宝石

ヘマタイト


隣人という意味の名で呼ぶ異世界からの侵略者共に躊躇いなど要らないと、震えもしない手で引金を握るそんな日々。
侵略者全てを敵と断じていながら戦いの時に手を借りる形になってしまった、そんな俺を自嘲したりもした。あいつを肯定することは、今まで近界民の全てを敵と断じていた自分を否定するような気がしてならなかったのだろう。
――なんて滑稽な。
「姉さん……俺は、どうしたら」
もうどこにもいない姉さんに、届かない問いを投げかける。
その時、訓練室の扉が開いた。開けたのはボーダーのB級隊員で、俺の学校での同級生でもある**だった。
「もう……貴方、また近界民のことで悩んでいたわけ?」
今の俺は、側から見ても悩んでいるように見えたようだ。その様子を見かねたのか、彼女は俺に休むことを勧めてきた。
「そろそろ休憩にしましょう。貴方の好きなクッキー、用意してあるわ」
手を引かれるまま、2人で訓練室を後にした。

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