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優さんと一緒にいるためには必要なことだってわかってたはずなのに、…わがままなことを言ってる。怒ってるかな、呆れられてるかな、と不安で仕方がなかった。
けど、頬に優しく触れている指先が、気遣うような仕草で涙をぬぐってくれる。
「そんなにしたいなら、しようか」
「…………っ?!本当、に…っ?」
「…相変わらず、流羽はわかりやすいな」
喜びを抑えきれない声に、少し戸惑ったような反応が返ってくる。
持て余すように、困ったように笑みを零した彼は、逡巡した表情を見せた。
まさか、今のは取り消されるのか、ナシになるのか、でも、でも、もしかしたらと期待してしまう。
自分でも自覚せずにはいられない。
どう考えても、彼のその言葉に深い意味なんてない。
ただ、気まぐれで言ってくれただけ。
後悔と不安で泣きじゃくっていたはずなのに、優さんの一言によってどうしようもないぐらいに今は泣きたいほど嬉しい。
それと同じ、いやそれ以上に胸が潰れて体を引き裂かれるような苦痛も不幸も、容易に与えられてしまう。
「……優、さん……」と、思わず頼りない、縋るような声が零れた。きっと情けない泣きそうな顔で見上げた俺に、彼は「嘘じゃないから、心配しなくていいよ」と頭を撫でてくれる。
頭をよしよししてくれる手の重みと感触に、ほっと安堵しながら息を吐く。
モデルとか俳優以上にスタイルが良くて、毎回見惚れるしかない大好きな優さんの身体に腕を回して、ぎゅうっとした。
「……(……ああ、もう…好きすぎる、)」
彼の整った綺麗な顔が好き。
美しい身体が好き。
さらさらな髪が好き。
息遣いが好き。
大人の男の人な雰囲気も、魅了されるうっとりするような香りが好き。
ふとした時の表情とか、ちょっと困ったように微笑むところとか、今みたいに傍に寄れば拒絶はしないで頭を撫でてくれる手とか、他にも数えきれないぐらい、全部、全部全部、
好き、好き、好き、優さんのことが、なんでこんなに好きなのかわからないくらい、大好き。
(……だから、いいんだ、他の人に抱かれても、)
そのおかげでこうして今、大好きな彼が俺を甘やかしてくれている。
2人だけの空間で、傍にいてくれる。
……それだけで、俺は充分、泣きたいほどに幸せを感じられるんだから。
と、不意に、髪を撫でてくれていた手の動きが、止まる。
それに応じて、どうしたんだろうと、俺は余韻に満たされながらも彼の挙動に半分意識を向ける。
「普通にするのもつまらないな」と優さんの声が、耳のすぐ近くでぽつりと小さく呟いた。
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