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その言葉とほぼ同時。
こっちに投げられた視線に、更に心臓が期待に満ちて速いリズムを刻む。
心の中を全て見透かされているような感覚に捉われて、全身が熱くなる。


「……え、オレが、って…さっくんは?……さっくんは、…嫌じゃ、ないのか…?」

「いいえ。俺は、貴方が望むことなら何でも喜んで致します」

「…っ、何でも、…って…なんだよ、それ…」


慣れたように迷いなくさらりと告げられた台詞に、音海くんは照れるどころか焦ったような顔をした。

柔らかく微笑んで応える咲人に対し、苦々しく眉を寄せ、顔を背ける。

少しの沈黙の後「…分かった」と重く呟いて、


「夏空様は、俺が彼女の執事になることをお望みですか?」

「……」


…そして、

その言葉に、こくり、と確かに小さく頷いたのだった。


………

…………………


音海くんが出て行った後。

静かになった教室で、私は”彼”が近づいてくるのを感じていた。
…バックン、バックン、心臓が破裂しそう。


「…咲、人…、…様…?」

「はい」


私の呼びかけに、彼は全然嫌そうじゃなくて。

いつもなら、様じゃなくて『先生』って呼ばせようとして困ったように笑うのに、…今は、きっとどんな呼び方でも許されるんだろうと分かった。

だから、次はずっと夢見ていた呼び方を…傍にいない時には当たり前のようにしていた呼び方をしてみる。


雨宮先生、咲人様、

…咲人さん、咲人。


けど、それもまた、いつもの優しい笑顔で受け入れてくれた。

彼に何をしても拒まれない。

好きな人とこんな関係になれて、浮かれる。

特別だ。
私は、彼の特別になれたんだ。

それを実感して、もっと、もっとって欲張りになる。


「……咲、人――」


至近距離で視線を絡ませると、遠くで見るより更に色気のある瞳に、異常な興奮と歓喜で胸が激しく波立つのを感じた。

ゾクリとするほど綺麗に整った、甘く美しい顔。

……色っぽいのに、凄く優しいのに、何故か冷たく見える。

そんな表情に心を奪われ、思わず熱を帯びた吐息を吐いた。

まだ、この状況が信じられない。

…怖くなった。

音海くんに言ってたように、私にも何でもしてくれるんですか?って聞きたくなって。
口にすれば、返ってきたのは蕩けそうなほど甘美な言葉。

―――――

(本当に…?)

貴方の限界を、確かめてみたくなる。
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