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今そんなものを見たら余計にぱにっくになる。絶対になる。


「ふふ、冗談です」

「…さっくんの冗談は冗談に聞こえない」


む、と眉を寄せるオレに、有能犯はくすくす、と楽しそうな笑いを零す。

それから、熱くなったオレの頬に冷たい手で優しく触れながら、「本当に、俺も貴方の御意思を尊重した方が良いと思っていますよ」と続けた。

意外な言葉に「へ」とアホみたいな声が漏れる。


「”意思”って、見ない方がいいってこと…?」

「はい。夏空様が今の御顔をご覧になられたら、恐らくまた暴走なさると思いますので」

「……どういう意味だ?」


頭の中でその言葉がうまく処理できず、はて、と悩んだ。
…暴走、なんてまるで凶暴な怪物のようじゃないか。

もし鏡を見たら今よりもっと動揺することは間違いないだろうけど、そんな言い方あんまりだ。

しかも『また』って。
むぐぐ、と不満に思いつつも、「?」と首を傾げる。


「そうですね…」


指を顎において考え込んでいるようだったさっくんがじっとオレを見据える。


「夏空様に御理解いただけるような例で申し上げると、…一昨日の朝の悪夢の再来、といえばまだ記憶に新しいでしょうか」

「…っ、!!」


”一昨日の朝”

びくんっと身体が跳ねる。
思い出してはいけなかったのに(というか無理矢理脳内から外に放り投げて必死に忘れようとしていた)その言葉によって、脳内を一気に駆け巡ってきた映像にぼたぼたぼた、と大量の汗が流れる。


「ま、さか…」

「はい。万が一夏空様が、現在の…まるでタコのように真っ赤になってしまっている可愛らしい御顔をご覧になられたら、」

「ちょ…っ、」


止める声が、間に合わない。
目が合うと、くす、と揶揄うような笑みを零した。


「…一生懸命に御自身を”お慰め”になっていらっしゃったあの時のように…今の俺の言葉を曲解して、恥ずかしさ故にまた何日も脱衣所に引きこもられてしまいそうですから」

「…っ、!!思い出させるな…っ、」


さっくんの口を塞ごうと両手をがばっと伸ばすとスッと難無く避けられる。
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