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それより、さっき遮られた言葉の方がショックで、その後の会話なんか一切頭に入ってこなかった。
「あの、優さん…」
「ん?」
不安げに呼びかける俺に対して向けられる笑顔は、変わらない。
「…さっき、の…」
ぽつりと呟き、口ごもる。
けど、結局……わざわざ聞くことじゃない。と思い直し、「大したことじゃない、から…いい」と首を横に振った。
(…そうだ。あんなこと、大したことじゃない。優さんが傍にいてくれるだけで充分なのに、『俺達…恋人じゃないの?』なんて…もし聞きでもして、困らせたらどうするんだ)
それに、『可愛らしい女性』なんて、いつもの優さんだったら絶対に言わないのに。
…どうして、今日に限って、そんな言い方をするんだろう。
「…っ、」
(…もしかして、あの人のこと…好きになった?)
ずき、と胸から下腹部にかけて、絞られるような痛みが走る。
ざわざわと、木々が揺れるような、…嫌な予感がした。
「流羽?どうかした?」
「っ、ううん!なんでもない!」
今度は大きく首を振って、もう一度もやもやを振り払う。
笑顔を作り、少し前で立ち止まっている優さんの元へ小走りで駆け寄った。
……その後も、買い物を続けた。
手も繋いだ。
冗談も言い合った。
家に帰ってからも、いっぱいキスをして、腰が砕けるほど抱いてもらった。
…特別な日だった。
一日中優さんを独占できて、外で一緒に買い物もできた…最高の日。
ただ、途中で昔の友達に会ったってだけで、それだけで、
本当に幸せで、特別な一日だった。
…はずなのに、最初の甘く幸せな空間はどこかに薄れて消えてしまっていた。
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