02

やくそく


「……っ、まただ……!」

先程のランク戦。
何もできないまま私はトリオン切れに追い込まれ、そのまま緊急脱出させられてしまった。
次の対策を練る気にもならず、涙がぼろぼろと溢れていく。

どうせ、私じゃ駄目なんだ。
私がいくら頑張っても、もっともっと凄い才能を持った隊員はいくらでもいて、そして私は彼らに追いつけない。

「どうしよ……」

そういえば前にもこんなことを思ったことがあり、その時には師匠である諏訪さんと『諦めない』約束をした。
けど――

「もう駄目なのかな……約束、守れそうにないよ……っ、」

今いるここになら、誰もいない。
だから、こんなことを呟いても誰にも聞こえないだろう。
――そう、思っていた。

けれど。

「……**じゃねえか」

途中で、誰かが隣に座ってきた。
横にいる彼は、まさに私の師匠である――

「諏訪、さん?」
「おう。煙草を吸えるとこがねえか探してたんだが、その途中でお前を見かけたんだよ」

そうだ――彼は私を見かけた途端、すぐに声をかけてきてくれたのだ。
いつもそう。彼は、ああ見えて面倒見がいい。
ガロプラが攻め込んできたときに地上の全部隊を率いて指揮をとるくらいの彼がどうしてこうやって私の面倒を見てくれているのかはわからないけれど、それをどこかで当たり前のように感じてしまう私もいて。

「で、お前……やけに傷心中って感じだな」
「……それ、は」
「さっきのランク戦のことか?」

どうやら、私に黙って先程のランク戦を観戦していたらしい。
さっきの戦いを見ていた諏訪さんならわかってくれるだろうと踏み、全て話してみる。

「そうですよ……諏訪さんもさっきのランク戦見てたらわかるでしょ……?」
「……ん?」
「やっぱり、私はどうせ駄目なんですよ。私より凄い人なら、ボーダーに山ほどいるじゃないですか。私がいなくたってボーダーは絶対に回りますし、もう私ここやめたほうがいいのかなって……」

堰を切ったように溢れ出てくる私の言葉を、諏訪さんは何も言わずにずっと聞いてくれている。
そして私が全て話し終えたところで、彼はぽんと私の肩を叩き慰めるように口を開いた。

「ま、そういうことだってあんだろ」
「……え?」
「確かに凄え奴はいっぱいいるし、打ちのめされるのも仕方ねえよな。けどよ、お前も、お前なりに頑張ってきたんだろ。俺もあん時真っ先にキューブ化されたけどさ、後で復活してあのミスター黒トリガーと遊んでやったんだぜ?」

そう語る彼の言葉からは、かっこいいことを言おうなどとは微塵も思っていないことがうかがえる。
その気張っていない、ストレートな感じが彼らしいというか。

「それに、この間約束したじゃねえか。……まさかお前、また『諦める』とか言い出す訳ねえよな?」
「っ……言い、ません」
「よし、それでこそ俺の弟子だ。……ほら、もう一度頑張ってみようぜ。な?」
「諏訪さぁ……っ、」

顔を上げると、少しだけ煙草の匂いが残るハンカチで私の目元を拭ってくれた。
彼がせっかく拭いてくれているというのに、また涙が溢れてきてしまう。

「って……おいおい、もう泣くなよ。明日から特訓つけてやるからさ、今日は俺の奢りで肉でも食いに行こうぜ?」
「……はいっ!」

ほら、と差し出された彼の手を取って。
もう一度、私は立ち上がる――

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