02

おまもり


「明日かあ……緊張してきた〜!」

どうしてもボーダーの推薦が効かない大学に進学したくて、ここ最近は今ちゃ
ん達にも協力を仰ぎながら受験勉強に打ち込んでいた私。神田くんのように除隊という選択肢もあったが、私にはそうするまでの勇気がなかった。
そうして勉強漬けになっていると、慌ただしい毎日はあっという間に過ぎて。

落ち着かないままに、試験前日を迎えてしまった。

「……もう、だめかも」

積み重なる不安は、とどまることを知らない。
――今日の夜、ちゃんと眠れるのか。
――明日の朝、間に合うように起きれるのか。
――受験会場に、何の足止めもなく行けるのか。
そして、何よりも心配なのが――合格できるか。

考えないようにしていてもそれらに押し潰されそうになり、ぎゅっと手元にあるお守りを握りしめた。
そんな私を、現実へと引き戻すのは。

「よ、**」

私を呼ぶ、聞き慣れた声。
その後に聞こえる、ぼんち揚をぼりぼりと噛む音。

「迅さん……?」
「おう。実力派エリート、只今参上!ってね」

玉狛の彼が、どうしてここにいるのだろう。
彼のことだから、趣味である暗躍をしていたのだろうか。

彼は後輩の面倒見がよく、こうして私含め本部の隊員にも優しくしてくれる。
緑川くんがあんなに熱心に慕うのもわかるなぁと思ってしまう。

「不安そうだね。試験、受けるんでしょ?」
「はい、そうなんです……っ、」

一度そう切り出してしまえば、涙が溢れて止まらなくなって。
泣きながら俯く私を、彼の掌がよしよしと撫でる。

「確かに、不安なのはわかる。でも、**は今まで色々な困難を乗り越えてきただろ?だから大丈夫だって」
「え……っ」
「君ならできるよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

そういえば、迅さんは目の前の人間の少し先の未来が見えるんだったっけ。
ということは、私が合格している未来も見えているのか――そう考えれば、先程まで積み重なっていた不安がすっと消えていくように思えた。

「っ……迅さ……っ、迅さぁ……!」
「おいおい、泣くのは受かった後だろ?」

迅さんはハンカチを差し出して、私の涙を拭ってくれる。
それでようやく泣き止んだ私を見届けたのか、彼は私の頭をもう一度ぽんと撫でた。

「よし、じゃあまたな!」

そう言って、彼は立ち去っていく。
また次の暗躍をしに行くのか、玉狛支部に戻るのか――それは、彼にしかわからない。
けれど、それでもよかった。


 
家に帰っても、不思議と不安は感じなかった。
――大丈夫、だよね。
だって、今の私は何よりも効力のあるお守りを授かったのだから。

『できるよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる』

その言葉を思い返しながら、私は持ち物を入れるために鞄を開けた。

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