学校とさっくんと桃井 1
……
…………
「よう!はよーす!」
「…っ、わ」
突然、肩を叩かれ、ぐっと首と背中にどかっと重さが加わってきた。
…と、横から覗き込んできている正孝の顔。
「……まさ、たか…?」
「…?どうした?」
ごしごし目を擦って、ぼーっとしていると撫でる感じに髪をくしゃくしゃにされた。
「…っ、うわ、ぎゃ、」
「まだ寝ぼけてんのか?つーか、今日は珍しく執事いねーんだな」
警戒しているような表情で、また首に腕を回された。
「まぁ?静かにしたい登校中でさえ、女にキャーキャー煩く騒がれてやがったあの鬱陶しい顔を見なくて済むと思うと、せいせーするぜ」
上機嫌に笑っている正孝をよそに、まだ夢心地感の消えてないオレはぼうっと下を見おろした。
…ちゃんと、制服を着ている。
そして更にその下の足には靴と、普段通学路で歩いているコンクリートの道路。
(…いつ、着替えたんだ…?)
というか、…いつの間に朝になって、オレは学校に向かって、?
…なんてぼんやり考えて、ハッとする。
「…っ、さっくんは?!!」
「うお!!いきなり大声あげるなっ!びびってちびりかけただろ!」
帰って来たなら、絶対に一緒に登校してるはずだ。
…けど、周りを見回しても…その姿はなかった。
「…いない、のか…?」
じわ、また涙が滲んでくる。
いつもなら、手を繋ぎながら『夏空様』って名前を呼んで、嬉しそうに笑ってくれるのに。
「別にいいじゃねーか。あんな奴いなくたって、学校でのお前の世話は俺がしてやるって」
「…っ、そういう問題じゃ、」
ない、と言いかけて、若干拗ねながらそっぽを向くと…突然ぎゅっと手を何かが包みこんだ。
「…っ、さっく、…?」
…期待を込めて下を見れば、正孝が何故かオレの手を握っていた。
びっくりして、目を瞬く。
「うざったい執事もいねーことだし、今日ぐらい良いだろ?」
「っ、え、」
驚いて手を引っこめようとしたけど、がっちりと繋がれているその手はびくともしなくて、握りこまれた指だけがもがいた。
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