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そしたらコイツは次の日にはその女子と付き合ってて、それを不思議には思っていたけどうまくやれてるようで、本人も楽しんでると思ってた。

なのに………、それなのに、そうやって口にした何気ない俺の一言でこんなに苦しめてたなんて、知らなかった。

いつの頃からか、俺が女子に近づくと嫌な顔をするようになった。

今日だって、学校の帰り道に偶然会った女子といたときに突然強く背中を押されて振り向いたらコイツがいた。


”…っ、”


車道に突き飛ばされる自分の身体。
視界の端で急ブレーキを踏む暇もなかった車が突っ込んでくるのが見えた。

ああまたか、って思った。
今度こそ、死ぬ。
そう思ったのに滅茶苦茶痛かったのに。

…結局死ねなくて、こうして助かってしまった。

事故の後遺症でもう歩くことなんてできないけど、
それでもずっとこの先もコイツといるくらいなら忘れたふりをして、全部リセットしたかった。

でも、その作戦は通用しなかったらしい。


「ちょっといたい目に遭ったら、春樹も俺の気持ちをわかってくれると思ったのに……なんで、なんでこんな………」

「………」


忘れたふりをしたのが間違いだったのか。
それとも、こいつと友達になった時点で間違っていたのだろうか。
涙で濡れた瞳で、そいつは俺をじっと見つめた。


「あんだけお前の言うことばっかり聞いたんだ。最期に一つくらい、俺の願いを叶えてくれるよな?」


聞いてくるくせに指の力を少しも緩めないのは、俺に答えなんて求めてないからだろう。

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