02

やさしさ


「……いいの?」
「当然だろ。今も大事な仲間だからな」

現在風邪を引き倒れている私を看病してくれているのは、烏丸くんだ。
彼は日々アルバイトに明け暮れ忙しくしているはずなのに、わざわざ時間を割いて私の面倒を見てくれている。大家族の長男として育ってきたからか看病も手慣れたもので、私のためにお粥を作ってくれたし、私の頭の上に氷枕を置いてもくれた。
そもそも彼とは恋人でもなんでもなく、ただ彼が太刀川隊にいた時から親交があるというだけだ。木虎さんや香取さんが今のこの状況を知ったら、きっと私に羨望と嫉妬の目を向けてくることだろう。
恋人でも家族でもない私に手間をかけさせてしまっている事実に、心が痛む。
けれど、彼の優しさを拒みたくないと思っている私もいて。

それは。

「……ああ、やっぱりそういうところだよ」

私も木虎さん達と同じで、烏丸くんに好意を抱いているからに他ならない。
彼は見た目もいいが性格も面倒見もよく、場の空気を重んじることができる。
見た目に惹かれる彼女達だけではなく、どちらかというと性格を重視している私をも惹きつけてしまうくらいの魅力があるのだ。

「ん?何か言ったか?」
「っ……なんでもないよ。それより、その……バイト、行かなくていいの?お金とか、負担にならない?」
「ああ、こっちは問題ない。それより、」

ほら、とポリ袋から出してくれたのは私が好きなバニラアイスだった。熱が上がり切った後の今なら食べられるだろうと判断したらしい。後で食べるからと言おうとしたが、彼がその答えを待たずにスプーンで掬ったものだから私はもう何も言わずに口の中に入れられることしかできなかった。
ますます、その優しさを拒めなくなってしまう。

だからこそ、早く安心させないと。
もうこれ以上、烏丸くんに迷惑はかけたくない。

「……ごめんね。頑張って、治すからね……」

ひとり呟く私の声は、まだ枯れているのが自分でもわかるくらいだった。
心配させまいとしているのに、これでは逆効果じゃないか。

顔を合わせることもできず、布団の中で俯く私。

「全く、お前はまたそうやって人のことばっかり」

ふわりと頭を撫でられたかと思うと、呆れたような声が返ってきた。
どうやら、先程の呟きが彼の耳にも入ってしまったらしい。

――人のことばっかり?
――今こうやって、彼に甘えてしまっているだけの私が?

「いつもそんな風に周りのことばっかり心配して無理するから、今みたいに倒れるんだろ」
「烏丸、くん……?」
「無理はするな、ゆっくり治していけばいい」

ああ、もう。
なおさら、好意と申し訳なさの間で板挟みになってしまうじゃないか。

彼はどこまで、私を翻弄するつもりなのだろうか。
それを考えているうちに、身体の方から気怠さに襲われて眠りについてしまった。

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