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速度は緩くなったけど、わざと聞こえなかったふりをして返事は返さなかった。


「あっんぅ、んっ…ふぅ……ふぅっ、」

「…っ、ずっと一緒にいたのに…ッ、知らなかったな…っ」

「っ…ふぁ…んッ!…ふっ……!」


ナカを荒らすように腰を激しく押し付けられて、唇の端から甘い声が漏れる。
肚の奥を、半ば強引に広げられて下半身は引きつっていた。
呼吸するたびに後孔を締め付けて、快感の混じった苦しそうな声を零させる。
まだ硬い孔をもっと唯人の形に拡げてほしくてその熱の感触を焼き付けてほしくて、わざと下腹部に力を入れて後孔でモノを締め付けてやった。

…できることなら今この瞬間、このままで時間が永遠に止まってしまえばいいのに。


「…っ、締め、すぎ…ッ、ぁ…っ」

「はぁ…蕩けるっ…やば…ッ、きもちい…っ」

「…は…っ、」

「ぁっ!ひ…!」


この行為自体が初めての癖にバックでの挿入を求めた。

腹の奥まで挿入され、ズンズンと突かれる衝撃に気が遠くなりそうだった。
激しく腰を打ち付けられるたび、唯人と俺の結合部がぴったりくっ付くその瞬間がたまらなく怖くて…愛しい。

シーツを握りしめながら声を漏らした。

毎日の日課のように今日も当たり前みたいに俺の家に来た唯人に、感情が爆発して叫びたくなった。
出来ることなら感情のままに喚いて自分の想いを伝えてしまいたかった。

…でも、そんなことできるはずもなくて。


”俺のこと、抱いてよ”


できるだけ平静を装って冗談っぽく笑いながらそう言えば、彼はいつも通り顔色一つ変えずに短く聞き返してきた。


”…本気?”


うん、と迷いもなく肯定する俺に対して、彼は真剣な眼差しのまま少し黙って「わかった」と頷いた。

軽くあしらわれると思っていただけに、逆に動揺したのは俺の方だった。
そんな俺を見た彼は無表情のまま”やめる?”と問いかけてきて、緊張しながら全力で首を横に振った。

…そして彼は今、こうして俺を抱いてくれている。

もしかしたらこれが最後になると分かってるから、一度くらいヤってもいいと思ったのかもしれない。

…でも、それでも構わなかった。
彼とできるなら、どんな理由でも構わなかった。

挿れないっていう選択肢もあったのに、…結局うまく解せないでいる俺の穴に指を突っ込んでローションで柔らかくしてできるだけ痛くならないように気を遣ってくれた。

俺のために、そこまでしてくれた。

きっと俺はこの日のことを一生忘れない。

…いや、忘れようとしても忘れることなんて出来ない。
だって今俺達がセックスしてるのは俺の部屋で…それに、唯人と過ごした思い出が沢山あるんだから。

…これからもずっとここで過ごすなら嫌でも思い出すに決まってる。
でもたとえ今こうしているのが違う場所だったとしても、…忘れることを望む時が来るとは思えなかった。
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