野薔薇の塔

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フリルと、レースと、リボンの花園。囚われたまま熱に浮かされて、頭が焼き切れてしまいそうで。
ああ、もう。何がどうなって、こんな状況になっているのだったか。

***

見慣れた綺麗な顔と赤い髪に、見慣れない黒と赤のワンピース。豹馬くんが今着ている――それこそ普段彼が呼ばれているワガママお嬢の名に相応しいそれは、元々この服のデザインをいたく気に入った彼の姉が私の着ている白いものと色違いでコーディネートするために買ったものだ。
いずれ義姉となる彼女とは豹馬くん抜きでも結構仲良くさせてもらっていて、休日に一緒に出かけたりもする関係だ。今回だって本当は義姉さんと私でこの服を着てクレープだのタピオカだのを食べ歩きする予定だったのだけれど、彼女が着る用のサイズが大きいものしかなかったそうで。だから、代わりにこの服を着た豹馬くんと食べ歩きした写真を送ってくれ――そんな義姉さんのわがままに2人で付き合う形でデートはしたけれど、本来かりんとう饅頭などの和風系のものが好きな彼は原宿に行っても抹茶のクレープやら黒糖入りのタピオカミルクティーやら、そういうものばかり頼んでいたような気がする。

「やっぱり、こういうのは豹馬くんの方が……っ、ぁ♡」
「お前のが似合うよ。こんなに純真無垢そうで、それでいて俺のことだって惑わせて……」

――ああ、そうだ。
装飾の多いこの服と髪だから脱ぐのも面倒になって、はだけさせられたままこうして――少女性とは真逆たるこの行為に、もつれこんでいるんだっけ。
私が上に乗ってはいるものの、なおも見上げている感じが否めないのは元々の身長差のせいか。この体勢だとふとしたきっかけで彼の足を痛めないかと最初は心配だったけれど、どうやら彼にとってはもう痛みは感じないくらい興奮の方が上回っているらしい。
義姉さんの服を着た彼と、義姉さん相手ではできないことをする。そんな――どうしようもなくアンバランスな状況下だからこそ、ここまで昂っているのだろうか。

「**、また姉ちゃんのこと考えてたろ、」
「……ん、っあ……まっれ、ひょーまく、んん……っ、♡」
「だーめ。今は俺だけ……」

右手を顔に這わせ目線を合わせられた先の彼は気高くも退廃的な妖婦のように、されど確かな熱を以て私を暴く。
引きずりこむように左手で右手首を掴まれ強く引かれながら、スカートの下で水音を立てて奥を抉られる。服を脱がずにしている故の暑さと快楽で麻痺しかけている頭では、もう何もわけわからなくて。けれど、それでもいいやと思えるくらいには私もこの少しだけ倒錯的な状況を受け昂って――彼のような言い方をするならば、滾っていると言えるだろうか。
そんなことを考えながら、私はまた足元の茨に囚われていく。

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