01
ほんとう
「あの、もしもし?風間さん?」
「ん…………牛乳、1パックと……あと、」
私の側で、風間さんが延々とよくわからない言葉を垂れ流し続けている。
いつも冷静沈着な彼がなぜこのような状態になっているのかというと、ボーダー内の新年会で飲み過ぎた……というか、諏訪さんに飲まされすぎたからだ。
幸い酔いつぶれるまでとはいかなかったとはいえ、このまま帰すのは少々危なっかしいと判断した結果、私がとりあえず介抱することにした……というわけだ。
風間さんは、それほど酒に強くない。
前に今回と同じく諏訪さんに酔わされた時は、ポストと戦ったことがあるとも言っていた。
普段彼が見せないような姿を見られるのはラッキーと捉えるべきか、災難と捉えるべきなのか。いや、きっと前者だろう。
彼にとって私は、単なる後輩としか思われていないだろうから。
***
水を用意した後、諏訪さんに現在の状況を報告する。酔いが覚めつつあると伝えたら、そのまま面倒をよろしくと押し付けられた。
このまま、朝まで風間さんと――心臓がもつ気がしない。
一応承諾したものの、取り下げたほうがよかったのではないかとどこかで思ってしまう。けれど、ここで私が目を離せば彼はまたポストと戦う羽目になるのかもしれないと考えると、側を離れるわけにはいかない。
いや――できるなら、離れたくなかった。
「あの……カツカレー弁当でも、買ってきましょうか?」
そう尋ねても、答えはない。
心配になて彼の方を伺うと、いきなり重さと体温が私の身体にのしかかってきた。
「……**」
状況が飲み込めず顔を上げれば、目の前に風間さんの顔があった。
酔ったせいでふらついているのか、それとも元々心のどこかでこうしたいと思っていたのか。もし後者だとしたら、私の想いは片想いではなかったということになる。
「どうやら、片想いだと思っていたらしいな。諏訪に聞いた」
「へ……?」
「好かれているという自覚はないのか?」
元々戸惑っていたのに、彼は平然と追い討ちをかけてくる。
私の脳では、この衝撃と嬉しさは上手く処理できない。
「それ……は、」
「いい加減、彼氏にしてくれ」
――え、嘘でしょ?夢……じゃないよね?
――待って。ねえ、待って。
――それは、流石に反則だってば……!
驚きのあまり、すぐに返事するのを忘れてしまった。
少し経って、ようやく状況と彼の好意を飲み込んだ私は、彼に遅れる形で返事を返した。
「……は、はい!勿論です!」
夢なんかでは、なかった。
ここから、本当に風間さんと付き合い始めるんだ――
そして、彼と付き合うということは、彼が側にいるということでもある。
先程心臓が持たなかった私では、そんな日常に慣れるのにも1ヶ月は掛かりそうだが――まあ、それはこれからどうにかしていこう。
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