわからなくて、されるがままのオレをいいように扱い、服の下に…ズボンの下に手が潜り込み、揉まれる。

声を上げようとしてもそれはキスによってえっちな音にしかならなくて、水音に掻き消されてしまった。


(…嫌だって、言ってるのに)


熱のせいか、いつも以上に激しい行為についていけない。

普段してたのは今のに比べたらなんだかんだ優しかった。

…なら今されてるのはなんなんだって言いたいくらい…違う。

噛んでくるから、痛いし、怖い。

それに昨日いっぱい気持ちいいことされたばっかりだから、特に敏感だった。

目の前が真っ白になって、時々意識が飛んだ。

ただ、わかるのは、

泣きそうな顔と、縋りつくような行為。

頭の後ろをおさえている手。
青ざめて、なのに対照的に火傷みたいに火照り、更に熱を上げる身体と汗ばむ肌。
荒くなる息。
布擦れの音。
滲む視界。
何度目か数えきれないほど触れ合う熱い吐息、体温。

…はだけて、乱れていく身体に、思考はただ淡々と単語を並べていて、どうにも遅れている。


「は、ぅ…ッ、ぁ…」


グチャグチャ、と鳴る音とほぼ同時。

感情とは裏腹に、腰がビクついた。
頬が熱くなる。
背中がのけぞる。


「…や、だ…ぁ…っ…」


嫌だ。
いやだ。
いやだ。

怖い。こわい。こわい。

全身の細胞が壊れるような、全てを奪うような行為がどんどん先に進み、無意識に本能で恐怖を感じた。

悲鳴。
怯え。
悲しみ。
痛み。


(…オレのことなんか、気にしてない)


オレなんてどうなってもいい。
気持ちなんてどうでもいい。

自分さえ良ければ、それでいい。みたいな、

なのに、唇から、身体を押さえつけてくるさっくんのぜんぶから、震えが伝わってきて、
その不一致感が、余計に恐怖心を煽る。
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