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でも、俺の昔の友達だし、…優さんに関係ない人だし、これからも多分関わらないだろうし、

だったら、…言っても、いいんじゃないかな。


というか


(……言いたい。優さんは俺の恋人だって、ちゃんと言いたい。)


本音は確実にそこだった。

ぎゅ、と拳を握って、がばっと勢いよく顔を上げる。


「う、うん…っ、こ」

「友人ですよ」


勇気を振り絞って発した俺の言葉に、さらりと被せられる声。


「…え…?」

「あ…っ、そっか。そうだよな、変なこと聞いて、すいませんっした」

「いえ、気にしないでください」


何故か安堵したような頷きの後、正樹の敬語の謝罪は優さんに向けられていて、…それに対して爽やかな笑みが返される。


「正樹…さんは、そちらの可愛らしい女性とデートですか?」

「ッ、」


(…可愛らしいって、言った)


「…っ、ぁ、はい。せっかくの休日なんで…」


思い出したように正樹が少し後ろを向き、…それまで優さんに見惚れてぽうっとなっていた女の人が慌てて頭を下げた。


「…そっちも休みなのに邪魔して悪かったな。」


申し訳なさそうに謝る正樹に、一応連絡先を教えてほしいと言われ、「……おい。どうしたんだよ。ぼーっとして」「…へ?」「だから、ライン教えてくれって」「あ、うん、…らいん…」スマホを出し、


「ぁ、」


ガチャン、と落としてしまった。


「代わりに俺がやるよ。流羽、良い?」

「…うん」


慌てて拾おうとして、震えている手のせいで何度やっても落としてしまう俺の目の前に屈んだ優さんが、スマホを片手に優しく笑みを浮かべる。

言葉の意味を理解せず、優さんの言うことだから、と何も考えずに頷いた。


「じゃあ…またな」


罰の悪そうな表情でもう一度頭を下げて振られる手に、最早条件反射でふらふらと手を振り返す。

……正直にいえば、ほとんど聞いてなかった。
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